83、深き森 〜能力サーチ魔法
俺達は、スパーク城の中庭の転移魔法陣を使って、スパーク国の最北部へと転移した。
腰には、魔王スパークからもらった剣を装備した。城兵が持つものとは違って、細い剣だ。魔王スパークの私物だろうか。
『魂の記憶に、古の魔王トーリの刻印がある全員だよ』
そう言った魔王スパークの声が、俺の頭の中でヘビーローテーション状態だ。
「カオル、この森が……」
「あぁ、ここが魔王スパークの北端だからな。国境代わりの緩衝地帯としては広すぎる深い森だ。古の魔王トーリの国の一部だな」
(マチン族が帰るべき場所だ)
マチン族のドムは、被っていた白いフードを外した。トーリの名を継ぐ男も、同じだ。
彼らの種族の象徴である白いフードは、様々なサーチを阻害する機能があると言っていた。逆に、彼ら自身がサーチをするときにも、妨げになるのかもしれない。
俺も、正確な場所をサーチしようか。そう考えると、なんだか違和感を感じた。サーチ魔法が複数ある?
(あー、新たなサーチか)
勲章の星を20個貯めたことで、能力サーチが可能になっているようだ。俺は試しに、自分のサーチをしてみる。
種族名:不明
危険度:不明
苦手属性:無し
違う、魔獣サーチだ。これは、もともと使えた。
気を取り直して、別のサーチ魔法を試す。
名前:アウン・コークン(24歳)
種族:天界人
特殊職:転生師(Lv.31)
魂の状態:転生1
最終転生担当者:女神ユアンナ
体力(HP): 12,000/50,000
魔力(MP): 236,000/6,500,000
物理攻撃力: 12,500/150,000
物理防御力: 110,000/120,000
魔法攻撃力: 13,500/160,000
魔法防御力: 2,450,000/2,500,000
回復魔法力:1,100/5,000
結界魔法力:10,000/30,000
時空魔法力: 5,000/10,000
特殊魔法力: 1,200,000/3,000,000
速度: A
回避: A
増幅: B
特記事項: 死神の鎌(Lv.1)
状態:核の傷により、体力、魔力、各種能力が大幅に低下中。
発動中:自己防衛能力MAX。自動反撃(物理)。
なんだか、ゲームみたいな数字が並ぶ。能力が低下中なのは理解した。だが、この数値がどの程度なのかが……。
(あー、湧いてきた)
女神から与えられている知識によると、ブロンズ星の一般人なら、基本数値は100らしい。これは非戦闘系の住人だろう。
ただ、種族による偏りがあるから、一概には言えないな。種族の特徴により、得意な能力は基本値が10〜100倍。逆に苦手なものは半減以下か。
マチン族の二人の能力も見てみたいが、サーチ魔法はバレるんだったな。対象が人のときには、下手にサーチは使えない。
魔獣相手なら遠慮はいらないが、基本的には、魔獣サーチでリスクがわかれば十分だ。やばそうな奴にだけ、これを使おう。
ブロンズ星の魔王の戦力情報は、与えられていない。勲章の星20個では、与えられる情報じゃないのだろう。
「カオル、どうした? 難しい顔をして」
ドムに声をかけられて、ふいにそちらを見ると……。
名前:ドム(68歳)
種族:マチン族
特殊職:なし
魂の状態:転生19
最終転生担当者:アイリス・トーリ
体力(HP): 15,000
魔力(MP): 28,000
物理攻撃力: 1,200
物理防御力: 1,500
魔法攻撃力: 2,500
魔法防御力: 3,000
回復魔法力:17,000
結界魔法力:1,100
時空魔法力: 100
特殊魔法力: 1,000
速度: C
回避: D
増幅: なし
特記事項: マチン族の伝道師
状態:通常
発動中:簡易バリア
(あっ、サーチしちまった)
ドムが、不快そうな表情を浮かべた。
「ドム、ごめん。俺の状態サーチをしてるときに声をかけられたから……見えてしまった」
「俺が帽子を脱いだからか」
ドムがそう言うと、トーリの名を継ぐ男は白いフードを被った。失敗した。疑いの目を向けられたが……。
「いや、白いフードは身につけたままでも、おそらく俺はサーチできる。見るつもりはないが……」
弁解にもならない言葉だが、一応そう言っておく。するとトーリの名を継ぐ男は、白いフードを外した。
「フッ、おまえ、そこまで暴露しろとは言ってねぇぞ。まぁ、そうだとは思っていた。魔導系の上位魔王のサーチは、弾けないからな」
「いや、そういうつもりでもないんだけど、まぁ、何を言っても言い訳だな」
ドムは、フッと笑って、いつもの表情に戻った。落ち着きがあると思っていたが、この年齢だからか。マチン族の寿命は知らないが。
「俺の能力を見て、どう思った? カオルより勝るものはあるか?」
「えっ? あー、ドムの年齢を見て驚いたから、あんまりよく見てなかった。もう一度、サーチしようかな」
「おい、バカか、やめろよ? サーチは気持ちが悪いんだよ」
ドムは、手で頭を隠している。
(なぜ、頭を隠す?)
「あはは、ドム、なんか違うんじゃない?」
「フッ、帽子を被れってか? いま、それは無駄だと言ったばかりじゃねぇか。そんなことより、森に入るぞ。近くに魔物はいないが、警戒しろよ?」
そう言うと、ドムは先導するように進んでいった。
なんだか話が食い違う気がしたが、これは使ったサーチ魔法の種類が違うのか。
ドムが冗談で頭を隠したり、マチン族が白いフードを被るのは、脳内情報のサーチを防ぐためだ。それが、一般的な詳細能力サーチだ。
だが、俺が使ったのは、核の情報のサーチだ。だから、転生回数や転生担当者名まで出てくる。これは、ブロンズ星の住人には知られていない情報だ。
上位魔王のサーチは白いフードでは弾けないと言っていた。当然だ。上位魔王は天界人なのだから、俺と同じサーチ魔法を使う。
(しかし、毒舌幼女が担当か)
アイリス・トーリ……大魔王リストーは、マチン族と何か深い関わりがあるのだろうか。
アイツが、マチン族に定住の地を与えるつもりだとすれば、俺は余計なことをしているのか?




