再会2
離れ離れになった妻と娘に何があったのだろうか…
それに会わなかった時間はたった3日にも関わらず、もう6年もの時間が過ぎたなんて…。
時間の流れが違うってことなんだろうな。
とりあえず、ニイナの状況について聞かないと…。
「ニイナは今、11歳になってる。
行方がわからなくなったのは10歳になってから…
おそらく"人買い"じゃないかって言われてるの。」
「えっと?誘拐ってこと?」
「そんな感じ。
私はこっちに来てからニイナもまだ5歳でどうしようもなかった。
たまたま、この神社にたどり着いてお手伝いをしながら衣食住をまかなってたの。」
少し呆れ気味に話を聞いてたがシュウが雰囲気を変えるためか、急に発言しだした。
「ここは森の中にあるので、人手がたりないんですよ。」
シュウの言うとおり、ここは完全に森の奥だ…動物や害獣とかも出てきそうだし、何よりこの神社は一ノ鳥居の中に田んぼや畑がある…
変わってるよなぁー、と思うが今は深く聞く話題でもないので、一旦スルーしておこう。
「ニイナがどの辺にいるかアテはあるの?」
「たぶん、農業国家イシカ…。あそこは慢性的に肉体労働者を求めるの。この世界の食を支える基盤なの。もちろん、市民権とかはあるはずよ。」
「へぇー…なんか社会主義の国みたいだね。」
「そうね…この世界全体がその傾向が強いみたい。それぞれの地域での役割があるみたいね。」
「シュウさん、そのあたりは気候や土地の問題なんですか?」
「どうでしょう?そういったことは…」
あれ?情報が少ないのかな?
そもそもテレビや新聞、ネットみたいなのもないみたい?
その辺りのインフラが整ってないんだろうなぁ…
見た目通りシュウさんはあんまり頼りにならなそう…
「で、ニイナのだいたいの居場所はつかめてるけど行動できてない理由は?」
「行って、出会えたとしても買い戻せないから…」
「ふーん…なるほど…迎えを待ってるような気もするけどなぁ…」
「あの子も馬鹿じゃないし、6年も色々見てきてるはずだからそれなりにわかってると思うよ。」
「そっか…じゃあもう一つ別の質問ね…。
そのお腹…どうしたん?」
妻に突っ込んだ質問を投げかけた、
それをみてシュウが慌てて応える…
「す…すいません。
あ…貴方の存在は伺っていました。
ただ、まさかこんな…再会される日が来るなんて…全く予想していませんでした…」
「ふ…アナタの子供なんですね…。
あーもぉいいですよ。妻を…アスナをよろしくお願いしますね。
私は、娘を探しに行きます。」
「あっ、でも…こちらの世界の事ご案内させてください!私にはその義理が…」
「いや、結構ですっ!
…娘がこんな状況なのに、子づくりとかしてるアスナにも幻滅しましたし、自分でなんとかします。
俺は…あの娘の父親なのでっ!」
一刻も早くこの場を離れたかった…
何もかもに怒りを感じてしまう…
シュウやアスナもその後の言葉が出ない様子だった
−−−−−−−−−−
俺は社務所を後にして、
鳥居の外に出ようとした…
その途端。
あれ…
世界が…
真っ白…
こ、今度はどうした…
「ふふふ。そうきましたか…
一人で未知の世界の探索だなんて、
大胆ですね…」
「だ…誰だ?!」
いつもなら間違いなく敬語で聞く状況だが、今は流石に気が立っている。
自分でも言葉が荒い気がした。
「お気持ちはわかりますよ。
さぞ落胆して、絶望の中にあるんでしょう…」
そう言いながら声の主は少しずつ姿を見せだした。
真っ白な毛並みをし、少し体格の大きめな
尻尾が2 本生えた狐だ。
「私はイナホ。
あなた達人間が祀り上げる神ですよ。」
「かっ神様!?お…お稲荷さん!?
あっ…えっと…
ど…どうかニイナに会わせてください。」
「はっ。イキナリお願い事ですか…
やはり人間は自分の都合ばかりですね…
全く卑しい種族です。」
「んんっ。な…何も言えません…」
「ま、今回はこちらがこうなるシナリオが分かっていたからココに連れてきたんですけど…ふふふ。」
「えっ!?な…なんで??」
「ホントに…ふぅ。…おめでたい頭ですね。
自分が会いたいと願ったんでしょう。
それを叶えてあげたんですよ。
あなた達人間はそれで都合よく事が進むイメージしかしていなかったんでしょう。」
…い、言い返せない。
完全に正論を叩きつけられ、俺はくちびるを噛みしめ、苦言に耐えた。
ただ、こっちも現世でそれなりの対価をお金で払っている。
そもそも、金がいらなかったか?
「ふふ。金は要りますよ。」
「えっ?!…今、声に出してない…」
「だから、神だと言っているでしょう。」
ほ…本当に神なんだろうか…
と、そこにいきなり大きな笑い声が耳に飛び込んできた。
「あっははははっ!!
おっかしーっ!ホント人間ってチョロいよね!バッカみたい。」
「うん?…えっどうなってる?」
「ふ、狐に化かされてネタバラししてあげたのにまだ神扱いだなんて…これなら騙し通したらよかったー」
な…キャ…キャラが、違いすぎる。
化かされてたのか?
そもそも化かされる経験なんてしたことないしよくわからん…。
「だよねー?
今のお兄さんの世界は化かすとかできないんだよね?」
「あ…あれ?や…やっぱり声に出さずともバレてる?」
「ふ…神ではなくとも、もう尻尾も2本目が生えたボクなら、心を読むくらいカンタンなんだよ!」
あ…
も…もうこれ、ダメなやつだ…
思考が追いつかない…
さっきの出来事と、このいきさつ…
なんか…考えるの諦めよう。
身体が…フラフラする…
頭が…思考を拒否して…突然の睡魔に…
こうしてわけもわからず、俺の異世界転移の1日目は終わった…。