郷に入りては郷に従え2
カイン 主人公 30歳 ムスコン
イナホ 天狐 農耕の神
ニイナ 16歳の愛娘
異世界との時差で年齢差縮まる
タムル ウゴの村 村長 ギルドオーナー
マスター 村営酒場のマスター
メイリン 村営酒場のウェイトレス1
ギース 30台後半のベテランハンター
「「カンパーイッ!!」」
なぜかわからんが俺による、俺の個人情報を、俺だけが話す。罰ゲームみたいな暴露大会が始まった。
「で、おめぇよー。なんか換金したい物があるんだろ?何を換金したいんだよ。」
俺は数々の指輪を持ってきていたが相場確認のため、自分のポケットに形状の異なる複数の指輪を、入れてきている。
丁寧にそれぞれをシルクの布で包んであるので傷はつかないはずだ。
「ギースさん。だいぶ悪い顔で近づくのやめてもらえませんか?
ちなみに換金したいものは指輪です。金の指輪とか石のついているのとか色々ありますが、相場が高いのはどんなものですか?」
「まぁ、順当に金の指輪だわな。あとは装飾が凝った指輪は職人の手心が入って希少価値があがるからそれなりにするぜ。」
予想通り!俺は一番シンプルな純金の指輪からお披露目する。
「見てもらいたいのはこれですね。」
「ん!おめぇこれ?金の指輪か!?どんなガラクタ見せるかと思ったら、おめぇ結構やるじゃねぇか!」
「ホントね!カインくんだっけ?いいの持ってるね。良かったら明日の昼間ならギルドでちゃんと鑑定かけるけど、金の指輪なら純度とか色々あるけど良いものは金貨3枚くらいの価格になるわよ。」
金貨3枚!300万円くらい!ヤバッ!
でも、表情に出さないようにして……
「よかった!でももう1つ教えて下さい!
今日、上の階で泊まるんですが一泊いくらですか?」
「ここの宿泊?銅貨50枚よ。お金がない場合はギルドに前借りみたいになるわね。でも、カインくんは大丈夫そうね!」
銅貨50枚。5000円くらいか。
「わかりました!やっと安心できます。
ありがとうございます!」
「ちょっとメイリーン!サボってないで手伝ってー!」
「はーい!じゃあカインくん!明日またそれ持ってギルドに来てね!グビッ!ご馳走さまっ!」
あ。俺のビール全部飲んでった。
「相変わらずメイリンちゃんはドタバタだなぁ。で、おめぇよぉ。他にもあるんだろ?見せてみろよ。」
うん?なんかカツアゲみたいになってきた。ギースさん大丈夫かなぁ?
でも、分からないことだらけの異世界には絶対的な味方が俺には必要だ。
加えてギースさんは困っている人を助けたがるタイプ。とりあえず味方につけとこっかな。
「ギースさん、なんかカツアゲみたいな雰囲気でてますよ。ま、いいんですけど。
1つだけ約束してください。このことは内密にしてください。まだこっちに来てすぐに怪しい人に目をつけられたくないので。」
「ふっ。わかったよ。」
「じゃあ、これ、一個口止め料です。」
俺はギースにさっきの指輪を渡した。
「なっ!?おめえこれ??気は確かか?」
「もちろん!実はあといくつか持ってきてるんです。ただ上手に換金しないと心配で。だから、僕の教育担当兼ボディーガードにそれでなってもらえませんか?もちろんずっとじゃなくていいんで!」
「な、いや、でも、おめぇ。」
「大事なことなんです。ちょっとだけ僕の話をさせてくださいね。
すいませーん!ビール1個とウイスキーのボトル追加で!あとおつまみの盛り合わせください!」
「ボクの酒も。」
「すいません!酒も!」
「おめぇ、なかなか強引なやつだったんだなぁ。」
「やだなぁ。大事な話を聞いてもらう環境整備じゃないですかぁ。
それで、そもそもなんですが、僕はご存知の通りこの世界には転移してきました。」
「はい!ビールとウイスキーボトル追加と冷酒ね!あとおつまみ盛り合わせも!」
「ありがとうございます。」
なぜかメイリンさんもガッツリ聞く姿勢だ。
「じゃあちょっとお話させて頂きますね。僕はこの世界に転移してきましたが、それには理由があります。
実は自分の妻と娘が行方不明になって、この世界に飛ばされました。なんとか世界を超えてこちら側に来れましたが妻には会えましたが娘はこちらで行方不明です。
ムスメは16歳でニイナって言います。最期の消息は6年前に"人買い"に連れ去られたってこと。
ムスメが今、どこでどうしてるかわかりませんが、奴隷なら買い戻したいし、生きているなら支えてあげたい。全力を賭して。
ただ、この世界のことがわからなさすぎるんです。
だから、ギースさん、お願いします。僕を助けてくれませんか。」
俺はそっと金の指輪を。シルクの包ごとカウンターの上においた。
「フ、フハハハハハ。そうか、そうか!
"人買い"か……分かった。手伝ってやるよ。けどなぁ。さっきずっとじゃないつったよな?
俺にもやらなきゃならねぇことがあんだ。だからどっかで手は引くぜ。」
「あ、ありがとうございます!
ち、ちなみに。やらなきゃならないこととは?」
「ふ、おめぇの抱えてる問題に比べりゃ些細なことよ!またいずれ教えてやんよ。」
「わかりましたっ!ホントに助かります!これからどうぞ宜しくお願いします。」
俺達はグッと握手を交わした。
契約成立だ。
その様子をじっと見つめる者が2人。
1人はメイリン。
なんだぁーカインくん妻子持ちかぁー。なんて言っているが聞こえてないフリをしておく。
そして、もう1人はイナホ。
イナホは1つ隣の席に座りながらずっと黙りながらギースを見ていた。その深紅の眼で何を見ているのか。カインはまだ知る由もなかった。