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21、天界 〜転生塔に借りた私室の人工知能

明けましておめでとうございます。

今年も、よろしくお願いします。

『アウン・コークン様、おかえりなさいませ』


 転生塔29階に借りている部屋に戻ると、頭の中に声が響いた。左側の部屋の扉が開いているからか。


(あぁ、何も買ってないな)


 ガランとした何もない部屋。やはり、俺の心の中そのものだな。だが、今の俺にはやるべきことがある。



 俺は、システム部屋へと入り、椅子に座った。


「俺の職場と同じ画面が出せるか? 転生塔10階お客様相談室だ」


『はい、承知いたしました』


 目の前には、即座に、さっき見ていたのと同じ画面が現れた。俺はクレーム対応を開く。


(あー、命じる方が早いか)


 いや、まぁ、見慣れた画面だ。さらに至急用件を開く。目まぐるしく、用件は増えたり減ったりを繰り返している。


「至急用件で、セバス国の現地に行く短期の依頼を取れるか?」


『報酬などの下限条件、村や地域の指定はありますか』


(あの女が生まれた場所の名前は……)


 天界人の記憶力は、便利だ。だいぶ前に見た映像を完全に再生するかのように思い出すことができる。


「セバス国の東部、サキュバスの森の近くを探してくれ。報酬は、いくらでも構わない」


『かしこまりました。しばらくお待ちくだ……』


(うん? フリーズしたか?)


『申し訳ございません。今、その付近は、緊急要請の対象地域になっております。すべての受注が止められていますので、緊急要請が終了するまでお待ちください』


(緊急要請だと?)


 今、天界人を討伐する緊急要請の最中だったな。セバス国なのか? だからフロア長は、俺に付きまとっていたのか。


「緊急要請の内容の表示は、できるか?」


『はい、少しお待ちください』


 すぐに表示されたのは、天界人の暴走の制圧という文字だ。場所はセバス国の広い範囲だな。サキュバスの森も完全に含まれている。


 まさか、あの女が巻き込まれていないだろうな?


「今の状況は、わかるか?」


『申し訳ございません。アウン・コークン様には、その情報についての権限がございません』


「状況確認に、権限が必要なのか?」


『はい、天界人を対象とした緊急要請の詳細は、星20個以上の方のみとなっています』


(また、星か)


 だが、フロア長は状況を把握していたようだ。フロア長って、転生塔の星2つだろう?


「フロア長は、把握していたみたいだけど」


『はい、転生塔のフロア長に就任する条件は、星30個以上ですから、ご覧になる権限がございます』


(なんだって?)


「星2つじゃねぇのか」


『転生塔の星2つ以上を含む星30個以上、さらに他の塔の管理者を経験することが、転生塔のフロア長の就任条件になっております』


 塔によって、就任条件が違うということか。じゃあ、フロア長は、他の塔の管理者をしていたことがある? エリートじゃねぇか。


 あっ、そういえば、女神が転生師はエリートだと言っていたか。だが仕事がキツくて、辞める人が続出の職種だ。失敗してクビになるのかもしれないが。



「短期間で、楽に星が得られるリストはあるか?」


『はい、星1つのリストがございます』


 画面に表示されたのは、目がチカチカするほど大量の文字だ。大画面に小さな文字だらけだと、威圧感すら感じる。


(文字の暴力だな)


「全部じゃなくていい。おすすめだけにできるか?」


『転生師に人気の副業ランキングに切り替えます』


 ずらりと並ぶリスト。だが、さっきよりは見やすい。


(へぇ、だいたい1日か2日だな)


 ランキング上位には、魔道具塔が並んでいる。魔道具塔は、一体いくつあるんだ? 一番人気は、箱庭塔か。毒舌幼女が、箱庭祭りに嫌悪感まる出しだったことを思い出す。


「逆に、手を出さない方がいいリストはあるか?」


『天界全体で、獲得者が少ないランキングならこちらです』


 ダントツで1位は転生塔だ。転生塔の星はレアなのか。2位以下は、行ったことのない塔ばかりが続く。


(飽きてきた)



 そろそろ、緊急要請も片付いた頃だろう。天界とブロンズ星では時間の流れが違うからな。


「セバス国の緊急要請は終わったか?」


『まだ、すべての受注は止められております』


(まじかよ)



「じゃあ、俺が担当した転生者の、現時点の状況を確認をしたいんだが」


『承認保留の案件を表示します』


 ふたつの名前が表示された。


 レプリーとアンゼリカだ。あのサキュバスは、アンゼリカという名前なのか。


 俺は、アンゼリカを選んだ。


 すると、赤ん坊の女の子が映った。現地時間に合わせているのか、画面がすごい速さで動いていく。だが、一生を見た時に比べれば、随分と遅いか。


 彼女の森は、特に被害は無さそうだ。妙な霧が漂っている。これが結界か何かの役目を果たしているようだ。



「緊急要請が長いな」


『はい、まだ、解決予測も出ておりません』


(討伐失敗じゃねぇのか?)



 だが、どうする? まぁ、赤ん坊に会いに行っても、意味がないか。俺は焦りすぎだな。


 それに、サキュバスの森は、やはり不安だ。フロア長に、あんなことを言われたからかもしれないが……。


(俺を簡単に操る者か)


 緊急要請の天界人は、サキュバスに操られているのかもしれない。そう考えると、サキュバスの森がすっぽり対象地域なのに、何ごとも無さげな現状に納得できる。


(やはり、サキュバスの森は、やめよう)



 彼女がスパーク国へ行くのを止めるより、この女を殺すバカを説得する方が賢いかもしれない。



「スパーク国の魔王の城付近の至急用件は、あるか?」


『はい、少しお待ちください』


(あん? 魔王からの依頼?)


「一番上のものは、いつから出ている?」


『現地時間で10日ほど前です。受注されると9日ほど時を遡ることになります』


「面倒な仕事か?」


『魔王からのクレームです。受注する人はいません。表示期限が切れると、クレーム差し戻しを致します。ですが、すぐに同じクレームが来るので、報酬は跳ね上がっています』


「じゃあ、それを受注する」


『かしこまりました。転生塔10階へお願いします』




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