プロローグ:僕について
僕が自由になれるのはネットだけ。
ネットは僕の住処であり、もう1人の自分にも、本当の自分にもなれる。
これは、そんな“わたし”の話。
「みっちゃーん! アイロン持ってないー? 髪がやばし〜」
「え〜持ってるけどぉー…あかり、この前も貸した気がするんだけどー」
「今度ステバ奢るからぁ、よろぴ〜」
「言ったねー? なら、いいよーん♪ 貸したげる〜」
僕には分からない。
みんながみんな同じ動きをして、より模範的だと思われた人が賢くて、なんて言ったら分かんないけど、僕自身が到底辿り着けない場所の人は。
僕はこのクラス、この学校という社会で、上手くやってけてると思っている。
僕は全てを無駄にしないように、
全てが無駄にならないように。
がんばって生きている。
…はずだ。
クラスの一員として、やるべきことはやってきたし、むしろやりすぎなのではないかとまで思う。
みんなが見てないのに、努力する意味なんて、僕には分かり得ないのが現実。
みんなが見てない中でも、ちゃんとしている人はごくわずかだと思うし、そんな理想は高すぎる。
…なんて。
本人たちにそのことを言えるわけない。
僕は春から中3なった。暮葉という、ただの中学生。
一応クラスの中心のグループにいる。
あかりと美都と明奈と僕。
クラスの一軍女子グループってこと。
僕がグループに入ってから3年目を迎える。
みんなと毎日薄っぺらい話をして、適当に相づちを打つ。先生と仲良くて、スポーツが得意。勉強はそこそこ。
そんな一軍女子の理想像に、より近づけることが、これまでの中学生活の目標。