8 幼女精霊、変態属性を獲得する?
前略、地球の皆様はいかがお過ごしでしょうか?
俺は異世界転生したら、6歳にして子持ちの父親になっていました。
「パパー」
なんて言って、俺に抱き着いてくるのは、褐色系幼女精霊。
「よしよし、いい子だな。飴ちゃんあげるから、これでもなめてろ」
「わーい、でも飴ってなーに?」
「とりあえず口に入れてみろ」
幼女精霊の口に、飴玉を放り込んでやった。
「ガリガリ、コリ、ゴキン」
「……噛むんじゃなくて、なめなさい」
「もう飲み込んじゃったー」
あどけない表情を浮かべる幼女。
俺は服のポケットをまさぐるが、今あげたので最後だった。
「もうないぞ」
「もう1個欲しいよー。お願いパパー、ちょうだーい」
幼女が物欲しそうな目で、おねだりしてくる。
選択肢としては『YES』と『はい』と『OK』だ。
なんてのは、元日本人の俺の意見。
『YESロリータNOタッチ』
こんなのが俺の半分だと思うと悲しくなる。
俺は、日本人の俺とは、別の人格をしているのだ。
なお、もう半分の黄金竜の人格は、
『これ食べられそうにないわね。どうでもいいや』
という感想だ。
むろん、俺の人格は黄金竜の人格とも異なっているので、目の前の幼女を試食するという感想にたどり着かない。
てか、俺の中にある2つの記憶は、どっちもぶっ飛んだ考えをしてるな。
「パパー、パパー」
俺の内部で起きている考えなど露知らず、幼女は無垢な笑顔を向けてくる。
「よしよし、頭なでてやるから、いい子にしてろよ」
「はーい」
頭なでなでしつつ、俺は妹を救うためのエリクサーを作るため、世界樹の葉っぱから朝露を採取していく。
世界樹の葉に朝に出来る露は、死者すら蘇らせることができる神薬になる。
ただ、使用制限が朝露なので、ここに水魔法で水をぶっかけたり、霧吹きで吹きかけた水滴などではダメだ。
早朝に、葉っぱに出来た水滴でないと、薬効がない。
「よし、必要な材料が集まったから、エリクサーを作るか」
「私も、手伝うよー」
俺の娘(ヒール使ったら勝手にできていた)は健気なもので、その後エリクサー作りを手伝ってくれた。
「あ、あの、あなたは本当に、竜神様なのですか?」
ところで、俺と幼女が協力してエリクサーを作っていると、周囲にいるドライアドが話しかけてきた。
「一応黄金竜だぞ。
と言っても、ちょっとやらかしたせいで、今は人間にされてるけどな」
上位神の事は口に出さずに、簡単に説明しておく。
「お、おおっー、神よー!」
「世界の王よー!」
「真なる世界の主よー!」
その後、何故かドライアドたちが俺に向かって、歓喜の声を上げ、一斉に平伏してきた。
と言っても、今の俺はただの人間。
一方のドライアドは、樹齢千年級の超巨大な樹木の姿をしているので、平伏されても、頭の位置が俺より遥かに高くい。
平伏しているのに、頭が高いな。
そんなのが、何十本だか、何百本だかいる。
黄金竜の時だったら、俺もデカいのだが、生憎今はドラゴンと比べればただのチッコイ人間でしかないからな。
そんな鬱陶しいドライアドたちの事は無視して、俺と幼女は一緒にエリクサーを完成させた。
なお、この幼女精霊だけど、
「私は世界樹の精霊で、世界樹の意志こそが私なのです。エッヘン」
と、ない胸反らして、アピールしていた。
俺の予想通り、本当に世界樹の精霊だった。
生まれて1、2年の、ただのチビだけど。
それはともかく、完成させたエリクサーの中に、俺の血液を1滴だけ入れて、希釈させた。
これで普通の人間でも、死ぬことが(たぶん)ない不老不死の薬が完成だ。
「クンクン、においはないな?」
「パパー、それおいしいの?」
「試しに食べてみるか?」
「わーい、私の根っこにかけてー」
幼女精霊が、自分の根元……つまり世界樹の根っこ部分を指さしたので、俺はそこに不老不死の薬をかけた。
俺の血を希釈するためのエリクサーは大量に作ったので、多少ぶっかけたところでなくなりはしない。
「ホ、ホンゲェー。壊れちゃう。私、壊れちゃう。アッ、アアーン、パパが、私の中に入ってくるー!」
その後幼女精霊が顔を真っ赤にして暴れまわり、本体である世界樹の葉がザワザワと音を立てて揺らめいた。
「ア、アアーン」
「1、2歳児の出す声じゃないぞ。どういうエロボイス出してるんだ」
幼女精霊の出すエロ声に、ビックリだ。
「フ、フー。す、少しだけ、落ち着いてきた」
その後しばらくして、幼女精霊は正気に戻った。
「パパの強くて、逞しくて、太いものが……」
訂正、変な属性を幼女精霊が身に着けてしまった。
「誤解を受ける言い方をするんじゃない!このませガキ!」
「ヒギャッ!」
幼女だからと遠慮していたが、変態属性に目覚めたので、チョップして物理的に修正しておいた。
「じゃ、俺は家に帰らないといけないから、アバヨ」
頭を押さえて悶絶する幼女精霊と、おまけのドライアドたちに別れを告げて、俺は妹のいる家へと帰った。
俺のことをパパと呼んでくる幼女精霊だが、放置で問題ないだろう。
あれは木なので、俺がわざわざ手間をかけても勝手に育つ。
ところで家に帰る途中、魔の大森林を横断していると、
「フハハハ、我こそは第六天魔王ノ……ピギャー!」
なにか跳ね飛ばしてしまった気がするが、ただの気のせいだ。
そういう事にしておこう。
上位神にお仕置きされる前の、黄金竜だった時も、空を飛んでいると、
「我は天空の支配者・・・・・・・ホンゲー」
なんて名乗っている、変な飛行生物を跳ね飛ばしたことがある。
あれも問題ない。
いや、ホンゲーなんて恥ずかしい名前を堂々と名乗っていたことが、若干問題か?
しかし、天空の真の支配者は黄金竜である俺なので、粋がるザコがミンチになったところで、何も問題ない。