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手掛かり 1


カイン 主人公30歳 元サラリーマン

異世界転移済み。頭に輪っか付、キズモノ

イナホ 天狐 日課:太陽礼拝

ギース ベテランハンター 銛 銅ランク

デバック りんご農家 田舎モノ

メイリン ギルド受付兼酒場のウェイトレス

タムル ウゴの村村長兼ギルドオーナー


いてぇー。太腿の痛みで脚が思うように動かねぇ。たかがリスに噛まれただけなのにぃ。


俺って弱い?


俺は今自分の槍である月牙泉を杖代わりにしながら歩いてる。ただ、この月牙鏟も割と重い。明日、筋肉痛かもな。


俺って弱い?


はぁ……。


「おい、カインよぉー。脚噛まれたぐれぇでそんな大層に脚引きずんなよぉ。」


「えっ!いや、でも、痛いですもん。

僕の世界痛み耐性ないんすよ。

オヤジにもぶたれたことないのに。ですよ。」


「ハイハイ。おっ!イイトコにイチヤクソウあったぞ。これすり潰して着けといてやるよ。」


俺は全力でガッツポーズし、ギースに治療をお願いした!きっとこの痛みから開放される!


が、


やるんじゃなかった……ロープレのゲームなんかじゃ薬草ですぐ回復するけど、まぁー回復するわけないわな。


傷口に当てるたびにオウッ、ハフッて変な声が出る。イナホは無表情で冷たい視線送ってくるし。


神様、こんな哀れな俺にご慈悲を……!


……何も起こらなかった。


……いや、イナホに冷たい視線をもらった。


怪我をするとホント動きが悪くなるなぁ。武器の取り扱い練習しないとすぐ死にそうだ。

頑張ろ、俺。


「はぁ……ニイナを助けに行くのはまだ少しかかりそうだ。」


「うん?あぁ。オメェの娘か。"人買い"にやられたんだっけか?」


「そうなんですよ。その……あっ!」


「うん?どうしたよ?」


「流れるように今日依頼を受けてて忘れてました!自衛団の詰め所に"人買い"の情報聞きにいかないとダメです。」


「うん?どうしたよ急に?」


「いえ、この村に来たときに最初に村長のタムルさんに会ったんですけど、その時に自衛団に情報聞きにいけって言われてたんです」


「あぁ?そうなのか。ならまだ今日は時間が早いし村に戻っても勤務帯だと思うから行ってみるといい」


「ギースさん。

水臭いじゃないですか。ここまで運命共同体になったんですよ。一緒に行きましょうよ」


「なんで、俺がおめえのお守役みたいになってんだよ」


「ほら、ボディーガードも依頼しましたでしょ?か弱い僕が自衛団で暴行を受けないためにもお願いしますよ」


無茶苦茶なお願いをしてみたがやっぱりギースさんはいい人だったみたいで引き受けてくれた。


さて、俺達は今回の依頼主デバックさんのところまで帰ってきた。

ギースさんは俺が痛みに悶絶してる間に倒したデスイーター集めて革製の袋にいれてくれていた。


倒した魔物の数の証明に使うそうだが今回みたいな小さい魔物は回収した数でカウントされるらしい。


「そうか。6匹もおったか。いやぁー助かった。当面は大丈夫じゃろうが、またなんかあったら頼むわ。」


どうやらさっき戦った場所に血が飛び散っていたが、同族の魔物の血の跡があるところは避けるようで当面の安全は確保されたそうだ。

まぁ、俺も人の死体が転がってるとこ嫌だし近づきたくないもんなぁ。

そんなもんか。


−−−−−−−−−−


こうして俺達は依頼を完了し村のギルドに戻ってきた。


「メイリンちゃん、ただいま。」

「あらっギース。相変わらず手際がいいわね。もう終わったのね。おかえりなさい。じゃあ報告ね。」

「あぁ、依頼主のデバックさんのサインももらってある。デスイーター6匹だ。」

「わかったわ。じゃあ銅貨30枚ね」


このペースだと月に収入だけみると銀貨9枚ペース。金の指輪の価値はやっぱり相当高かったらしい。


「ギースさん。一個聞いていいですか?」


「なんだ?」


「今日の稼ぎはどんなもんですか?標準ですか?」


「ふ、デリカシーって知らねぇのか?まぁ、良い方だよ。デスイーターの素材も金に換金してくれるしな。宝石商みたいなおめぇにはわからんだろうが、こっちの生活はこんなもんだ。」


「あら、ギース?あなたもうそろそろ昇級試験受けれるでしょ?今はブロンズだけど昇給したらもう少し稼ぎも良くなるわよ。」


「まぁ、そうだな。のらりくらりやってっから時間かかったけど、それも考えとくよ。」


「ハンターの昇級試験ですか?クラスはブロンズ、シルバー、ゴールドってとこですか?」


「カインくん流石ね。いい勘してる。けど、ギルドランクにはあとその上のプラチナがあるわ。」


「プラチナは一騎当千だからな。そんなの夢のまた夢だわ。」


「ギースさんの気功術使ってもまだまだ遠いんです?」


「お?!おめぇ……それここで言うなよ。」


「ふふふ。聞いちゃった。そうなんだ。ギースって気功術も使えるようになったのね。益々シルバーに上がってもらわないと。申請書書いとくからね。」


「あ、あれ?余計なこと言っちゃった系ですかね?で、でもなんでダメなんです?」


「これね。妬いちゃう話なんだけど、ギースったら一生を誓ったシルビアって眠り姫がいるのよ。そのシルビアの治療のためにこの村にずっといるんだけど、治療費のために俺はずっと五体満足じゃないとダメだってね。だから危険な依頼が増えるシルバーに上がりたがらないのよ。」


「いいだろぉ。俺の勝手だ。」


「そうもいかないのよ。今は上位ランクのハンターが数人だからこの村に危険が来たら他の街から応援も呼ぶ必要があって。その場合はウゴの村からの依頼だからハンターの旅費とかも村の支払いになるの。財政的に良くないってタムルさんも誰か上位に上げろってうるさいのよ。

気功術なんか使えたらランクゴールドも狙えるわよ。」


へぇー。村長がギルドのオーナーしてるとそんなことまで考えてんのか。

まぁ、村長ともなれば考えることも複雑だわなぁ。


「はい。銅貨30枚とデスイーターの素材の分で銅貨12枚。計銅貨42枚ね。」

「あぁ、ありがとう。」


色々考え事してたらギルドの手続きは終わったみたいだ。


「ギースさん。さっき言ってた自衛団の詰め所行きましょうよ。」


「そうだな。ちょっと行ってくるか。」


「あら?帰ってくるなりお出かけ?忙しいわね。

行ってらっしゃーい」


−−−−−−−−−−


メイリンを後目に俺達は村長の屋敷の向こう側にある自衛団詰め所へ来た。


あれ?なんか視線が痛い?なんで?


とりあえず受付まできて担当の厳ついおじさんに聞いてみた。


「すいません、カインと言いますが、タムル村長に言われて、お尋ねしたいことがあって来ました。」


「なんだ?転移モン?」


「よりにもよって今日の受付は、ガイか。」


あれ?扱い雑だな……。

なんかギースもすごい呆れてるけど、

もしかしてこのガイって人、問題児かなんかか?


「あ、あの……たぶんキョウ遺跡にいるシュウかアスナって人から6年前くらいに捜索依頼が出てると思うんですが。」


「あぁ、その話か。それなら依頼は受けてる。

だが、なんでおまえにそんなこと話さないといけない?」


「え?あ、え?」


「カイン、代われ。ガイよぉ。

さっきから聞いてたらエラい対応だな。確かに転移モンは災いを呼ぶっていうけど、村長からも承諾出てるんだ。」


「ギースか。よそモンがデカい口たたくなぁ。シルビアさんを不幸にしたお前がまた不幸のタネを持ってくるなんてな。性が出るこった。」


「はぁ?……話にならねぇ。もういいわ!要件だけ片付けさせてもらう。さっきこの転移モンが言ってた人探しの依頼はコイツの娘だ。」


「ふ。そんなわけあるか。アスナって依頼人が私の子どもって言ってたぞ。何回も聞きに来るからこっちも覚えてるわ。しかも、アスナって女は転移の輪っかなんぞ着いてないわ。」


「な?え?なんでだ?」


ギースからキラーパスをもらうが俺が知るわけがない。俺は無言で首を横に振る。


「ふ。やはり教えられんな」


「ま、待て。たぶん情報では"人買い"の情報だ!タムルさんも了解の上なんだ、とにかく情報をだせっ。」


「けっ。情報なんてねぇよ。色んなやつが"人買い"の情報は欲しがってんだ。金払って教える情報ならあってもただでおめぇらにやる情報なんてねぇーよ。」


「ちっ。カイン!もぉ行くぞ。コイツはダメだ。」


「え?あ、はい。」


俺達は詰め所を後にし、酒場に戻ることにした。


なんだアイツ?あのガイとか言うやつ腹立つーーー。あいつ絶対トモダチ少ないやつだわぁ。


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