表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/71

ギース2

ギース シガー漁港産まれ36歳ハンター

シルビア ギースの恋人、ウゴの村出身

     カニカマ工場勤務10年。


あの事件から6年。


シルビアは今も意識が戻らない重態で、

ウゴの村の実家のベッドの上だ。

弓矢の傷よりも矢じりについていた毒が悪さをしているようだった。


シルビアは心臓に近い肩を射抜かれた衝撃のせいで短時間の心停止になった。ただ心臓が止まったおかげで、毒のめぐりが悪くなり、九死に一生を得ている。ただ、それでも彼女を植物状態にいたらしめる毒だった。


今は毎月、高位治療術師に依頼して命を繋いでいる。高位治療術師の遠征治療は高額で毎回、聖教国ロウから来てもらっている。

1回につに銀貨10枚。それを今は6年間続けていることになる。


シルビアの両親もそこまでの大金は払うと、自分達の生活がままならず、俺が支払続けることにした。俺はこれが生きがいになっているに違いない。一生を捧げる想いだった相手だ。それくらいしてもいいと思っている。


とはいえ俺ももともと貯金も少なかった。

そのため、自分の漁船の売却で金貨5枚を捻出し、自分の貯金も全てシルビアに注ぎ込み、今はシルビアの故郷、ウゴの村まで移住してハンターをしながら治療費を捻出している。


だが、月に銀貨10枚だと6年で金貨7枚と銀貨20枚になる。さすがに多い。今のランクのハンター業で月に手元に残るのが銀貨2枚程度。

確かに命を張る分ハンターの稼ぎはいいが、怪我の度に治療費が銀貨3枚程度かかる。ランクが低い間は収支のバランスがギリギリの職業なのだ。


ハンターをやり始めるための装備一式の調達などの金も必要だったため、俺は慢性的に金に困っている。


だが、転機は突然やってくるもんだ。


その日はギルドの仕事を終えていつものように酒場に来ていた。たまたま隣に座ったやつは転生者でしかも天狐憑き。


面倒なやつかと疑ったが、話して見るとそうでもない。そいつの名はカイン。

カインは数分しか話していない俺にとんでもない依頼をしてきやがった。


内容はボディーガード兼教育係。転生してすぐで分からないことが多いから助けて欲しいそうだ。

だが、やばいのはそっちじゃねぇ。


こいつは依頼料として自分の持っている金の指輪を差し出してきた。金の指輪は以前聞いた話では金貨2枚で換金されたこともある品だ。


俺は金に困ってる。

たとえカインが天狐とグルになって俺を嵌めようとしていたとしてもこの話は見逃せねぇ。このカインが裏切るとも思えないしコイツの提案に乗ることにした。


ただ納得がいかなかったのは、カインがそこまでしてこの世界でやりたい事がなんなのかだ。だがそれに関しても自分から打ち明けやがった。つくづく好感が持てる性格していやがる。


話をきくと不思議な因果でここにいるカインだが、転移してきた理由はコイツの娘が拐われたから、救い出したいって内容だった。


犯人の手がかりとしては"人買い"だそうだ。


ふっ。なんの因果かかねぇ。

俺もその"人買い"にようがある。


6年前の事件の後、目撃情報の提供の代わりに集まっている情報を自衛団に開示してもらった。


1. この事件は誘拐事件。子供を眠らせてどこかに船で運んでいるようだった。


2. この誘拐犯たちの行方は不明。農業国家イシカの線が濃厚。


3.目撃情報では隻眼の大男の情報と、弓使いの情報のみ。また、逆にこの誘拐犯を襲った紅のマント男も外見情報だけで誰か分からないとのこと。


4. この事件と同じような犯行は多く、子供がいなくなった現場には決まって銀貨1枚が落ちているそうだ。

そのため、犯人グループの呼称は"人買い"だ。


シルビアは絶対に救う。

救い出すまで金なら準備する覚悟だ。

だが、シルビアをこうしたやつをこのままにしておけるほど俺も優しくねぇ。



ちょっと腹くくるかな……。

シルビア、お前の借りは俺が返すっ!



俺はカニカマを大興奮しながら食っているカインにグラスを傾けながら心に誓うのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ