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27、スパーク国 〜色欲の魔王

 ロロと、食堂へと入っていく。境界線近くの食堂とは違い、中にいる人達の年齢は若い。ほとんどが子供だな。


「ここは、一部の使用人しか利用しない食堂です。外の巡回へ行く人と、未成年の子供達だけです」


「なるほど、若い人が多いなと思っていました」


「子供のための食堂ですからね。カオルくんも年齢不詳な感じだけど、未成年ですか」


(は? あぁ、確かに見た目は10代後半か)


「俺はたぶん大人ですよ。成年が何歳かは知らないですけど」



 すると、ロロは俺をジッと見ている。なんだか殴りたくなるような不快さを感じるが……サーチか。


 しばらく俺の顔をジッと見ていたが、ロロは首を傾げた。


「カオルくん、何かレジスト魔法を使ってますか?」


(は? 何だ、それ)


 今度は、俺が首を傾げる番だ。素朴なロロの表情を見ていると、不思議と怒りは沸いてこない。


「レジスト魔法って何ですか?」


 するとロロは、パッと右を向いた。



 そういえば、ジーッとこちらを睨んでいる男がいる。


 年齢的には30代後半に見える。この場所のヌシのような雰囲気だな。なんだか変な印象を受ける。


(ザワリとした嫌な気分だ)



「ビルクさん、彼は、どこかの魔王の息子でしょうか」


 ロロがその男に尋ねた。


(へ? 魔王の息子?)


「いや、違うな。ロロのサーチを弾いたようだが、俺のサーチは通る。コイツは、前世の記憶を持つ雑種だ」


 さっきのザワリとした嫌な感じは、サーチ魔法か。どうやら、調べられると不快感を感じるらしい。


(まずいな、昨日、ロロのサーチをしてしまった)



「じゃあ、カオルくんは、ビルクさんが捜している種族じゃないんですね」


「あぁ、ただ、左手首にそんなものを隠している現地人は、珍しい。少し興味はあるがな」


(へぇ、鎌まで見えるのか)


 ロロは、俺を試していたようだ。まぁ、こんな場所で暮らす奴が、普通にいい人だというのも違和感しかない。


 だが、少し反論しておく方が良さそうだな。



「ロロさん、俺は何かを調べられているんですか?」


 すると、ロロは慌てている。俺の真顔が怖いのだろう。


「カオルくん、ごめんね。昨日、僕のサーチをしていたからさ。この城を調べに来た他の魔王の息子だと思ったんですよ」


(やはり、バレていたか)


「えっ? サーチって……」


 言葉が続かない。ごまかすか謝るか……。


「ロロ、この子には、そんなチカラはねぇよ。チカラのある奴は、サーチされたことも気づかせない。おまえの種族を調べたんじゃないか。ハーフデーモンは、やばそうだとよ」


 そう言うと、男はケラケラと笑った。


(さっき、頭の中の記憶を覗いたのか)


 魔王の城には、いろいろな奴がいるな。だが、俺を雑種だと言った。どう見えているのか、ちょっと興味がある。



「カオルくん、僕は弱いですよ? ハーフデーモンなのは、母親が悪魔族だったからです」


「ん? お父さんは、人間なんですか?」


「へ? なぜ、人間?」


 ロロは首を傾げた。首を傾げたいのは俺の方だ。母親が悪魔族だというだけで、すべてを察すると思っているのか?



「おまえは、何も知らないらしいな。この部屋にいる子供は、すべて魔王スパークの子だ。俺は、天界人だがな」


「ええっ!?」


(色欲の魔王、エロすぎねーか?)


 ここは、魔王の子供達の部屋? だが、それならなぜ奴隷なんだ? それに、ロロは兵として雇われたと言っていたが。


「ふん、天界人を知らないらしいな。俺は、この城を守ってやる長期ミッション中だ」


(そっちじゃねーよ)


 俺が天界人に驚くわけがない。天界人イジメが魔王スパークの趣味らしいから、何人かは居るだろうと思っていた。


 だが、長期ミッションということは、俺とは別件か。



「天界人なのに、使用人として潜入しているんですか」


 俺は、知らぬフリをして嫌味を言ってみた。案の定、ビルクという男は、頭に血がのぼったらしい。


 ガタンと立ち上がったところを、ロロが必死に制している。


「カオルくん、そういうことは失礼にあたるんです。謝ってください」


(は? 嫌だね)


「何が失礼だったんですか? 城を守る仕事なら、使用人の中に入り込むのも作戦かなって思ったんですけど?」


 俺は思いっきり、キョトンとしてやった。



「バカなガキだな。ロロ、きちんと教育しておけよ。コイツは、天界の転生師が関わった転生者だ。他の世界から、ここに導かれたばかりだぜ」


 なんだか、微妙に違う。わざと俺の素性を隠しているのか? それとも、天界人のくせにわからないのか?


「それなら、カオルくんはすぐに殺されますね」


 物騒なことを言いつつ、ロロは喜んでいるかのようだ。俺が殺される? それが楽しみなのか?


 あぁ、そうか。ブロンズ星の住人は、魂の格がどうとかにこだわるのか。天界人も、いやこの世界すべてが魂の格という意味不明なものに、こだわりを持つ。


 俺には、到底、理解できない感覚だ。なぜ、今を大切にしない? 今の人生はどうでもいいのか?



「あぁ、今は雑種だが、次は上級魔族に生まれ変わるかもしれない。左手首に、死神の紋章が隠れているからな」


(は? 鎌じゃなくて紋章?)


「す、すごい。死神様が次の人生を保障してくれているんですね。カオルくん! 死んでも次もまた記憶が引き継がれますよ! よかったですね」


 ロロは、無邪気に喜んでくれているように見える。


「ロロさん、俺にはよくわかりません」


「心配しなくても大丈夫ですよ。カオルくんは、だから、この城に導かれたんです」


「この城に導かれた? ここにいると殺されると聞こえたんですが……」


 すると、ロロは笑顔を見せた。少年っぽさの残るかわいらしい笑顔だ。


「カオルくん、この城の使用人でいれば、理不尽な死に方をします。そしたら、ほぼ確実に、記憶を持って生まれ変わることができるんです」


 ロロは、まるでその時を待っているかのようだ。魔王の息子なんだろ? なぜ、そんな理不尽な死を望むような顔をしている?


(まさか、あの女も同じなのか?)



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