能力開花の方法
カイン 主人公
イナホ 天狐
ギース ベテランギルドハンター元漁師
「いやぁーまさかこっちの世界に、カニカマがあるとは思わなかった。
正直テンション上がったわぁ」
今はいい感じに酔っ払い、ギースさんと別れて自室に戻ってきたところだ。
今日の飯代は支払う金がないからとりあえずギースさんに立替てもらうことになった。
ギースさんマジいい人。尊い!
「ってかさぁー、イナホがお酒飲めるのが意外だったわ。そもそも飲食できるんだね。」
「ボクは高次の霊的存在だけど、この世界じゃ実体化してるからね。もちろん飲食しなくともプラーナを取り込んでるからいらないけど、酒は別かな。米から作ってる酒は氣の充填とかにいいんだよ。」
「プラーナ?また難しい単語。それに、氣……でございますか?」
「そう。オーラとかって言う人もいるけどね。」
「はぁー、あの色とかついてるやつですね?」
「そうだね。そういう使い方もあるね。相手がどんなタイプかをそれで判断するみたいなの。カインはギースのことそれ見て信用したんじゃないの?」
「えっ?あ、いや。……勘です。」
「うん。勘でいいんだよ。勘は見えないものを感じ取ってるんでしょ?それって無意識に氣を読み取れてるんだとボクは思うよ。」
「??そ、そうでしたか。とりあえず俺はギースさんはいい人だと思ったけどイナホはどう思った?ずっと黙って見てたよね?」
「うん、ちょっと深くまで読み取ってたんだ。彼の因果みたいなの?」
「え?そんなの読めんの?」
「ううんーまだ練習中。思考を読む時は相手の経験やクセなんかが分かれば読めるからね。それを氣から読もうとしてたんだ。」
「イナホ様、いつも思いますが神様ですねぇー。また今度お酒捧げますね。今後とも宜しくお願いします。」
「うむ。苦しゅうない。」
どうやらイナホもギースのことを悪くは思ってないようだ。
よかった。これで明日からギースに色々教わろう。
まず、こっちの常識と一人でもなんとかしていける地盤ができないといけないからな。急いてはコトを仕損じる。だ。
その日はそのまま床につくことにした。
湯浴みの仕方がわからないので明日その辺りもしっかり聞こう。
−−−−−−−−−−
東の方からだんだんと空の色がかわり、気温が少しずつ暖かくなってきた。俺はカーテンから漏れ出てくる朝日で目が覚めた。
今日泊まった宿は東向きの窓がついてるがもとの世界の遮光カーテンの優秀さが恋しい。
アルコールとって寝不足なのに朝焼けが眩しすぎる……。
ただ、漏れ出る光の線の上にイナホが凛として座っており、じっと太陽を眺めていた。
朝からなんと神々しい。俺の神様、おはよ。
「イナホォー。寝れないの?」
「朝は太陽に…朝日に感謝するのがボクの日課だからねぇ。別に眠れないわけじゃないよ。」
さ、左様ですか。
文化が違いすぎる。というかやっぱり次元が違う生き物?…存在なんだろうなぁ。
「さて、せっかく早起きしたしちょっと外散歩でもしてみっか。」
「うん。イイよ。もっと気持ちのいい開けた場所で太陽眺めたいし。」
俺は朝にめっぽう強い。
目が冷めて3秒でハイテンションになれるタイプだから、
朝の支度をサッサと済ませて外に出る準備をした。
あ、歯磨き粉がねぇ。
ただ幸い気温は温暖なので、服には困らない。心地良い朝の散歩をしようかと思ったが太陽はまだ30度も上がってない気もするのに、結構な人が村を歩いている。
畑仕事の野菜を運んでいる人、共用の井戸で水を組んで家に持ち帰る人。煮炊きしていい匂いが漂わせている民家。
そういえばこっちに来てから電気を見ていない。文化レベルはその電気もない水準なんだろうか。パラレルワールドにしてはやけに落差があるから変な気がするが、そもそもパラレルワールドに行ってきた!みたいな話は胡散臭すぎてあまり聞く耳を持ってなかった。
こんなもんなんだろうか。
ただ、太陽とともに起きて行動にうつる生活というのも気持ちがいい。
人は本来これくらいの文化レベルのほうがあってるのかもしれない。
生活習慣の違いを深く感じながらイナホの希望もあって、村の東側に向かっている。
たぶんそこなら太陽を存分に眺めながら祈りを捧げるのだそうだ。
次第に高い建物がなくなり、遠くまで見渡せる場所にでる。
え?なんだ?
10人くらいの人が想い想いに光り輝く太陽を拝んでる。キラキラ眩しい朝日の輝きに黒く伸びた人の影が幻想的な光景を生んでいる。
異世界な感じをひしひしと感じていると、
ちょうどそこに、礼拝?を終えた男性がこっちにやってきた。
「よぉ!朝早いんだなぁ!」
逆光で顔が見えなかったが、どうやらギースみたいだ。
「えっと、ここで何されてるんですか?」
「見りゃ分かんだろ。礼拝だ。」
「あ、そうなんですね。俺はこんな幻想的な光景見たことなくて。」
「へぇーカインのとこの世界ではやらないんだなぁ。それじゃ生活も不便だろぉ?」
「へ?……えっと、それはどういう?」
「うん?朝日見てると能力開花が促進されるだろ?そうしないと人間の身体の仕組みもほとんど有効活用できねぇだろ。」
元の世界で、人の脳は30%くらいしか使っていないというのは聞いたことがある。
単純にそれは、パソコンとかと同じようにオーバースペックでないと容量不足で急なシャットダウンをおこすのと同じと思っていた。
だが、ギースの言うこっちの世界の常識では全く違って本来使えるスペックの部分。ということか?
イナホが、太陽を見て礼拝をしている間、
俺はギースと座り込んで話をすることにした。
「あ、あのギースさん?今、能力開花って言いましたけど、それってどういう?」
「あ?頭ん中で遠方の誰かと意思疎通するとか未来余地するとか念力とかだろ?俺も詳しくは知らないがなぁ。」
サイキックか?サイキックは生まれ持った才能じゃなくて誰でもできるってことか?
「ギ、ギースさんは何かできるんですか?」
『俺はこれが得意だな。』
「えっ!?今頭ん中に直接声が……」
「ふ、そうだ。もともと俺は漁師でな。海の中に潜って銛で魚を採ることもあるんだ。水中で仲間と意思疎通するには必須の能力なんだ。それに、距離が飛ばせるようになると複数の船で魚群を追いかけることもできる。」
無線の代わりに人の脳を使うのか!?
そんなことができたらこれ以上エコなチカラはないなぁ。
「先程得意ってお話でしたが、複数できたりもするんですか?」
「あぁ、そうだな。色んな種類あったはずだが、ギルドに能力活用事例の本もある。この後、ギルドで例の指輪の換金するんだろ?一回見てみようぜ。」
「そ、そうですね。宜しくお願いします。」
その後、俺達はその足で村営酒場兼ギルドへ向かっていた。
サイキック開花のパターンに関して次話で案内予定です。