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86、深き森 〜原住民の集落?

 俺は、記憶に従って、魔王スパークに教えられたパワースポットらしき付近まで飛んできた。


 スパーク城で見た地図よりも、深き森は広がっている。そのためか、魔王スパークが示した場所付近には、何のエネルギー反応も感じない。


(やはり、古い地図だったよな)


 前後左右の感覚がわからなくなるほど、目に映る景色は、緑のじゅうたんしかない。サーチをすれば、魔物は引っかかるが人も魔族もいない。


 空中をふらふらと飛びながら、場所サーチをする。この場所は、名もなき深き森。広大な農業国であるスパーク国よりも、面積は広いかもしれない。その名もなき森のほぼ中央部だ。


 魔王スパークが指していたのは、深き森の北の方だったが、その感覚は使えない。森は広がっているからな。


 森が広がったとしても、パワースポットは動かないはずだ。スパーク国からの距離でいけば、この辺りのはずだが……。


(とりあえず、降りてみるか)



 木々の生えていない場所を目指して降下して行くと、何かに阻まれて進めなくなる。手で触れても何も感じないが……この下には何かが隠されているのか?


 俺は、視界に入った近くの木に向かう。そして、浮遊魔法を解除して、木の枝に降り立った。


(集落か?)


 上空からは、ただの草原に見えたが、木の上から見ると、木造の粗末な小屋がたくさん並んでいるのが見えた。


 手前の方には、道沿いに小屋が並び、集落の奥には、何かを取り囲むかのように円形に立ち並んでいる。


 円形の中の様子を調べようとサーチを使った。すると、これまで見えていたはずの小屋が消え、ただの草原が広がっていた。


(は? なんだ、幻か?)


 魔王スパークの地図にも、俺が知るこの付近の地図にも、人の集落の記載はなかった。だが、あの魔物を操っていた魔族の集落は、どこかにあるはずだ。


 上空を飛んでいたときには見えなくて、今サーチ魔法を使うと見えなくなる。だが、この場所に降りようとしたときには、何かに阻まれた。


 これは、幻ではない。何の魔力も感じないが、強力な結界に包まれた集落だろうな。


(当たりだな)


 おそらく、ここが目当てのパワースポットだ。こんなトリックのような結界を常時稼働させるには、それなりのエネルギー源が必要だろう。


 サーチを解除してしばらく経つと、また、粗末な小屋が見えてきた。集落の中には、人の姿は見えない。おそらく、中にいる人の姿は、外からうかがうことができないようになっているのだろう。


 その証拠に……。


 集落から、数人の魔族が出てきた。さっき遠視で見た者も居る。やはり、原住民の集落か。


 彼らは、辺りをキョロキョロと見回している。すぐ近くの木の上にいる俺に気づかないのか、遠くを探っているようだ。


(ふっ、灯台下暗しだな)



「おかしい、確かに微弱な魔力反応があったはずだぞ」


「上空を飛んでいた魔族じゃないのか?」


「また、魔王スパークの偵察か。しつこいな」


「もうよい、戻るぞ。新たな客人をおとなしくさせねばな」


 魔族達は、そのまま集落へと戻っていく。


(なるほどな)


 コイツらの一人から、ドムの魔力を感じた。ドムが怪我の治療をしたのか。


 マチン族が、新たな客人だということは、ロロ達が居る可能性も高い。




 俺は、木から飛び降りた。


(友好的にいこうか)


 魔法を使うと見えなくなる結界が張られているなら、おそらく、集落内では魔法の発動は制限されるだろう。その結界の妨げになる術は使えないはずだ。巨大な魔法陣か何かが、集落全体に描かれているか。


 だが、ドムが治癒魔法を使ったなら……水系は、いけるか? ドムが使うヒーリング魔法は、水系の精霊魔法だ。


 いや、精霊魔法なら使えるのだろうか。あいにく、俺には使える気はしないが。




 ゆっくりと歩いて近寄っていくと、集落の入り口には、見えない膜が張ってあった。これが結界か。手で触ろうとしても触れない。だけど、先には進めない。


(なんか、おもしれー)


 勢いをつけて入ろうとすると、跳ね返される。駆け込もうとすると、ボーンと強く跳ね返る。変なアトラクションみたいだな。


 うーむ。ということは……勢いが無なければいいのか。


 俺は、もたれかかるように、身体を傾けた。


 ドタッ!


(やったぜ、突破!)


 俺は、集落の中へと倒れ込んだ。



「何者だ!」


 さっきの魔族達が、俺に剣を向けていた。


(待ち構えていたか)


 まぁ何度か、結界突破チャレンジをしていたから、当然だ。


「俺は、カオルと呼ばれている。今、ちょっと怪我で療養中なんだ」


「は? 怪我人には見えないぞ」


「怪我をして散歩してました、なんて言い訳が通用すると思っているのか!」


(ふむ……友好的にはいかないな)


 集落はかなり広いようだ。粗末な小屋ばかりだし、着ている服も、原始的なものだ。かなり、文明レベルは低い。



「俺は、知り合いと森ではぐれてしまったんだよ。ここに来てないかな」


 俺が立ち上がると、彼らは警戒して、少し後退した。そして、ピーっと口笛を吹く。


(仲間を呼んだか)



 しばらく睨み合いが続く。


 俺も、あえて無理はしない。友好的な関係を築くなら、ここで暴れるのはマズイ。


 この隙に、集落の中をサーチしようとしたが、サーチ魔法は発動しない。地面に魔法陣が描いてあるのかと予想していたが、どうやら、この結界内の空気が魔法の発動を阻害しているようだ。


 ここがパワースポットなのは、確定だ。こんな阻害魔法は、俺の知識にはない。


 あちこちに視線を走らせる。原住民は、侵入者である俺に怯えて、小屋の中へ入ってしまった。


 円形の囲いの中からは、あの魔物の気配がする。だが、血の臭いはない。怪我はもう治したようだな。




「侵入者か。ここは、古の集落。権利なき者は立ち去るがよい」


 突然、目の前に現れたのは、まだ幼く見える少年と……。


「あっ! ロロさん?」


 少年を守るように立つ、ロロ達だった。



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