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現実


現実


眩しい日差しが窓から降り注ぎ、俺は目を覚ました…


「ここは…」


自分の家ではない。

寝ていたベッドと同じような真っ白なベッドが2つ…

ぼぅっとしながら辺りを確認していると部屋の外から明るい声で呼びかけられた。


「山田さん。起きましたか?」


「…病院…か。」


辺りを見回しながらこの白衣の天使で合点がいった。


「そうですよ。

山田さん…今は9月25日のAM11時です。

なぜここにいるかわかりますか??」


「あ…いえ、な…なんでここにいるんですかね?」


「昨日神社で倒れている人がいる!

って連絡があったんですよ。

倒れる前の記憶ってありますか?」


「あ…あぁ…そういう…ことですか…」


あれ?夢だったか?

なぜだろう?夢だったような気は全くしないんだが…

でも確かめる方法なんてある…のか?


何か…何か方法は……「んっ?!」


その時、おれの目が捉えたのは病院用ベッドの机に置かれた見たこともない首飾り…

しかも、飾りは大きな黒い石がついている…


「あ、あの…これって…?」


「え?山田さんが身に着けてた首飾りですが…」


??!!


俺、そんなのつけてないけど…


じっくりと首飾りの先端、黒い石を観察すると、真ん中に白い模様がある。

よく見るとキツネの顔にも見える…


えっ?そういうこと??

異世界転移のお土産がキツネの模様の首飾り…


ってかそもそもこれがあるってことは…

昨日のことは、現実だった…のか?


「…山田さん!…聞いてますか?」


「えっ?あ…いや…」


「もぅ!身体は異常がないので、問題なく立てるんなら退院できますよ!」


「え?!も、もうですか?

そ…そうなんですか?わかりました…」


「えっ?なに?残念そうですね。

あっ!もしかして…

私ともう少し関係を作りたいとか?

へへへ。山田さん結構イケメンだし、

うーん、それならまずは飲み会から…」


「あっ、いえ、そういう意味じゃないんです。既婚者ですし…」


「チッ。そ~ですかー。」


「あ、でも色々お世話になりました。」


「はいはい。会計は正面入口のとこですよー。」


俺は荷物をまとめて一礼し、その場を去ることにした。


…でも今の俺は、既婚者とホントに言ってもいいもんだろうか…

あの記憶が現実なら…

駆け落ちされた旦那と同じ状況。

なんか…辛いなぁ…


どうしたものかと考えながら

とりあえず病院を出て帰路につく。

家に帰る道は、ちょうど昨日の稲荷神社の前を通る道だった…


もう一回寄ってくか…

不思議な体験のお礼参りだ…


でも、あれが現実ならニイナが大変な状況だしなぁ…

ただの夢のほうがありがたいかもなぁ…


そんなことを考えながら歩いていくと、

神社へと到着した。

一ノ鳥居をくぐって、手水屋で作法をすましてニノ鳥居をくぐる。


昨日、異変があった場所を見て感慨にふけながら本殿の前にむかっていると…


えっ!?!?


カタカタカタッと、

急に胸の首飾りが動き出した!?


うん??

思わず首飾りの黒い石を見たところ、

半透明の白い狐が飛び出してきたっ!


「へ?…マジで?」


「なんか昨日と言葉が使いが変わってませんかぁー。ボクのあつかいが下がった気がしますよー。」


「いや…え…いや…そ、それならそっちこそ…」


「ふん、これがホントのボクなんですぅー。

でも驚いたなぁ…昨日あんなことがあったのにお礼参りもきっちりこなすなんて。

実はあんまりショックじゃなかったのー?」


「いやいや、そんなことない…

流石に応えたし…でも、こうやってまたキツネが出てきたってことはそもそもあれは現実だったってこと?」


「そ。正解。

キツネじゃなくてイナホ様って呼んでほしいけどねぇ。

ちょっとイタズラしたくてやってみたんだぁー。人間の大人が落ち込むところ、みっともなくて結構好きなんだぁー」


「お、おまえホントに神か??

性格悪いなぁ…」


「君に、ボクらの娯楽が理解できないだけだよ。ハハハハ。」


「ふ、そうですか…

でも、そうだとするとやっぱりニイナが問題だ…奴隷にされてるかもしれないとか…ちなみにまたあっちに行けたりするのか?」


「え?自分の意志であっち側に行くの?

それ、後悔するよぉー。」


「は?いや、最愛のムスメに会えないほうが一生後悔だって…。」


俺は自信満々で言い切った。

ニイナはホントに大切なんだ。

ただの子煩悩なだけかもしれないが、あの子のためならホントに何でもしてやる。

後悔と引き換えでも躊躇はない。


それが父親って存在なはず…

俺は自分の信念を再確認しながら、

改めてイナホを見た。


「それで…できるのか?」


「ま、まぁーできるけど、自分の意志で行きたがるとペナルティ食らうけどいいの?」


「ペナルティ?」


「そう。そもそもこっちに生まれた存在が、自らの意志で別の世界を望むのはあまり良しとされないんだ。人間の宗教とかでも自殺はダメって言うんでしょ?」


「あー、そういうことね。

まぁーわかるけどペナルティは合ってでも生きてはいるんだよね?」


「まぁね…」


「じゃあいこう!

今すぐニイナを探しに行きたい!」


「うーん…でも力が戻るまでもう少し待ってもらえる?」


「な、なに?それって…どれくらい?」


「たぶん…2日くらいあれば戻るんじゃない?でも、わざわざお兄さんをあっちに連れてくメリットがボクにはないよ…」


「ふ。イナホだったか?」


「イナホ様だよ。」


「お前のメリットならあるよ。


人間のみっともない姿がおもしろいなら、

俺は全く知らない世界に行くことで色んな壁にぶち当たりまくる。最高に無様にな。


それを見て散々あざ笑ってくれたらいいよ。だから、むしろこっちからお願いだ…


もちろんその程度で足りないようなら

どんどんお前の望むものを叶えるために行動しよう

イナホ様。」


「む…と取ってつけたような『イナホ様』発言はイラッとくるけど…

まぁ一理あるからのったげるよ。」


全てはムスメのために…


ムスメに会える。ムスメに尽くせる。

ムスメのために命をかけることができるなら、キツネに従属するくらいいくらでもやってやる。


『豊穣の神イナホの侍者(アコライト)山田カイ。』

なかなかカッコいいじゃん。


−−−−−−−−−−


イナホもそれなりに納得した様子になり


今は家に向かうことにした…


こうなったらもう会社は行かなくていい。


まずは退職の手続きっと、

家族のことで田舎に帰らざるえなくなり今と同じような勤務ができなくなるって理由ならいいかな。


さてっと。

この内容で連絡は入れつつ、時間があるなら異世界で少しでも役に立つであろう知識の習得だな!


昨日のシュウとの話ではネットやテレビなどの情報媒体もなくったから、こっちの世界のネットを駆使して、出来る限り多くの情報をあつめないとな…。


待ってろニイナ…

パパが絶対助けてあげるから…!









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