表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/215

100、天界 〜心がチクチク

 俺が返事に困っていると、管理者リーナさんは、ふわりと神々しい笑みを浮かべた。


「アイちゃんってば、貴方の文句ばかり言っているのよ〜」


(は? まぁ、そうだろうな)


 どちらのアイちゃんのことかは不明だが、毒舌幼女……アイリス・トーリには、迷惑ばかりかけている。研修をわざと失敗したことも気づいているだろう。


 アイさんのことは、あまりまだよく知らないが、天界が嫌うマチン族と親しくしている俺は、もしかすると彼女の仕事を邪魔しているのかもしれない。


(ふっ、情けねー)


 文句を言われていると聞き、俺は心がズゥンと重くなっている。どっちのアイちゃんのことかもわからないのにな。



「あら? どうしたのかしら?」


 俺が黙り込んだからか、リーナさんは不思議そうな顔をしている。普段、相手の考えを覗きながら話していると、俺の表情の変化には気づかないらしい。


「いえ、まぁ、迷惑だと思われているのでしょう」


(そうだ、アイさんにも……)


「ふふっ、それが楽しいんじゃない?」


 リーナさんは、そういう状況を見ているのが楽しいのか。くそ女神よりもリーナさんの方が女神っぽいと思っていたが……俺の勘違いだな。


 女神らしさが何か、によって変わってくるだろうが……。まぁ、所詮は天界人だ。過度な期待はしない。


 俺は、もうブロンズ星に領地を得た。あの場所を住みやすく整え、ロロ達の寿命が尽きたら、天界からさっさと追放されてやる!


 そう考えた瞬間、バブリーなババァの顔が頭に浮かんだ。


(くそっ、何か仕込みやがったな)


 だが……そうだった。俺は、手駒にされていたのだった。俺が失敗すると、エルギドロームを使うと言っていたな。


 そうなると、あのバブリーなババァが、第二の魔王トーリになってしまう。そして、永遠に終わらない刻印転生ループ……。やはり、どこかで断ち切るべきだよな。



「俺、失礼しますね」


「あら、アイちゃんを待たないの?」


(は? 迷惑なんだろ)


 ロロ達のことやマチン族のことを頼みたかったが、もういい。ドム達は、そろそろレプリーの村で待ちくたびれている頃だろう。


「天災塔に行けと、フロア長から言われてるんで。アイさんには、約束の件はなかったことにと、お伝えください」


「あら、天災塔が? 面倒ね」


 何が面倒なのかは知らないが、俺はこの場にいる方が面倒だと感じ始めていた。


「失礼します」


 俺は、軽く頭を下げ、管理者の部屋から出て行った。




 ◇◇◇



 天災塔に移動し、入り口で身分チェックをすると、趣味の悪い像がギギギと動き、俺の方を向いた。そして、チカチカと点滅する文字……。


『12階、ラキエルダクト』


(ここに行けということか?)


 天災塔の1階の店は、魔道具がズラリと並んでいた。天災塔という言葉から考えると、防災グッズなのだろうか。


 そんな魔道具を横目に見ながら、俺は奥のエレベーターへと進んだ。



 チン!


「いらっしゃいませ。目的の階へご案内いたします。何階にご用でしょうかぁ?」


 エレベーターが到着すると、エレベーターガールと呼べばいいのか、紺のベレー帽に紺のひらひらワンピースそして白手袋をつけた、若く見える女が声をかけてきた。だが、見た目の雰囲気とは真逆で、俺を見てもビビらない。彼女は、この塔の警護兵か。


「身分チェックをしたら、12階、ラキエルダクトと表示されたんですけど」


「かしこまりました。扉閉まりまぁす」


 扉が閉まると、エレベーターは、ゆっくりと昇っていく。転生塔の100倍遅い。


 途中2度、別の階で止まったが、次の昇降機をお待ちくださぁい、と言って、彼女は誰も乗せなかった。



 チン!


「到着いたしました! 少しお待ちくださぁい」


 彼女は、エレベーターの扉が閉まらないように何かで固定した。そしてエレベーターを降りると、俺を先導するように歩いていく。警護兵だけでなく、案内人もしているのか。



「ラキエルさん、ダクトさん、お客様ですよぉ」


(2人の名前だったのか? あっ)


 彼女の声でこちらに顔を向けたのは、見たことのある男二人だ。話したことはない。ただ、あの森の山火事の緊急要請で会った男達だ。確か、交代させられる除霊塔の管理者の後任を狙っているのだったか。



「よぉっ、変わり者」


(は? 何だと?)


 黒い長髪の男が、俺を挑発するような言葉を発した。だが、俺が無表情でジーッと見ていると、彼は態度を変えた。


「怒るなよ。怖ぇえ〜」


「ダクト、おまえの態度が悪いからだ。アウン・コークンさんですね? 私は、ラキエルと呼ばれています。わざわざお呼びしてすみません。こちらへどうぞ」


 もう一人の男は、穏やかな笑みを浮かべ、常識あるように振る舞っている。だが、長身に魔導ローブを身につけている見た目は、威圧感が半端ない。


 なんだか、まるで魔王のような……あぁ、魔王ラキエルっていう奴も居たな。上位ではない、中堅の魔王だ。天界人魔王としては、下位だろうな。




 案内された小部屋に入ると、そこにはなぜか、ビルクがいた。俺の顔を見て、心配そうにハラハラしている。


(コイツ、俺のオカンか)


 だが他の二人がいるからか、何も話さない。見知らぬ人のフリをしたいのだろうか。



 小部屋の扉が閉まると、結界魔法が作動したようだ。外の音は聞こえるが、おそらく防音結界だろう。



「アウン・コークンさん、この人をご存知ですか? 貴方が消火した森で、以前暴れたことがありましてね」


(ふぅん、なるほどな)


 コイツらは、魔王クースを探っているのか。ビルクの死神の鎌が、魔王クースを餌にしたことで、ビルクは鎌に操られることになった。


 そしてビルクを殺し、天界人に転生させたのは俺だ。


 正確に言えば、幼女アイリス・トーリの力が大きい。彼女が圧倒的なチカラで、鎌をねじ伏せた。幼女アバターを着ていても、大魔王リストーには、あれほどの力がある。


(やべー、心がチクチクしてきた)



「ビルクさんのことなら知っていますよ。それが何か?」


 俺がそう言うと、ビルクは慌てたようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 祝100話!! これからも応援してます!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ