151、深き森 〜街道沿いの好戦的な外観の店
俺は、ロロにも強く勧められて、街道沿いの店を見に行くことにした。リィン・キニクだけじゃなく、ロロも、あの漁船のような見た目は、あり得ないと言っていた。
(逆に、興味がわいてくるな)
天界の管理塔から見られていることを意識して、俺は、転移魔法は使わず、飛翔魔法でゆっくりと空を飛んで行く。管理塔が森を監視していなければ、気づかないだろうがな。
広大すぎる森のあちこちに、目印のような旗が見える。布を木にくくりつけてあるだけの雑な目印だ。一見すると、何かの罠にも見えるが、これはおそらく作務衣を着た人間達の目印だろう。
アイリス・トーリが、あちこちに転送装置を設置する案内をしていたから、ついでに目印も付けたのだろうな。
(ふっ、ほんと雑だな)
この高さを飛んでいると、管理塔の5階あたりが見える。覗くつもりもないが、急に中の様子が見えなくなった。俺に気づいて、目隠しバリアでも張ったらしい。
迅速な反応は、逆に、常に森を監視している証拠だとも言える。ご苦労なことだな。それほど天界も必死なのだろう。
街道が見えるより先に、不思議な建造物が見えてきた。天界の管理塔の真向かいだから、あれが噂の漁船か?
森から見ると、漁船には見えない。遊園地の巨大な建造物のような感じだが……。
建造物の上に、パタパタと風に揺れる巨大な黒い布のような物が掲げられているのが見えてきた。何か文字が書いてある。
遠視魔法を使って見てみると……。
(は? 何だ?)
一瞬、見知らぬ文字かと思ったが、これは漢字だ。黒い布に白い文字が書かれてある。
[ 夜・露・死・苦 ]
これって、やんちゃな人達が使う漢字か。パサリと裏側が見えた。こちらは白い絵だな。ドクロマークだ。
(あのババァ、何やってんだ?)
たぶん、リィン・キニクがこれを見ると、キレるだろうな。あー、そうか。それであり得ないと騒いでいたのか。
だが、ロロも騒いでいたよな。ロロには日本語は読めないはずだけど。
ようやく街道沿いにたどり着いた。かなりの人通りがある。まぁ、便利な横断道だからな。
俺は、管理塔の前に降り立ち、振り返ってみた。
(ククッ、おもしれー)
確かに、管理塔を威嚇するかのような戦艦だな。一応、船のデザインの建物だが、黒い旗の下には、大砲がいくつも並んでいる。本物か否かは定かではないが、この管理塔の各階を狙っているかのようだ。
俺は、街道を横切り、店へと入っていく。
「まだ準備中……あっ、カオルさん!」
大量のタオルを抱きかかえたレプリーが、キラキラな笑顔で振り返った。その近くには、マチン族のダンもいる。二人とも俺が転生させたから、何か通じるものがあるのか、親しそうにしている。
「リィリィさんから、店ができていると聞いて、見に来ましたよ。あっ、仕事の邪魔はしないから、そのまま続けて」
「はい!」
俺が声をかけると、みんな元気に返事をした。なかなか良い感じだな。誰かが事前に教育したのだろうか。
「カオルさん、この店は、魚を生食する店なんです。屋根に、ガイコツのマークをつけているから、食べたら死ぬんじゃないかって、みんな心配しています」
レプリーがそう話すと、ダンは半笑いだ。確かに、生魚を食べたことがないと、あのドクロマークは不吉だな。
バブリーなババァは、それがわかっていて、わざと遊んでいる気がする。アイリス・トーリも、ノリノリだもんな。
「レプリー、あの旗には、僕の前世の国の文字が書いてあるよ。あのマークも、その文字に合わせたのかもね」
「カオルさんの前世!?」
レプリーもダンも、キラッキラな目をしている。二人だけじゃないな。開店準備を進めている人達も、興味深そうだ。
「そう。文字はね、よろしくって書いてあるんだ。ガイコツに見える旗は、やんちゃな人達が乗り物に付けたりするんだよ。この店の旗は、海賊船をイメージしてるのかな?」
「ええっ? よろしくって、普通の店の看板にもよく書いてありますよ。カオルさんの前世の国の文字なんですね! わぁっ、すごいな〜」
(俺は使わないけどな)
俺の前世の国の文字だと聞いて、店員達は目を輝かせている。彼らからすると、日本は異世界だもんな。
「店をさっと見てもいいかな?」
「はい! ご案内します」
レプリーは、タオルをテーブルに置き、キラッキラな笑顔を浮かべている。もう15歳くらいだっけ? その割には少年のような目をしている。ゴブリンだった頃も、こんな目をしていたな。
(あと4年か……)
俺は、フッと寂しさを感じた。コイツが結婚するのは20歳くらいだったな。俺は祝ってやれないか。
「カオルさん? どうしましたか? 何か、マズイことでも……」
(あっ、顔に出てたか)
レプリーの目は、一気に不安げに揺れている。
「うん? いや、生魚を店員みんなに体験してもらう方がいいかと思ったんだが」
「あぁ、そうですね……ビクビクですよね」
死にたがる人間は居ないのか……とも思ったが、違うな。意味なく死んでも、魂の格は上がらないということか。
(コイツらの感覚は難しい)
「何階まであるのかな?」
俺がそう尋ねると、レプリーは困ったようにキョロキョロしている。知らないことを聞いてしまったらしい。
「外から見ていただろう? 4階建にしてやったよ」
背後から、バブリーな足音が近づいてきた。いや、足音は普通か。コツコツと音を立てて……やっぱバブリーだな。
「姉さん、遊園地かと思いましたよ」
皇帝の名前は出せない。だが、初めて姉さんと呼んだが、バブリーなババァは、当然のように聞き流している。姉さんという年齢じゃないんだけどな。
「カオル、これは宇宙戦艦の海賊船バージョンだよ」
(意味不明だ……)
「あの大砲は、本物ですか?」
「あぁ、使えるけどね。普通に撃っても、あの塔は壊せないよ」
普通じゃない撃ち方なら、管理塔を破壊できると聞こえる。魔弾を使えば可能だということか。
「使わないでくださいよ? 反撃されたら、店が壊れます」
「使うときには、ガッツリとバリアを張るから安心しな」
(やっぱり、コイツ、やばすぎる)
皆様、いつもありがとうございます♪
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