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139、スパーク国 〜意外な決着

「貴方達は、ちゃんと目は見えてますか? 今、この広い穀物畑を焼いたんですよ?」


 俺は、バブリーなババァを小娘と呼ぶ奴らに、そう言い返した。全身、紫色の女がリーダー格か。


「畑? そんなものは何のために? あぁ、豚のエサか」


 もうひとりの女が、すっとぼけたことを言う。何の特徴もないな。いや、違うか。認識阻害を使っているのか。性別しか記憶できない。


「豚のエサとは、酷いですね。麦からは、ビールだって作れるのに」


「部外者は、口出し無用。それとも、俺達に逆らうつもりか? 坊や」


(は? 坊やだと?)


 襲撃者3人のうちのひとり、この男は、既視感がある。これも、奴らの術なのか?



「部外者は、おまえ達の方だ。ブロンズ星への立ち入りを天界が許可したのか!?」


 アイリス・トーリは強気な姿勢を崩さない。だが、幼女アバターを身につけているから、本来の力は出せないんだよな?


「なぜ、いちいち、ユアンナに許可を求める必要がある? 無能な女神は、ただの飾りだ。そこには何ら法的根拠はない」


(は? 法的根拠?)


 奴らは他の星系の……とんでもなく強い種族なのだろう。天界と3つの星を創るチカラがあるのだからな。ブロンズ星は、忠実な兵を生み出す養豚場だったか。魂の転生システムも、コイツらが作り出した。


 おそらく、どうあがいても勝てる相手ではない。だが、こんな仕組みを作り出したなら、頭は悪くないだろう。


(権限ねぇ……)


 こんな状況なのに、俺は妙に冷静になっている。相手が、強すぎる魔物なら、きっと頭がチリチリしただろう。



「貴方達に、俺の邪魔をする権限があるのですか!?」


「は? 坊やは黙って寝てろ」


 全身紫色の女が、俺に魔力を放った。だが、ダメージはない。俺には何重ものバリアが重ねがけされている。そして、破られた分以上に、またバリアが重ねられた。


(世話焼き幼女が……)


「権限無き者は、立ち去ってください。それが、貴方達が築いた秩序でしょう? まさか、自ら破るのですか。女神さえ下等な者のように扱う貴方達が、ブロンズ星の地にいる者に果した秩序ではないのですか」


「は? 坊やが……」


 反論しようとした男が、こめかみを押さえて黙った。


(へぇ、同じか)


「貴方達は、いま、ブロンズ星にいる。そして、俺が店をやるための買い付けを邪魔した。この一面の穀物畑を燃やすことは、豚以下の行為ではありませんか」


(おっ? やはり権限警察がいるらしい)


 奴らの表情が、ガラリと変わった。不安げに表情を歪めた奴もいる。



 幼女が俺に何か合図をしてきたが、全く意味はわからない。魔王スパークもバブリーなババァも喋らないのは、俺に託しているということか?



「俺達は、シルバー星から逃亡した罪人を追ってきただけだ。部外者は……くっ、おまえは何も知らないのか!!」


(おもしれー)


 知る権限の無い者に、隠された話をしようとすると、コイツらも、ピリッと頭が痛むらしいな。大魔王の雷撃には全くダメージを受けなかったようだが、権限警察のお仕置きは効くのか。


「誰が逃亡したんですか? あぁ、彼女なら、俺が依頼したミッションを受注してくれたんですよ。彼女を連れて行くのは構いませんが、その代わりに貴方達が、備長炭を焼いてくれるんでしょうね?」


「は? び、びん? 何と言った?」


「備長炭ですよ! それから、貴方達が燃やした穀物を弁償してください! 完全な不法行為ですよね?」


 不法行為と言うと、3人ともが反応した。


(やはり、法治国家か)


 俺が口にした言葉に反射的に反論しようとして、またこめかみを押さえている。もしかして、コイツらって、めちゃくちゃ頭痛に弱いんじゃねぇか?


(頭良すぎる弊害か?)



「だが、その小娘は逃亡者で……」


「この人は、俺の人物株を買ってくれた人です。あの森の向こう側の街道に、居酒屋ストリートを作るんで。こうしている間にも、どんどん俺の時間が奪われていく。開店が遅れると、その分、得られたはずの利益を失う。貴方達は、俺に損失を与え続けていますよ? 天界に言って、女神ユアンナ様から抗議してもらおうかな」


「ユアンナなど……クッ」


 チラッと幼女に視線を移すと、めちゃくちゃニヤニヤしている。うん? 何をしているんだ? 



 チリンと鈴の音が聞こえた気がした。すると音もなく、目の前に2人の不思議な女性が現れた。透き通っている!?


(幽霊か?)


「おま……クッ」


 不思議な女性を見た3人は、引きつった表情や、焦りの表情を見せている。



『ゴールド星、情報管理局です。トレイトン星からの侵入者、直ちにブロンズ星から立ち去りなさい。トレイトン法規第1212条違反です』


「いや、ちょっと待て。私達は、シルバー星からの逃亡者を……クッ」


 俺がこの場にいることで、言い訳もできないらしい。


『ブロンズ星大魔王リストーより、救援要請がありました。救援要請以降の音声は、すべて記録しています。トレイトン星系の貴方達が、ブロンズ星で店を始めようとする天界人に、多大な損害を与えていたことは、明白です。チカラ無き下等な者を虐げる行為は、トレイトン星系では最も恥ずべき不法行為です』


(あっ、うなだれやがった)


「だが、あの小娘は、シルバー星を……」


『シルバー星からブロンズ星へは時差の壁があり、直接逃亡できません。天界を経由したということは、彼女にはブロンズ星へ入る権限があるということです。この件に関して、トレイトン星系の者が干渉する権限はありません』


 不思議な幽霊のような女性2人が話し終わっても、奴らは帰る気はなさそうだ。そんなにバブリーなババァを捕まえたいのか?


『トレイトン星からの侵入者、直ちに立ち去りなさ……』


 奴らは、幽霊のような女性2人に、魔力を放った。とんでもないチカラだ。そのエネルギー圧で、俺達は後方へと吹き飛ばされた。


(マジかよ?)


 不思議な女性2人は、平気な顔で、そのエネルギーをかき消している。


『強制排除を実行します。大魔王リストー、損害の請求はゴールド星、情報管理局へお願いします』


 そう言うと幽霊2人は、侵入者3人を簡単に捕まえて、消えていった。


(上には上がいる……)



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