出立
山田カイ 主人公(異世界ではカイン。)
イナホ 天狐。2本の尾を持つ白狐。
アスナ 異世界転移したアスナの元妻。
シュウ アスナを保護した神社の宮司。
ニイナ 最愛のムスメ。
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@shbaalightnove
「異世界来たァーーー!!」
「いきなり何?」
「いやいや、イナホ様。
お分かり頂けないかもしれませんが。
もとの世界では異世界関連のラノベはものすごい数存在してて、それに憧れを持つ作者、読者はものすごい数いるんですよ!
隣の芝生青く見えていいじゃないっ!
現実逃避していいじゃないっ!
なんです」
「ふむ。どうやらオマエがネジ曲がった精神をしていることだけはわかった」
もとの世界から異世界に舞い戻るまでに計3日を要してしまったが、そのおかげでイナホともそれなりに打ち解け合い、今では程よいパートナーになった。…と思ってる。
俺は、3日間の間に元の世界で有用と思われるグッズを大量に買い揃えて、完全無欠な体制でこの異世界へ舞い戻ってきた。
いっぱいになったマウンテンリュックを背負いながら、以前のシュウとアスナがいた神社に帰ってきたのだが……
鳥居の中だが水田があるこの神社は敷地がやたら広い。収穫はこれからのようだがまだ、青々した稲ができている。
そんな田んぼを眺めていると
丁度アスナが声をかけて走り寄ってきた。
「カイッ!いっ、生きててくれたんだ。
戻って来てくれてありがとう。
……でも、どうやって?」
「おう。ここにおわすイナホ様のおチカラを借りて舞い戻ってきたのよ。」
イナホは優雅かつ軽やかに宙返りをする。
「えっ!て、天狐様?!
ちょっ、ちょっとまって、シュウを呼ぶわ。」
慌ててシュウを呼びに行ったアスナを見送りながらイナホを見ると偉く満足げだった。
「ふふふ。ボクの素晴らしさを一目で見抜くとは。あの娘、いい目をしてるねぇ。」
「あ、いや単純にアスナが、初めて見た天狐だったとかじゃないの?」
「ボクは今2本の尾しかないけど、きっと9本まで辿り着くつもりだからね。その未来を見透かしたんだと思うよ。」
「うん?見透かしたんだと思うって、人の考えてる事わかるんじゃないの?」
「そんな年がら年中、大切な能力使ってらんないって。」
そんな他愛もない話をしているとアスナがシュウを連れて帰ってきた。
「カ、カインさん!そ、その天狐様は?」
「え?俺のこれからの無様な異世界ライフを特別観覧席で観覧頂くVIPゲスト。農耕の神の化身イナホ様ですよ。」
「ハハハハハ……すごい言い方ですね。
でも天狐様の御力で転移されたのですか?」
「たぶん。だよな?イナホ?」
「あれ?ボクの扱い、高くしてくれてたんじゃないの?」
「ごめんけど、そんなに長く続きません」
「ま、いいけど。
そうだよ。向こうに飛んだときは、実体化できるようになるまで時間かかっちゃったけどね。2年くらいかかったかな」
2年?!いや、明らかに1日しかたってなかったけど……
俺はどういうことか問いかけようとしたところ、シュウに先を越された。
「そうでしたか。カインさんが突然いなくなられて、私達も辺りを探したんですが、何分こんな森の中ですし。」
「私もすっごく心配した。まさか5年ぶりに以前とほとんど変わらない状態で会えるなんて。」
あ。これ確定だわ。
もとの世界とこっちの世界で時間差がある。
向こうの1日がこっちの2年ってとこか…。
「あれ?アスナって今何歳になったの?」
「私?もう38歳よ。こっちじゃ化粧水や髪染めもそんなに簡単に手に入らないし困ってるのよね。」
「やっぱり。おれはまだ30歳なんだよ。
もとの世界と時間の流れが違うんだよね」
「あ。そ、そうなんだ。どおりで、ちょっと違和感がしてた。前に会ったのも数日前ってことなんだもんね。」
アスナとそんな話をしていると、改めてものすごく大事なことを再確認した。
「あれ?アスナがもとの世界から11歳歳を重ねたってことはニイナは16歳か。行方はまだつかめてないんでしょ?」
「残念ながら。」
皆、落胆の想いが強い。
それだけ時間が立っているなら、急いて足元をすくわれるよりまずは知るべき情報収集だ。
「まず確認したいことがある。この世界に四季はあるのか?」
「シキ?ですか?」
「それは私が応えるわ。
この世界に四季はない。
この辺りは年中このくらいの気候よ。
熱すぎず、寒すぎず。」
「なるほど、なら地図はあるか?」
「それならありますよ。
ちょっと取ってきますね。」
「まずは農業国家イシカだったか?」
「でも、街を渡っていくにはそれなりの身分や保証がいるはずだよ。時間がかかるけど、まずはウゴかオサカまで行ってギルド登録がいいと思うけど。」
そこにシュウが地図をもって帰ってくる。
「ねぇ、シュウ?ウゴにもギルドってあるの?」
「あそこは残念ながら小さい村だから村長様がギルドオーナーも兼任しているはずですよ。
今がこのキョウ遺跡ってとこのすぐ近くなんでウゴならこのまま東ですね。」
「ギルドの管理者=村長ね。わかった。
じゃあ、とにかくその一番近い街に行ってオーナーに会うところからだな。」
ある程度納得したつもりだったが、シュウが、不安そうに口を開いた。
「ただ、森をぬける際に魔物がでることもありますよ。」
「魔物。た、例えばどんなのですか?」
「一番出くわすべきでないのはアウルベア。フクロウの顔した熊ですね。
次にビッグボア。イノシシの魔物です。
あとは小さいものならデスイーター。リスのような魔物もいますね。
野生動物と魔物の違いについては、人が歩いてる時に相手が警戒して逃げてくれるのが野生動物。襲ってくるのが魔物の認識で合うはずです。」
なるほど。一筋縄では行かないか…
まず、色んな準備はしてきたが、
流石に戦闘は不安だ。
まずは極力『逃げ!』だな。
「魔物に出会いにくくするコツはあるか?」
「一般的に馬車に乗るのがいいですが、
今は次の便が明日なので、時間がないなら得策じゃありません。」
「だな。じゃあ街道を走ってまずはウゴまで行くわ。」
「はい。あ。あと、山の中の生水は飲まないほうがいいですよ。」
「大丈夫。
その辺の知識は概ね持ってきてるから!
よし、イナホ。まだ日が高いし今日中に、
ウゴまでいくか。
シュウさんいいですか?」
「はい。ではまたいつでもいらしてくださいね。」
さて、いよいよだな。
異世界の冒険の始まりだ……
ニイナに早く会いたいな。
農業国家イシカにつく前に奴隷ではない、
別のカタチで会えるといいんだが。
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@shbaalightnove