ギース1
ギース ウゴの村で出会ったギルドハンター
俺はギース。
シガーという漁港に住む31歳独身の漁師だ。
この漁港では近郊の海で採れる海産物で生計を立てている者がほとんどだ。
独身とは言ったものの、俺は来月プロポーズをしようと決めている。相手の女性はシルビア。ウゴの村出身で、シガーまで魚貝類を買付に来ている。ウゴの村はシガーの南にある街で馬があれば丸1日の移動でつけるくらいの位置にある村だ。
なんでも、シガーで仕入れた食材を加工して"カニカマ"、"スリミ"という魚の身をすりおろして蒸した料理を作っているらしい。
工場も港近くにあったから、たまたま出会ったのだった。
俺の両親は5年前に他界している。流行病にかかったせいだ。孤独に明け暮れてた俺に優しく接してくれたのが彼女、シルビアだった。
人の優しさに飢えていた俺はすっかり彼女に心を開き、彼女なしにはやっていけないほどだった。そんな彼女にだからプロポーズをしよう!と心に決めていたのだった。
だがそんな時、
事件が起こってしまったのだった。
シガーは港町なだけあって荷物を運ぶ船や、人を運ぶ船も多々ある。その反面地形と設備の関係で港につけられる船の数は限られている。
人を運ぶ船は昼間でないと運航が現実的でないが、荷物なら夜でも問題ないため、夜に馬車が慌ただしく動くのもシガーでは珍しいことではなかった。
その日もそんな風に思っていた。
−−−−−−−−−−
「すっかり遅くなっちまったなぁ。明日も仕事だったっけ?悪かったなぁ。」
「いいのよ。すっごく美味しいお食事だったし、たまにはこういう日があってもいいもの。」
俺はシルビアと一緒にこの街の行列の店で食事をした帰りだった。予想以上の行列で自分達の3組うしろで注文が打ち切られたくらいだ。
「今度はどこに行こうか。1度、ウゴの村へ遊びに行ってみたいとも思ってたんだがな」
「え?私の村に来るの?でもギースが喜ぶようなもの何もないよ」
「いいんだ。シルビアの育った環境が見たいんだ。どうしてこんなに真っすぐ優しく育ってくれたのかって」
「やだっ。……でも嬉しい。きっと父も母も喜ぶわ」
2人帰路を甘いやり取りで彩る最中、
横を一台の古びた馬車が進んできた。
ガコンッ、ガコンッ、ガンッ、ゴッ!!
突然馬車が躓いたと思ったら、その拍子に車輪が折れた!?
俺は急いで駆け寄っていた。
「だ、大丈夫ですか?!」
車輪が折れた拍子に御者台にいる御者が気を失ったようだ。何か当たりどころが悪かったのか?
すると荷台の中からゴソゴソと、音が聞こえる。
「うん?この時間は物資の運搬しかやってないはずだけどな。」
「なに?どうかしたの?」
シルビアも近くにやってきた。
「あ、ちょっと中見てみるわ。
なんか変な音がしたんだよね。」
俺はそう言って荷台を確認しようとした……
ドスッ
俺は馬車から投げ出された!
中からは隻眼の2m近くある大男が出てきた。
「ギースッ!?」
「カッ、シ、シルビア!お、俺はいいから、逃げろ!」
大男の手には柄の長い戦斧があった。どうやら石突の部分で突かれたらしい。
シルビア一人逃がそうとしたが、俺が立てないから全く逃げようとしない。
大男が一歩ずつ迫ってきて、おもむろに戦斧を高々と持ち上げた。月の明かりに照らされた隻眼の男は無言で戦斧を振りおろした。
ギンッ!
と、俺にあたる寸前、誰かが受け止めた。
紅のマントをつけた男が戦斧の根本の部分を何かで受けて戦斧が止まったようだ。
すかさずマントの男が粉上のものをふりまく。目つぶしのようだ。
そのままマントの男は大男の隣をすり抜け馬車へ。
!?
それを見ていた俺達はとんでもない者を見てしまった。
なんと馬車から生きた子供が走って逃げている。年齢にして10歳前後の子供が5.6人。
「早く!今のうちに逃げろっ!」
マントの男が、子どもたちに叫んでいる。
だかそれに気づいた大男は慌ててマントの男に素手で襲いかかった。
ただ、マントの男はそれを軽やかに交わした。
ヒューーーンッ
交わしたところに突然、弓の風斬り音が聞こえてくる。
マントの男はそれを避けきれず弓矢は右腕をかすめてしまった。どうやら大男の味方のようだ。
「シ、シルビア今のうちに。」
俺はシルビアの耳元でささやき隠れることにした。
マントの男は大男と数合交わして逃げていったが、明らかに様子がおかしい。毒でももられたんじゃないだろうか。
だが、俺とシルビアはその間に隠れることができた。
隠れながら様子を観察していたが目を疑う光景を見た。
大男は壊れた車輪を馬車から外し、馬車を持ち上げて残っている車輪を使いながら器用に馬車を転がしていった。
「バ、バケモノか?!」
流石にこんな場所に長居はできないので、大男と馬車が立ち去ったあと、俺とシルビアは避難することにした。
俺はさっきもらった一撃に内臓をえぐられたようで、シルビアの肩を借りながら歩いた。
暗がりの街の中を歩いていると、
ヒューーーンッ ドスッ!
気づいた時には俺は前にすっ飛んで道路に倒れた。
変な音がしたが痛みはない。
おかしいと思い起き上がると、
「シッ!?シルビアッ!!」
シルビアが、肩を射抜かれている!!
流石にマズい!痛いなど言ってられず、俺はシルビアを抱き起こしながら必死に逃げた。
その後、すぐに大通りに出ることができて大量出血の女性を見て通行人が騒ぎ立てる。
そのおかげで早めに助けがきたが、その後、俺の意識も途絶えたのだった。
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