表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/215

35、セバス国 〜混乱するカオル

 魔王スパークの転移魔法で、俺は、セバス国へと連れて行かれた。側近らしき魔導士風の男二人や、捕らえたセバス国の調査兵達7人も一緒だ。


 到着したのは、広すぎる何もない場所だった。セバス国の軍事施設に、天界からの討伐隊が集まっていると言っていたが……誰もいないな。


(飛行機のない空港みたいだ)


 地面は平らに固められていて、ただ広いだけの場所だ。かなり離れた所に建物が見える。あれが軍事施設なのだろうか。



「魔王スパーク、何ですか? その土産は?」


 すぐ近くから声が聞こえたが、何も見えない。


「田舎町の市場で暴れていた兵を連れてきたよ。キミのとこの子じゃないかと思ってね〜」



 突然、目の前の空間に、大きな裂け目ができた。まるで景色が背景画だったかのように破れたのだ。


(なっ、何だ?)


 景色が裂けると、巨大な丸いオブジェのような建築物が現れた。そして扉が開き、その建築物に繋がる階段がガタンと落ちてきた。


 魔王スパークは警戒もせずに、その階段を上がっていく。その後ろから、魔導士風の二人の配下が付いていった。


 俺は、転がっているコイツらの見張りをしておこうか。もし顔を知る天界人と遭遇したら、説明が面倒だ。



「カオルも、来てくれる? その人達は放置でいいよ。もうセバスの別の兵が来てるから」


「は、はぁ」


 魔王スパークは、俺が嫌がっているのがわかっていて、来いと言うのか。そういえば、苦手な天界人が来ていると言っていたか。


 俺も、仕方なく階段を上がる。途中、チラッと振り返ると、拘束していた7人の姿が消えていた。無事回収されたのか?




 階段を上がって、その建築物に入ると、広い立派な部屋になっていた。軍事施設というより、城のような雰囲気だ。


 ただ、何十人もの武装した人達がいる。見た目も服装もバラバラだ。増援の天界人だろうか。


(あっ、アイツ……)


 その集団から、少し離れた場所にポツンと立っている小さな少女。相変わらず、人混みが苦手なのか。腕を組み、口をへの字に結び……一言で言えば不機嫌そうだ。


 俺が見つけたときには、彼女は俺に気づいていたのだろう。毒舌幼女は、俺を睨んでいるようだ。だが、こないだとは違って、元気がないというか暗い。




 魔王スパークとその配下は、その集団を避けるように、奥へと進んでいった。そして、鎧を着た男と話をしている。あの男は、魔王ではなさそうだな。


(俺は、どうするかな)


 魔王スパークに味方するつもりもないが、ロロが捕まっているなら、絶対に救出したい。ロロには世話になっている。


 しかし、奥へ行くのも面倒そうだ。俺は今のところはまだ、この星の住人ではないからな。


(人見知りの相手でもしてやるか)



「おまえ、緊急要請を受けたのか?」


 俺が幼女に問いかけると、まわりからの視線が突き刺さる。俺が、魔王スパークの城の奴隷の服を着ているからだな。


「は? おまえのようなスカタンに、答える義理はない」


 幼女はギロッと睨んで、視線を逸らした。めちゃくちゃコミュ障なガキんちょじゃねーか。


「また、スカタンスカタンって、うるせーな。その毒舌を何とかしろよ。それに、人見知りが酷すぎるんじゃねぇの?」


「は? 私に話しかけてくるな、新人!」


「なんだよ、感じ悪りぃな。ってか、おまえ、緊急要請なんか受けて大丈夫なのかよ? 対象者は死神の鎌持ちだぜ、アイちゃん?」


 ピリッと弱い雷撃をくらった。いや、違うか。コイツは苛立つと、勝手に雷撃を放つ癖があるんだったか。


「スカタン! おまえに、その呼び名は許可していない。それに、なぜその情報を知った? おまえには、その権限はないはずだぞ」


(毒舌全開だな……)


 だけど、さっきより、少し表情はマシか。



「天界人ビルクとは面識がある。それに買い物の護衛中に、セバス国の調査兵に襲撃を受けた。その兵がベラベラと喋っていたからな」


「は? なぜ……あー、魔王スパークの天界人イジメのミッションか。報酬に釣られたんだな? スカタン」


「報酬は関係ねぇ。スカタンスカタンってうるせーぞ」


 俺の声が大きくなったためか、その集団だけでなく、この国の魔王セバスの兵らしき奴らまで、俺の方を見ている。


(絶対、誤解してるだろ)


 俺が幼女イジメをしていると勘違いしてねぇか? この毒舌幼女アイリス・トーリは、俺よりも転生師レベルが高い。この子供のアバターは、チカラを制御するためのものだろう。




「おや、賑やかですね〜。彼とお知り合いでしたか、大魔王様」


 魔王スパークが、こちらに戻ってきた。


(いま、何て言った? 大魔王様?)


 毒舌幼女は、魔王スパークをキッと睨んでいる。


「スパークさん、権限のない新人がいるのですよ?」


(は? また二重人格か)


 幼女は、可愛らしい声でそんなことを言った。


「おや、カオルさんと親しいのかと勘違いしました。申し訳ございません、雷帝リストー様」


 魔王スパークは、わざと俺に教えているらしい。これも、天界人イジメか。だが……ちょっと待て。毒舌幼女が、大魔王リストーなのか? 転生師じゃないのか?


(頭がチリチリする)


「スパークさん、何を言っているのかしら? この新人の名は、違いますわよ」


「そうでしたか。彼は、僕の城では、カオルと呼ばれていましてね〜。ふふっ、前世の名前だろうと察していましたが」




「準備が整いました!」


 奥の方から、大きな声が聞こえた。その直後、幼女は複雑な表情を浮かべた。


(また、暗くなったな)



 奥からこちらへ歩いてくる男の姿を見て、魔王スパークは、顔から笑みを消した。男は、マントをひらひらさせ、笑みを張りつけている。


 だが、男の放つオーラにゾワリとする。


(魔王セバスか)



「おや、リストー様がいらっしゃるとわかっていれば、色欲の魔王など呼ばなかったのですが」


「セバスさん、私は天界人として来ています。この幼き姿のときは、その名で呼ぶことはご遠慮ください」


(は? 天界人として? 大魔王が天界人?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ