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Ep.15 - 複雑怪奇な魔術式

 魔術の仕組みの説明。

 長いし複雑なので、読みたくない人は読まなくてヨシ!


 ※内容を雑にまとめた物は後書きに書いてあります。

「魔術、展開」


 ブランコに座って俯き、こくりこくりと船を漕ぎながらそう呟いた円は、しかしはっきりした意識の中で自分が魔術でなにをしたいのかを思い浮かべる。


 魔術を行使する上で、目的を立てておくことは非常に重要だ。

 でなければどの概念を扱うか、そしてどのようなパスを繋げるかを考えることも、計画立てることも出来ない。


 今、円が求めているのは警察に見つからずに、自分も藤広の料理店の内部の調査を行う手段。

 つまり、警察の目を騙す方法だ。


 透明になる、警察の視覚を固定させる、自分も警察の一因だと認識させるなどの様々な方法があるが、円が選んだのはそのどれとも違う、最も安全な手段。

 自分の意識だけ料理店に送るという方法だった。


 まるで偵察ドローンのように、自分の意識と視点を別の場所に飛ばし、調査をする手法。

 円の本体である体は現場には行かないし、その気になれば意識は瞬時に円の体に戻ってくることができる。

 また、送った意識はものを触れたり出来ない代わりに、他の人から気づかれたり触られたりすることもない便利な手段だ。


 ただし便利な分、扱う概念と通すパスの数が多く複雑なため、行使までの難易度が高く、その上結構な量の魔力を持っていかれる手段でもある。


 そんな魔術を使用するために、まず円は自身の内包する概念を確認。


 ここに来る前からどのような概念をどのようにして繋げていくかは考えていたが、それの再確認も兼ねて円は如何に概念を繋げていくか、計画を立て始める。

 膨大な数の概念の中から、自分のほしい概念があるかどうかを探しつつ、その他にも魔術の行使の上で自分の今考えている手法よりも効率的なものがないかも模索する。


 二、三十秒ほど経過したあたりでその作業は終わったのか、遂に円は魔術の行使を始めた。




 最初に円が選んだのは『睡眠』という概念。


 これは、第三者視点からの円の印象によって生じたものだ。


 現在円には眠気など一切なく、脳は活発に動いているわけだが、それが分かるのは円本人だけ。

 他の人から見れば、目を閉じて俯いている円は眠っているようにしか見えないわけだ。

 故に、不特定多数の他人から無意識の内に円は寝ている状態と定義され、それが形を成して『睡眠』という概念へと変質したのである。


 では、寝ている時に見るものといえば、なんだろう。

 そう、夢である。


 睡眠といえば夢、夢といえば睡眠。

 あらゆる人が瞬時にそう考えて結びつけてしまうほどに、睡眠と夢の関係は密接だ。

  だからこそ、この二つの概念の間にはかなり明確なパスが通っている。


 だがパスが通っているだけであり、繋がっているわけではない。

 確かに夢は寝ているときに見るものだが、しかしながら寝ていても夢を見ないときだって当然ある。

 例えば寝始めて一、二時間ほどの頃はそうだろう。

 故に、睡眠と夢は常にイコールとして繋がっているわけではないので、パスはあっても繋がった概念ではないのだ。


 そのため、円は『睡眠』と『夢』の間にあるパスに自信の魔力を流し込み、二つを繋げる。


 次に円は自身に新しく紐付けられた『夢』という概念に一つの定義をつけた。


『他人にとっては正体不明、自分のみ認識できるもの』


 夢、とは。

 人にとって最も近く、同時に最も遠い存在だ。


 夢を見ている人は、その存在を非常に近く感じるだろう。

 なぜなら、夢の大半は自分視点の物語。

 明るく楽しいものも、陰鬱で悲しいものも、全て自分が主人公の夢だ。


 そして、どこにだって行ける。誰にだって会える。

 それが、夢というものだ。


 だが、起きていて夢を見ていない人にとってはどうだろうか。

 その人は隣の人が寝ているとしても、どんな夢を見ているかなんて分からない。

 そればかりか、本当に夢を見ているのかさえも分からない。


 もしも、今となりで夢を見ている人が、夢の中で自分の眼前に立っていて、今すぐ殺しにかかってきたとしても、認識することはできないし、殺されることもない。


 なぜなら、正体不明だから。

 認識も確認もできないがために、それがどこにいるかも、何をしているかも分からない。

 だが同時に、分からないが故に、何をされようと、何が起きようと無関係で居られる。

 所詮夢と現実は、そういった関係性なのだから。


 もし隣の人が、夢の中でこの世界の果てから果て、一から十まで全てのあらゆる事象を把握していて、認識しているとしても気づきやしない。

 所詮、別の世界の出来事だから。


 覚醒世界(げんじつ)幻夢郷(ゆめ)は、行き来はできても、互いに干渉などできないのだから。


 故に『他人にとっては正体不明、自分のみ認識できるもの』

 言い換えれば『何処にいて何をしようが、絶対に認識されることは無いもの』



 そして例えばこの定義を、円に括り付けてみるとしよう。


 円には『睡眠』という概念が紐付けられており『樋之上円』=『睡眠』だ。

 そして『睡眠』は今しがた定義したばかりの『夢』という概念と繋がっており『睡眠』=『夢』だ。


『樋之上円』という概念と『夢』という概念。

 この二つは全く別のものながら、それぞれが『睡眠』の概念とイコールで繋がれている。


 このイコールは比較の支点こそ違うものの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 故に『樋之上円』=『夢』が成り立ち、夢の『何処に居て何をしようが、絶対に認識されることは無いもの』という定義を、円にも適用することが可能となるのだ。


 しかしながら、円の持つ『睡眠』という概念は他者からの思い込みによって生じたものである。

 他者が円を認識できなくなれば、その思い込みも失くなってしまい『睡眠』の概念は消失する。

 故に、この方程式は使用できない。


 だからこそ、円は自分の保有するまた違う『非実体生命』という概念を利用する。


 非実体とは触れぬ体を持つものを示す。

 例えば動物や植物は触れることができる物理的な肉体を持っていて、これらは『実体生命』に区分される。


 だが、炎や光などは?

 触れることは出来ない。物理的な肉体を持っていない。


 いや、科学的に考えれば粒子などの物理的な要素はあるのだろうが、誰もが炎や光を物理的に触れたとは思わないだろう。

 故に、こういった炎や光を主体とした生物は「触れたと思えない」という意味で『非実体生命』に分類されるのだ。


 そして、円は面白いことに『実体生命』と『非実体生命』の両方の概念を持っている。

 これは、円が炎の吸血鬼という非実体生命でありながら、他人が触れたりできる外殻をまとっているためだ。


 内側は非実体、外側は実体。

 これが今の円という生命のありかただ。


 ここで話を魔術に戻すが『夢』という概念は個人の意識上でしか存在し得ないものである。

 そして『意識』とは動物の内側でしか発生し得ない、他人に隠された存在である。

 また、先程言及したばかりだが円の内側にある『非実体』の部分は、円の外側で見えなくなっている、ある意味隠された存在なのである。


 個人の上でしか存在し得ない、という意味で『夢』=『意識』。

 内側にある隠された存在、という意味で『意識』=『非実体生命』。

 上記の二つの式からは必然的に『夢』=『非実体生命』という式が成立する。


 そして、円は『非実体生命』と『実体生命』の二つの概念を保有しているわけだが、この内の一つしか『夢』の概念と繋がっていない。


 だから『非実体生命』としての円は『夢』の『何処に居て何をしようが、絶対に認識されることは無いもの』という定義が適用されて自由に動くことができるようになる。

 しかし『実体生命』としての円にはその定義は適用されないので動くことは出来ない。


 つまり、外側の円はそのままに、内側の円だけを自由に動かすことができるようになるのである。


 これで意識を他の場所に飛ばす準備は整ったわけだが、これではまだ足りない。

 円の意識が認識している世界が、覚醒世界(げんじつ)であるという証拠がない。


 それがなければ円の意識はただ夢を見ているだけになってしまい、結果的になんの証拠にもならない情報を掴んでしまうかもしれないのだ。


 それを防ぐために、他の概念を扱う。


 それは『観測』の概念。

 先程の『睡眠』が他者からの無意識上の認識の集合体によって生じたものだったのに対し、こちらの概念はただの事実として円に存在する概念である。


 他者がどれだけ円が寝ていると思っても、実際には円の意識ははっきりしており、寝る気配は微塵もない。

 そして、目は閉じていようが、円は周りの様子を他の五感で認識できるのだ。


 耳で音を聞き取れる。

 鼻で匂いを嗅ぎ取れる。

 舌で味を感じ取れる。

 体全体で触感を味わえる。


 だから、円は自分の周りを観測できている。

 その事実から、円には『観測』の概念が発生する。


 そして、円の持っている『観測』の概念には『視覚を除いた五感を用いて覚醒世界(げんじつ)を認識している状態』という定義が予め定まっている。


 この定義の五感を用いているという点を軸にして、規模を縮小させて、この定義は『五感を用いて覚醒世界(げんじつ)を認識している状態』に変える。


 イメージとしては、レーダーチャートを思い描いてみると分かり易いだろうか。

 あれの視覚の点数が一で他が五だったのを、全ての点数を一にまで低下させる。

 するとどうだろう、その後にレーダーチャート上に残るのは、ただの点。


 これでは、一応五感は使えているらしい、ということしか分からない。

 これを『五感全てを使って世界を認識している』と若干曲げた解釈をして、円は『観測』の概念を再定義したのである。


 そして、円が内包しているのだから『観測』=『樋之上円』。

 これもまた、円が内包している概念なのだから『樋之上円』=『非実体生命』。


『夢』の時と同じ原理で『非実体生命』に『五感を用いて覚醒世界(げんじつ)を認識している状態』という定義が適用されて、円の意思はどんな状況であれ必ず五感で覚醒世界(げんじつ)を認識できるようになる。


 そう、どんな状態でもだ。

 夢のように意識を飛ばした状態であれ、円は覚醒世界(げんじつ)を正確に認識できるようになったのである。




 これにて魔術は完成。

 あとは、実際に魔力を通して起動するだけである。

【内容の雑すぎるまとめ】

 魔術は概念をどうこして繋げたのちに、それを現実に反映する事で物理的に出来ないことを出来るようにする技術です。

 なお、現在の円はその魔術を使って自分の精神だけドローンとして飛ばそうとしてます。


 おかしい、一話使った筈なのにほとんど話が進んでない。

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