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56、天界 〜転生師レベルがわかるアリーナ

「はーい、こちらですよ。皆さん、並んでください〜」


 ビルクと一緒にイベント塔に移動すると、1階でランキング報酬の受け渡しが行われていた。


 さっきの不思議な空間からここへは、イベント塔をイメージするだけで、瞬時に転移することができたのだ。


(不思議な転移だな)


 女神から与えられている知識を探せば、その仕組みもわかりそうだが、あいにく、まだ頭の中はチリチリしていて、記憶の整理がついていない。




「カオルさん、ここでも報酬は、星を選べますよ」


 ビルクがコソッと耳打ちをしてきた。天界人だらけの中で、耳打ちなんて不要だろう? 頭の中を覗く奴がわんさか居るのだからな。


 俺は、一応、ビルクに軽く頷いておいた。


(ただ、言いたかったのかもな)



 ビルクは、妙にテンションが高い。それに、俺と目が合うと、なんだか嬉しそうな表情をする。完全に、俺のマネージャー状態だ。いや、忠犬……ではないな。


(あぶねー)


 うっかり騙されてはいけない。ビルクが俺につきまとうのは、親切心からではない。一人になるのが怖いからだ。


 俺のマネージャー状態で、バタバタしているのも、自分が天界で孤立していないことを、他人に見せているだけだろう。ビルクは、大勢の天界人から恨みを買っているからな。


 俺は、そんなビルクの隠れみのにされているわけか。助かっているのも事実だから、まぁ、いいか。




「はぁい、お待たせしました〜。アウン・コークンさんは、転生師2位でしたから、次の中から報酬をお選びください」


 パンダの着ぐるみを着た人が、ファミレスのメニュー表のようなものを俺に見せた。熊アバター、大流行だな。


 ビルクが言っていたように、勲章の星もあるようだ。欲しいものが選べるというのは悪くない。


「俺は今、勲章の星を集めていまして……」


「まぁっ! じゃあ、数が必要ですね。アウン・コークンさんの転生師レベルはどれくらいですかぁ? それによっては、裏報酬表もご用意できますよぉ」


(は? 転生師レベル?)


「ちょっと待ってください。それって……」


「はぁい、待ちまぁす。ご自身で能力サーチしてくださらないと、私達は見られないんです。アウン・コークンさんの能力は、塔の管理者でも閲覧不能になってますから〜」


(制約がかかっているのか?)



 俺は、女神から与えられた知識を探す。くそっ、頭がチリチリする。とりあえず、能力サーチの方法を探すか。


(なんだ、それだけか)


 自分の能力を調べるには、自分にサーチ魔法を使えば良いだけらしい。


 以前、魔物やロロにも使ったな。ロロがハーフデーモンだとわかって驚いたっけ。



 種族名:不明

 危険度:不明

 苦手属性:無し



 あれ? これじゃない。これは、知ろうと意識するだけの簡易バージョンか。いや、魔獣サーチか。くそっ、頭がチリチリしてよくわからない。



「どうやってサーチするんでしたっけ?」


 俺がそう尋ねると、パンダは首を傾げた。恥ずかしい質問をしたのだろうか。近くにビルクはいない。ビルクは、自分の報酬選びに必死だ。


(肝心なときに居ないマネージャーだな)



「もしかして、勲章の星は、20個貯まってないですかぁ?」


「はい、まだ11個です」


 すると、パンダはパフっと手を叩いた。


「じゃあ、能力サーチは出来ませんよぉ〜。うーむ、ちょっと待っててくださいね」


 パンダは、ジッと変な方向を向いている。たぶん念話だろう。俺は、それもできない。




「はいはーい。お待たせしました〜。あら、貴方は……」


 明るいテンションで現れた女性には見覚えがある。以前、会ったときとは雰囲気が違うな。


「アリーナさん、彼の能力サーチをしたいんです〜。裏報酬を出しても良いか判断できなくて」


(彼女はアリーナという名前か)


「彼の転生師レベルは、あら、グンと上がりましたね、カオルさん」


 彼女は……ビルクの奥さんは、少し驚いた表情を浮かべている。だが、俺の方が驚いているのだ。


 女神が名付けた、アから始まる名前なのか? もしくは、ただの偶然か?


 しかし、さっきパンダが、俺の能力は塔の管理者にも閲覧不能になっていると言っていたよな?



「上がったんですか?」


「ええ、店でお会いしたときとは段違いに。全員命令の成果かしら」


 彼女は、チラッとビルクの方に視線を移した。ビルクは、全く気づかず、必死に報酬を選んでいる。そんな彼を見て、奥さんは、ふふっと笑みを浮かべた。


(ふぅん、関係は悪くなさそうだな)



「裏報酬を出しても大丈夫ですよ。彼の転生師レベルは31。ギリギリクリアね」


 彼女がパンダにそう告げると、俺にふわりとやわらかな笑みを向けた。そして、そのままスッと姿を消した。


(ビルクの世話をよろしく、か)


 なんだか、そう言われたような気がした。二人の関係は、あまり知られてないのかもしれない。



「では、アウン・コークンさん。こちらからお選びください」


 別のメニュー表が渡された。魔法の名前がズラリと並んでいる。新たな魔法を報酬として得ることができるのか。


 だが、勲章の星を集めていると言ったのに、魔法は選べないか。興味をそそられる魔法が並んでいるが……。


「こちらでお願いします」


 俺は、勲章の星5個ぷらすセットというものを選んだ。


(ぷらすって何だ?)


「はぁい。それでは転生塔5階へ、これを持って行ってください。今回の報酬は、転生塔5階の課題を終了した後に、転生塔の管理者から、勲章の星がもらえます」


「あの、俺は転生塔の星は1つ持ってますが」


「ご安心ください。転生塔の勲章の星ではなくて、イベント関連の転生部門の星ですから〜」



 ◇◇◇



「カオルさん、次の仕事ですが……」


 俺がイベント塔から出ると、マネージャー状態のビルクが駆け寄ってきた。


「ビルクさん、すみません。星をもらうために、転生塔の課題をやらなきゃいけないみたいです」


「あぅ、わかりました……」


 ビルクは、しょんぼりとうなだれて、俺から離れて行った。


(何か誤解してねーか?)



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