美しい手、手が綺麗、と聞いて思い浮かべるのは?
誰かが「綺麗な手ですね。」と言われていたとしたら、皆さまはどのような手を想像されるでしょうか?
手タレントのような完ぺきな造形でしょうか。あるいは、指先までネイルで可愛さを追求した手でしょうか。
……もちろん、そういう手も美しいと堀田も思います。いっぽうで、堀田がある種の美や凄み、カッコよさを感じるのは、「労働により鍛えられ、傷つきもした、そんな手」です。
堀田は医療機関で働いているせいでしょうか。職場内でネイルをする人は、事務職の受付の人か、(ごく稀にです)仕事が終わった後に何かあるのか?職場内で爪を伸ばしネイルをしている女性ドクターもいるかも……?くらいです(爪を伸ばしている人は女性でも、ほとんどいません!)。
特に、看護師や看護助手、介護士のように患者さんの肌に直接触れて介助をするような場合は爪は手の裏側から見たときに指先から出ていたら即、切るように指導されるレベルで厳しく言われるようなことです。
※これは本当に危なくて……実は堀田も、患者さんを移動する際に、女性ドクターが気を利かせて手伝ってくれたは良いものの、彼女のネイルが堀田の手の甲にあたり、引っ掻かれて皮がむけた!事があります(^_^;)
正直けっこう痛かったのですが、その場で堀田が何も言わなかったため、そこドクターは自分の伸ばした爪とネイルが堀田の手の皮をえぐりとった事実には全く気付いておらず、良いことをした時の爽やかな笑顔で、「気にしないで!」と微笑んでいました
(なので余計に“あなたの爪でケガをしました!お願いだから、ネイルのおしゃれは職場を出てからにしてください(ToT)”とは、言えませんでした。
……これ、ドクターでなかったらもうトップに呼ばれて大目玉くらっておかしくないレベルだと思います。
もしそれが、職員である堀田ではなく、患者さんの肌だったら?
善意で手伝っただけですから、本来の仕事ではないので、では済まされないことです。資格を持ちプロとして働くということはそういうことです
ふつうはドクターも爪は伸ばしていないはずです。やはり医療機関で求められるレベルの衛生を保つ上で、爪を伸ばしていること自体が、よくありませんので)。
どんなに専用のブラシで洗ったとしても、医療機関でOKレベルまでは、内部に入った垢や、脂、よごれ、菌などを落としきれません。
何よりも、ほかのスタッフや患者さんの肌を引っ掻いて傷つけてはならないですよね。
人を抱えたりする際は強い力がかかるので、ちょっとしたことで、健康な皮膚でも皮がむけて汁がでてくるくらいの傷はつきます。患者さんの弱った皮膚ならなおさら危険です。
それはプロとして働く以上、してはいけないことだから。
そして、飲食業もです。アルバイトでも入った経験があるかたはご存知ではないでしょうか?
ネイルはもちろん、爪を伸ばすこと自体が厳禁という職場が多いはずです(ホールスタッフの場合だけは透明タイプ程度なら可能な場合もあるかも。がっつりネイルはどこでもダメでしょうね)。
厨房ならどちらも“論外”のはずです。
理由は、衛生上、食中毒原因となるものの混入を防ぐため。そして、“異物混入”を避けるためです。
どんなにきちんとしていても、油やお湯や洗剤に触れるたびに、端のほうから少しずつとけだしたり、あるいは包丁やピーラーなどの金属やセラミックの刃に少しあたったりするなかで、削れて入ってしまうリスクはありますよね。
家庭レベルでは許されても、お金をえて働く立場では、それは始末書に大目玉で周囲から白い目を注がれる(という以前にたぶん職場に入れませんし、めざとく見つけられると思いますが)。
もちろん、そんな職場でも女性たちは、オフのときは「つけ爪」で、オリジナルのネイルチップを作りつけたりして楽しむ人も少なくないようです。
それでも、医療現場にせよ、飲食業(厨房)にせよ、一生懸命働くほど、手も爪も荒れやすく、どんなにケアしてもボロボロになりやすい側面はあると思います。
アルコール消毒は油分も奪ってしまいますし、それは厨房で頻繁に使われる洗剤でもいえること。消毒直後にハンドクリームを塗るわけにはいきません(なんのための消毒かということに)
厨房ならなおさらです。
水仕事は手が荒れる。
そういった仕事以外でも、土を扱う仕事や、重量物を扱う仕事 ほかにもあるでしょう……
労働により、いわゆる形としては手が傷ついてしまいやすい職種はあると思います。
いっぽうで、それはその人が、真摯にその仕事に向き合ってきた証しでもある、と堀田は思うのですよね。
そういうものも、ひとつの美しさ、として認めても良いのではないか。
むしろ、認められて欲しいーーと堀田は考えてしまうのです。