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25、スパーク国 〜魔物の情報、魔族もわかる

「カオルくん、コイツらは、かなり怪力ですよ」


 ロロも、魔物に剣を向けている。城には兵として採用されたと言っていたから、剣には自信があるのかもしれない。


 俺の手には折れた柵の木の棒だ。だが、物資強化の魔法を付与した。簡単には折れないだろう。


「見たことのない魔物ですが、適当にやってみます。殺しても大丈夫ですか」


「ええっ!? 殺すのは無理だと思うよ。魔物だからね」


(ダメだとは言わないな)



 牙のあるサイのような魔物だ。ただ、かなりの巨体だ。怪力だとしても、スピードは……。


 魔物が、ロロに突進していく。彼は、ギリギリで避けた。巨体なのに、わりと速いようだ。



 ジッと集中して魔物を睨むと、頭の中に情報が浮かんだ。


 種族名:レヌーガ

 危険度:Gランク

 苦手属性:雷


(なんだ? これ)


 これも、女神から与えられている能力らしい。睨んでいたことで、俺がサーチをしたのか。


 苦手属性がわかるのはありがたいが、Gランクが強いのか弱いのかが、わからない。


(あっ、そうだ)



 俺は、ロロをジッと睨んでみる。


 種族名:ハーフデーモン

 危険度:Cランク

 苦手属性:水、土、光


(やはり、サーチだ)


 相手を知ろうとして集中すると、わかるのか。ハーフデーモンって、やばそうだな。


 ロロは、この魔物を知っているみたいだが、倒せないと言っていた。相性が悪いのかもしれない。ロロは剣を抜いているし、ビビっていない。


 ということは、ロロの方が強いのか。だが、危険度は、単純な戦闘力だけじゃなさそうだ。ハーフデーモン……やばそうだ。



「カオルくん、やはり、無理しないでください」


 俺が突っ立っているから、ロロは心配してくれているようだ。まさか、ロロを調べていたとは言えない。


「大丈夫です。魔物の弱点を探っていました。雷属性に弱いようです」


「えっ? カオルくん、すごいね。だけど僕は、攻撃魔法は火しか使えない。コイツには全く火魔法は効かないんだ」


(やはり相性が悪いらしい)


「じゃあ、俺、ちょっとやってみます」


 俺は、木の棒に雷を纏わせた。


 そして……。


 バコッ!


 再びロロを狙って突進してきた魔物を、俺は、木の棒でぶっ叩いた。


 すると、まるでコントのように魔物が転がり、ピクピクしている。感電したみたいだな。


(弱っ!)


 1体をぶっ叩いたためか、もう1体は逃げていく。まぁ、追う必要もないだろう。性悪な魔王スパークの領地だしな。



「うっそ! カオルくん、すごい! コイツ、こんなに雷に弱いんだ」


 ロロは、ピクピクしている魔物の喉をかき切った。すると、魔物は動かなくなった。死んだのか。


「この肉、美味しいんですよ」


 慣れた手つきで、血抜きをしている。


(うわぁ、キモッ)


 ぶっ叩いたくせに、俺は、こういう解体は苦手だ。転生師には、向いてないと思う。



「あはは、カオルくん、怖がらなくていいよ。もう絶命しているし、毒もない」


「あー、いや、その解体は苦手というか……」


「えっ? そっか。この国の子じゃないんだね。みんなも、もう出て来ていいよ。大丈夫だから」



 この畑の人達が近寄ってきた。


 隠れていた4人も、次々と顔を出している。子供? 女の子ばかりだな。隠れる能力か何かがあるのだろうか。全く気づかなかった。



「あぁ、ありがとうございます! 魔物を倒してくださったのですね」


 畑の人達は、ロロを拝むように手をすり合わせている。


「僕は、トドメを刺して解体しているだけですよ。倒したのは彼、新人のカオルくんです」


「あぁ、なんと頼もしい新人さんで。ありがとうございます。この場で解体してくださったから、ここには当分の間、魔物も赤猿も来ないと思います」


(血の臭いか)


 だから、ロロは、わざわざここで解体しているのか。



 ◇◇◇



 俺達は、畑のある集落に招かれた。


「さっきの肉を、調理してみました。あの、本当に、残りの肉をいただいても構わないのですか」


「構いませんよ。僕達が持ち帰っても、逆に困るだけですから」


「あぁ、本当にいつもありがとうございます」


 集落の長の屋敷だろうか。広い食卓に、たくさんの料理が並んでいる。女の子達が目を輝かせていることから、ご馳走なのだろう。


 食事は、優しい素朴な味だった。


 あの女と泊まった宿の食事は、味がなかったが、俺の味覚がおかしいわけではなさそうだ。



 そして、泊まる部屋も用意されている。女の子達とは別の部屋だ。


「カオルくん、あまり食べてなかったけど、口に合わなかった? この集落は、悪くないんだけどな」


「優しい味で美味しかったです。ただ、解体を思い出してしまって……」


「あはは、そっか。ごめんね。だけど、すぐに慣れると思うよ」


 ロロは、もうベッドに入っている。俺も、寝るフリをする方がいいか。


「明日は、早く戻るのですか。転移魔法陣は、この集落にあるんでしょうか」


「うん? 勝手に戻るから大丈夫だよ」


「勝手に?」


「そうそう。すべては、魔王スパーク様の術だよ。どこに行っても、翌朝には城の裏庭に戻るから大丈夫。ゆっくりおやすみ……」


 話しながら、ロロは途中で眠ってしまった。疲れていたのだろう。かなり気を遣う立場のようだからな。


 奴隷とは言っても、俺のイメージとは少し違うようだ。使用人という言葉の方が、しっくりくるな。



 ベッドに入ると、俺にも眠気が襲ってきた。眠る必要はないが、眠れないわけではない。


 勝手に城の裏庭に戻っているという術は、あの女が勝手に朝になると村に戻っていたものと同じか。


 だとすると、身体のどこかに印をつけられたのか? いや、そんな機会はなかったはずだ。俺だけがここに取り残されるかもしれない。


 まぁ、それなら、転移魔法を使って、戻ってやればいいか。


(魔王スパークの探し物か……)


 天界人のせいで、心が動かなくなったと言っていたか。何か、嫌なことをされたということか。


 そう考えているうちに、俺は眠りに落ちていった。




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