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44、天界 〜特産株の仕組み

本日より、再開します。

よろしくお願いします。

「なんだと? クソガキがっ!」


(マズイな)


 今の俺は、騒ぎを起こして追放されるわけにはいかない。ロロ達に、あんな約束をしてしまったからな。


 ふと、幼女の言葉を思い出した。


(使えるな)



「今、クソガキだとおっしゃいましたか? 確かに俺の見た目は、10代後半かもしれませんが、天界人は見た目と年齢は合致しない。常識でしょう?」


「なっ……あ、あぁ、そう……ですね」


(ガラリと態度を変えやがった)


「それに、特産株で大損したから、彼の女を犯すと? 貴方達は、正気を失っているとしか思えません。もしかして、もともと頭がとんでもなく悪いのでしょうか」


「おま……いや……くっ」


 コイツらは、たいしたことはないな。俺が真っ直ぐに見ると視線を逸らす。まぁ、俺の顔は暗殺者みたいで怖いのだろうが。



「特産株で大損したと騒ぐより、今、値下がりしすぎているものを探すべきじゃないですか? 貴方達は、投資や投機に関する理解が浅すぎる」


 俺がそう言うと、彼らの表情が変わった。



 特産株は、女神から与えられている情報では、どこかの国の特産株を買うとその国の特産品がもらえるというものだ。


 それ以上の知識は与えられていないが、損したと騒ぐということは、特産株は売買されるのだろう。値下がりしたという話からも、相場があると推測できる。


 すなわち、前世の株式投資と同じ仕組みだ。株主になって配当をもらったり、安く買って高く売ることで稼げる。魔王が治める国を株式会社と考えれば、女神から与えられた知識とも矛盾しない。



「あ、あの、どういうことでしょうか」


「ビルクさんが暴れたことが原因で暴落している価格は、ずっとこのままなわけがないということですよ」


「えっ、あの、お話が難しく……」


(なんだ? 媚びたような顔をしやがって)


 ビルクが暴れたのは、セバス国だ。トップクラスの魔王の国が、こんなことで揺らぐわけがない。



「チカラのある魔王が、国を再建しないわけがないでしょう? いま暴落している特産株も、そのうち元の水準に戻ります。貴方達は、何も損をしていない。慌てて売ってしまうという愚かな行動をしなければ、ですが」


 俺がそう言うと、彼らは頭を抱えた。


(ふん、慌てて売ったか)


「売ってしまいましたぁぁあぁ〜」


「このまま下がり続けると、売れなくなると言われたからぁあぁ」


(へぇ、ストップやすみたいなものか)


「特産株は、売る人と買う人がいないと取引は成立しませんからね。大暴落を防ぐ変動幅制限をされているかは知りませんが、売る人ばかりなら、そりゃ制限がかかりますよ。だが、しばらくすれば、また売買できる。安くなっている特産株は、お買い得ですからね」


「そ、そうか、明日になると売れると言われた。でも明日はもっと下がってるかと……あぁあぁ〜」


(それで、ビビって売ったか)


「地上での1年は、ここでは1日ですよ? 有力な国なら、2〜3日で元に戻りますよ」


 俺がそう言うと、ひとりがハッとした顔をした。


「確かに、少し前のムルグウ国の暴落でも、2日で元通りになったな」


 ビルクに絡んできた奴らは、頭を抱えてもだえている。コイツらのように何も考えない投資家がいるのか。



「それなら貴方達の損失は、ご自身の失敗ですね。ビルクさんに絡むなんて、自分の無知をひけらかしているような愚行ですよ」


 俺は、冷たく言い放ってやった。


 彼らは、かなりのダメージをくらったようだ。特産株を売らなければ損失は確定しなかったと、やっと理解したらしい。



「あ、あの、俺はどうすれば……。全財産をセバス国の特産株につぎ込んでいたから、半分になってしまったんです」


「俺も、セバス国とその周辺国の特産株を買っていて、半分以下です」


(は? コイツら……)


 下手なことを教えると、今度は俺の責任にされそうだな。



「そんな簡単なことは、自分で考えてください。倒産……じゃなくて、滅びそうな国には手を出さず、有力国で価格が下がっているものを買えばいいんじゃないですか」


「確かに、おっしゃる通りだ! 魔王が死ぬと特産株は、価値がゼロになる。強い魔王の国か」


「今は、どこも一気に下がっているぞ」


「こうしている間にも、相場が回復していくかもしれない。急がないと!」


「あ、ありがとうございました!」


 彼らは慌てて、経理塔1階から出て行った。話を聞いていたらしい他の人達も、何人もがそそくさと部屋から出て行った。




「カオルさん! すごい知識ですね。一体なぜ……あっ、もしかして、リベンジ転生ですか」


 ビルクが大きな声でそんなことを言う。周りの視線を一気に集めて、俺は急に居心地が悪くなった。


「いえ、俺の前世の知識ですよ。似た仕組みのものがあったので」


「そうでしたか! カオルさんと親しくなれた俺は、強運ですね。あはは。じゃあ、星集めに行きましょう」


(別に、親しくはないが)


 俺は、そう反論したい気持ちを抑えた。少しでも早く勲章の星を集めるには、ビルクの協力がある方がいい。




 ◇◇◇



 ビルクが俺を連れて行ったのは、数ある魔道具塔のひとつだ。魔道具塔の多くは、いわゆる魔道具工場らしい。


「カオルさん、ここが俺の職場になった魔道具塔です。箱庭の建造物パーツの製造をする工房なんですよ」


 ビルクが笑顔で、俺を招き入れる。案内したいだけなのか? 俺にはそんな暇はない。


「ビルクさんの職場訪問ですか」


「カオルさん、魔道具塔の工房は、勲章の星集めをしやすいんです。魔力は大丈夫ですか?」


(は? 魔力?)


「まぁ、魔力切れな感じはしないですが」


「眠ると魔力値は回復します。だけど、天界で眠ると地上では何十日も経過してしまうので、眠るのは地上にするんです」


 ビルクは笑顔だ。なぜか、俺にアドバイスすることが楽しくて仕方ないらしい。


「へぇ、確かに」


「カオルさん、10日いえ9日以内に、勲章の星を30個集めましょう!」


(そんなことができるのか?)



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