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43、天界 〜箱庭祭りの偵察

「俺、鎌を失っただけじゃなくて、箱庭師に格下げになった。アイテムボックスも没収されてる」


「あんた、ほんとバカね。深く反省して、一からやり直しなさい」


「あぁ、まいったよ」


 ビルクは、彼女にいろいろな報告をしている。長期のミッション中に暴走したから、話すべきことが溜まっていたらしい。


 だが、リベンジ転生したという話はしないな。彼女が言っていたように、ビルクは自分の最悪な失態を知られたくないらしい。


 死んで生まれ変わったのだから、記憶以外の物の引き継ぎは、当然、無いようだ。しかし彼はそれを、没収されたと言っている。


 ときどき俺に目配せをしてくるのが、うっとうしい。ビルクはプライドが高いようには見えないな。彼女だけには、いい格好をしたいのかもしれないが。



 あの死神の鎌は魔王クースを取り込んでいたから、壊すためには、持ち主のビルクを殺すしか方法がなかったようだ。


 だがビルクは、魔王クースの存在を完全に忘れている。彼女が魔王クースという名を出しても、そんな魔王は存在しないと鼻で笑っていた。


 彼自身は、すべての記憶を引き継ぐことができたと思っているが、それは少し違うようだ。



「俺は、カオルさんの勲章の星集めを手伝うからな」


「なぜ、あんたが後輩を手伝うの?」


「あ、いや、俺は、カオルさんには恩があるからな。それに、ほら、俺も星を集め直すついでだ」


 彼女が口を割らせようとしても、ビルクは、俺が転生させたとは言わない。彼女はすべてを知っているのに……あぁ、ビルクの反応を見て遊んでいるのか。


「そう。まぁ、あんたは、しばらくは天界から出られないから、星集めでもしてなさい。カオルさん、すみませんが、バカに付き合ってやってくださいね〜」


(天界に軟禁されたのか)


「あ、はぁ」


「一人でいるのが怖いんだと思うよ。だから、強そうな後輩を頼りたいんでしょ」


 彼女がそう言うと、ビルクは動揺したのか、パシャリと飲み物を倒した。


(意外に素直な奴かもしれない)


「おい、おまえが変なことを言うから……カオルさん、すみません。濡れてませんか」


「大丈夫です。確かに、死神の鎌持ちが鎌を失うと不安でしょうね」


 特産株で大損した天界人の怒りは、ビルクに向いているのだろう。まぁ、自業自得だが。


「さすがカオルさん、よくわかってる」


「あんた、ほんと、ちゃんとやり直しなさいよ」


「わかってるって」


 ビルクが俺を手伝うというのは、そういうことか。恩があると思っているのも確かだろうが、一人になることを恐れているのだな。


 ある程度の勲章の星が集まれば、コロッと態度も変わりそうだが。



 ◇◇◇



 経理塔の2階の店を出て、1階へと移動した。


「じゃあ、私は、ここで失礼しますね〜」


 そう言うと、彼女は経理塔から出て行った。



「カオルさん、俺達は、箱庭祭りを偵察しましょう」


「箱庭祭り?」


「不定期で開催されているんですよ。今日が最終日だから、何が売れているかを調査するんです」


 ビルクは、大柄なガタイに似合わない低姿勢だ。どうやら、彼が見に行きたいらしい。一人で居るのは不安なのか。


(そういえば、幼女が嫌そうにしていたな)


 俺の研修の日にも、経理塔の1階では、箱庭祭りをやっていた。幼女……アイリス・トーリは、俺には関係のないものだと言っていたが。



 俺がビルクの後ろをついていくと、彼はホッとしたような笑顔を見せた。俺は、護衛代わりか。


「カオルさん、パーツがどれも売り切れていますよ!」


 ビルクは台を指差して、なぜか満面の笑顔だ。そして、あちこち歩き回って何かを確認しているようだ。


 台の上には、木や建物や橋や道などのミニチュアのパーツが並んでいる。箱庭を作る趣味があるのか。


(あっ、箱庭は……)


 俺の感覚とは違うものだ。箱庭ゲームのパーツのようなものが並んでいるが、これは、ブロンズ星の領地改革や寄贈に使う魔道具だ。


 女神から与えられた知識によると、箱庭で作り上げたとおりに、ブロンズ星の領地が出来上がるらしい。実際には、天界魔導士や箱庭師が、現地の確認や不具合の調整と仕上げをするようだ。


 箱庭の箱部分は、いわゆる領地だ。自分で領地を買うこともできるし、誰かの領地にパーツを置くこともできる。


 魔王が治める領地にパーツを置くと、それを寄贈することになり、見返りとして特産品がもらえるらしい。


(そうか、箱庭の箱を買ったら自分の領地になるのか)


 箱庭は、頻繁に売買されているようだ。いわゆる領地売買か? 天界人がどういう感覚で、チマチマと箱庭を作るのかはわからない。


 広大なブロンズ星では、未開の地がまだまだ多い。そんな未開の地を買って、まちづくりをして遊ぶのだろうか。


(ゲームが、リアルになる感じか?)


 趣味としては、スケールが大きすぎるが悪くない。それによってブロンズ星の未開の地が、発展していくのだからな。




「おまえ、よく、こんな場所に顔を出せたな?」


「ビルク、おまえのせいで大損だ。どうしてくれる?」


「いや、あの……」


 ビルクが数人の男に絡まれている。まぁ、自業自得だ。


「おまえ、アイテムボックスも没収されたらしいが、暴れる前に、あちこちの女に預けていたのだろ?」


「いや、預けてなど……子供に財を渡したのは、いわゆる養育費だ」


(いったい何人と浮気してるんだ?)


 俺は、彼女の怒りを思い出した。仁王立ちだったよな。ビルクは、だからエロ魔王と仲が良いのか。やっていることは、似た者同士だ。だが、魔王スパークのような優しさはないが。



「それなら、おまえの女子供から回収するしかないな」


「やめてくれ! 俺はブロンズ星へは立ち入り制限が……」


「ふん、ちょうどいい。おまえの女も味見させてもらうか」


(は? 何を言い出す?)


「やめて……」


 ビルクが懇願するようにすり寄るが、男達はイヤらしい笑みを浮かべるだけだ。



「おまえら、クズだな。頭おかしいだろ!」


 俺は思わず……怒鳴っちまった。



皆様、いつもありがとうございます。

昨日から体調不良のため、更新が滞っております。ごめんなさい。

月曜日くらいから再開したいと思います。

よろしくお願いします。

【2月12日(土)追記】

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