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再会1


突然の出来事過ぎて目を疑った。

なぜならそれは…

見たこともない景色の場所にいるから。


なぜならそれは…

妻のアスナが緋色の袴と白衣で彩る鮮やかな巫女服を着ているから。


なぜならそれは…

妻の風貌が変わりすぎているから…


白髪が増えて…

シワのような線が見えて…

そしてなぜか…

妊娠しているようにお腹が膨らんでいる


意味がわからなすぎて何から話せばいいのか分からない。色々問いただしたいが、肝心の妻は嗚咽を漏らしながら泣き止まない…

ただ、聞かないことには頭の整理がつかない。


妻が泣き止んで、呼吸が落ち着いたのを確認し、俺は意を決して言葉を紡いだ。


「え…えっと…何があったの?」


「あ、あれから、色々あったよ…

ホント…話しきれないくらい…」


「え?…いや…でも…

自分でもわかってるでしょ…

こっちは聞かなきゃいけないことが多すぎる…」


「わかるよ。私も言わなきゃいけないことが多すぎる。

…こ…ここは…世界が違うの…。

私達の…世界じゃないの…。」


「え…えっと…もともとの世界も俺らの世界っていう単語は発したことないけど。それは…どういう意味?」


「そのまま…別世界…世の中の理が違うの…」


「え?…あ…いや…んと…なんで?なんでそんな風に思った?」


「私…パパに会いたくて6年…色々あったの。」


「は?!えっ? い…今なんて?!」


「6年。会いたかった。」


「ん…い、いや…ど、どういうこと?!」


「よくわからない…でも、6年間こっちで必死に頑張ってた。右も左もわからないまま…ホントに頑張ってた。」


「え…あ……うん。」


妻はまた泣き出していた…

思いがけない返答に自分も黙ってしまった…


どんなに辛い毎日だったんだろう…

どんなに辛い経験だったんだろう…

右も左もわからない環境に追いやられ…

どうやって今まで生きてこれたんだろう…


あっ!?


そこで俺は大事なことに気づいてしまった。


「ニ…ニイナは?ニイナはどうしてるの?」


何よりも大切な娘のニイナのことだった。


「ニ…ニイナはわからない…」


「は?」


「去年から行方がわからないの…」


「えっ?いや、そんな、け…警察には?」


「こっちに警察はないっ!

でもこっちのそういう団体には声かけたっ!けど見つからないのっ!!」


「はっ?いやってかなんで!?

ってか、なんでそんな落ち着いてんの!?意味わからん!大問題やん!!」


「大問題って!今の今まで会うこともできなかったパパにそんなこと言われたくないっ!!

私がどれだけ大変だったか!私がどれだけ…」


「もう!いいっ!!黙れっ!

話にならんっ!俺が探しに行くっ!!」


「ちょっちょっとまって!こっちの世界のことなにも知らないくせにそんな勝手なことしないでっ!」


…そんな言い合いをしてると、一人の男性が近くにいることに気がついた。

宮司さんのような格好をした、どちらかというと冴えない雰囲気の男性は罰が悪そうに俺と目があってそこから話しだした。


「あ…あの…お取り込み中に申し訳ないんですが、少し落ち着いて社務所でお話するのはどうですか?ニイナちゃんがいなくなったのも昨日今日の話じゃないですし…」


「シュウっ!?」


妻にシュウと呼ばれた男性が何を考えているのかわからない。

ただ、何かを意図して話を切り出しているのは感じた。 

実際1年間所在不明の状況で、土地勘のない自分が情報もなく探しに行くのは無謀すぎる。

今はこの男性のいうように落ち着いて情報を集めるほうが先かもしれない。


俺は一度社務所に入って話を聞くことにした。


−−−−−−−−−−

「どうぞ…お口に合うかわかりませんが、粗茶です。」


無言の気まずい空間…

今は板張りの床に小さいちゃぶ台を囲んで右にはアスナ、左にシュウが座っている。


粗茶と言われて出されたお茶は、茶色く透き通ったお茶だった。

味はどくだみ茶のようだ。この辺に自生するんだろう。


あかりは日の光を利用しており比較的窓が大きいがガラスはない。

虫除けに蚊帳のような網戸のようなものが窓にははめてある。


幸い気温は熱くもなく寒くもないが、パーカーの袖はめくって丁度いい程度。


さて、いったい何がどうなっているのかゆっくり話を聞いていこうか…


「で…ニイナはいつどこで?」


「あっ。その前に…

まず自己紹介させてください。

私はこの豊穣を司る天狐様の神社の宮司をしております。シュウと申します。」


「落ち着いてますね…」


「実は、我々の世界ではまれに外から来る方がおられます。そういった方は、神々の気まぐれのようなカタチでこちらに呼びよせられますが、この社内であれば安全が確保されているんです。」


「ほぅ…まるで異世界転移のチュートリアルみたいに…

よくそんな気の利いた解説が咄嗟にでてきますね。」


「ふふ。ご推察の通り。こうなることは予期されてました。誰が来るかはわかりませんでしたが、元来我々のような職務に携わるものには、職務につく前にある種のいい伝えを伺います。」


「一子相伝みたいなもんですか?」


「そこまでの重要事項ではありませんよ。実際、他の(ヤシロ)では複数の者が知る事実です。

話を続けますね。

そのいい伝えとは、この神の社の中では、別の異世界の方が迷いこまれることがあります。

おそらく、各々の社で祀る神様の意向が働くようですが…」


「なるほど。納得ですね。

あなたが祀っておられる神様は天狐と言われましたよね?

私がつい先程までいた場所…

元の世界の神社は稲荷神社。

キツネの神様がおられるところですよ。」


「と、いうとアスナさんの元の世界にも同じ神様がおいでなんですね。そちらでも同じようなことはありますか?」


「いいえ、さすがに聞いたことないですね。」


突然アスナに話を振られるも、アスナもこのオトコとのやり取りになれているのか自然な感じで返答する。


「そうでしたか…。

我々は崇拝する存在の偉大なる力を感じることができるので、こういう迷い人が来たことは、我々にとっては嬉しいことなんです。」


「嬉しいこと?人の不幸をそんなふうに言うんですか?こっちとしては、常識の通じない世界にいきなり連れてこられたんですよ。」


表情からはあまり他意があるようには思えないが、無神経な物言いに少しイラッとする。


「ただ、おそらくそのことをご自身でも強く願われたのでは?」


「あ…あぁ。ニイナとアスナに会わせてほしいと願ったかな。

それか…お稲荷さんすげぇーな。」


「我が神の御力に触れて頂けて、新たな気づきが生まれたのであれば、嬉しい限りです。」


シュウは満足そうな顔で胸を張った。


「ふっ。そうですか。

そういえばまだ名乗ってませんでしたね。

自分は山田カイといいます。」


「カインさんですね」


「ん?山田カイですよ。」


「え?カインさんですよね?」


あれ?なんだこれ?発音の問題か?

というか、さっきから言葉の違和感が全くなかったことにむしろ意外な印象があるなぁ…


理由はわからないけど、

この問題は棚上げ案件かな。


とりあえずニイナのこと聞かないと…


「で、最初に話を戻すけどニイナは…?」


「それは、私から話すね。」


それまで黙っていたアスナが強張った表情で口をひらく。






前置きの話が長くなりすぎてすいません。

続けて投稿しますね。

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