41.5(番外編) 特に心温まることのない創世神話
余は真正なる神にして、この世界の真の支配者である。
なお、余は現在星系をひとつ所有しているが、人類のような知生体はもとより、菌類ひとつ存在していない。
昔存在した銀河帝国の遺物が、宇宙空間を漂っているものの、特に使い道がないので放置している。
ところで余のペットなのだが、奴は余が暮らしている神界で暴れまわり、いろいろと物をひっかきまわして困っている。
「ギャオーッ」
「なんだと、物が溢れすぎていて狭いだと。これらは余が買い集めた、高価な品々であり……」
「ギャオッ!」
「よ、余は、通販依存症などではない。断じてないからなー!」
黄金竜などと呼ばれるドラゴンであっても、所詮はただの畜生。
余がネットで買い集めた品々の価値を理解せぬとは、困ったことだ。
おっ、ペットの奴が、昔購入したまま完全に忘れ去っていた、クトゥルフの干物を引っ張り出してきた。
「珍しいものが出てきたな。クトゥルフは干物が一番うまい。早速食って……」
「ガウウーッ」
余が手を出すより先に、バカドラゴンがクトゥルフを食いやがった。
「ち、畜生。クトゥルフって結構高いんだぞ。それを一口で食うとか、どんだけ食い意地が汚いんだ!」
それもこれも、余の神界に、バカドラゴンがいるからいけないのだ。
「そうだ、せっかく余の持ちものなのだから、惑星の一つに、放し飼いにするか」
余の世界の中で暴れまわるからいけないのだ。
というわけで、余が保有している星系にある星の一つに、クソドラゴンを放し飼いにすることにした。
「出来立てで、それほど時間がたっていない灼熱惑星だが、こいつなら放し飼いにしても死なないだろう。てことで、お前は星にポイだ!」
「ギャオオオーッ」
クソドラゴンが喚いたが、そんなことはお構いなし。
余の神界から、惑星へ放り捨てた。
「フッ、余の世界に、再びの静寂が戻ってきた。
退屈だから、神界ネットで動画でもみるかー」
それから数億年ほど経ってから、放置していたクソドラゴンがどうなったのか、気になった。
余は神界から、惑星の様子を眺めてみる。
監視カメラの映像をテレビで確認するように、余の技をもってすれば、そのようなことは簡単にできるのだ。
「ハアーッ、なんで溶岩惑星が、水の惑星にかわってるんだよ!
海ができてるじゃないか!?
てか、生命までいる。
単細胞生物だけでなく、多細胞生物までできてるじゃねえか!」
「ギャオオーッ」
「なに、熱いから雨を降らしてたら、いつの間にか生き物ができていただと。
お前、星に雨を降らすついでで、生命創造なんてするなよ!」
このドラゴン、マジでバカだ。
星が熱かったから水で沈めるのはいいとして、どうして生き物なんて作り出すんだよ。
「それに、生き物はできているが、このままだと知的生命体にまで進化することはないな。
ただの能無し、頭スカスカの生命体止まりだな。
クククッ、愚かなドラゴンよ。ここは余の神技を持って、真の生命創造の技を見せてくれよう!」
普段から、余の指に齧りついてくるバカドラゴン。
ここで余とドラゴンの間にある、絶対的な力の差を見せつけてやることにした。
飼い主である余の方が偉いのだと示しておかないと、どこまでも増長するからな。
というわけで、余は生命創世棒を取り出す。
この棒で海をひっかきまわすと、生命創造の技を助ける効果がある。
余が誕生してまだ間もなかった頃には、この棒を何度も使って、星に命を生み出す練習をしていた。
もっとも、この棒はあくまで子供の練習用の道具で、生命創造に慣れてくると、自分の手で直接海をひっかきまわした方が、簡単に生命創造ができるようになる。
たた、この前通販サイトを眺めていたら偶然見つけたので、懐かしいと思って、つい購入してしまった。
長さは全長2千万キロほどの長さになるが、この長さがちょうどいい。
余がいる神界から出ることなく、棒をつかって、海をひっかきまわせる長さなのだ。
余は、銀河に存在する他の神々からハブられているので、自分専用の神界から出るつもりはない。
例え片手だけであっても、神界の外に出るつもりなどない。
てなわけで、棒を握って、海を混ぜ混ぜ。
棒のおかげで、余の手が神界の外に出なくて済む。
「よいか。こうすることで、星の生命はやがて知的生命体にまで進歩するのだ」
「ギャオオーッ」
「ってコラ!何勝手に、お前も混ぜだしてるんだ!
ああ、進化の法則がズレていく」
せっかく知的生命体まで進化できる道筋を作ったのに、おかしなことになってしまった。
余の眼力をもって、進化の道筋が、どうズレたか確認していく。
「モンスターとか魔王とか、なんでそんなものが生まれる世界にしちまうんだよ……」
「ギャオ」
「どうせなら、食い物がいる世界にしたかっただと。
お前、モンスターや魔王を食う気か?」
「ギャオッ!」
物凄くいい声で、鳴きやがった。
このドラゴン、食い意地張りすぎだろ。
「ま、いいか。
どうせペットを放し飼いにする星だから、好きにやらせるか」
余の持ち物の惑星であるが、ペットを放し飼いにしているので、これでいいだろう。
放し飼いにしたおかげで、余の神界にバカドラゴンが帰ってきても、あまり物を散らかさないようになった。
だが待てよ。
せっかく星にモンスターや魔王が生まれるのであれば、某世界で流行っている、異世界転生物の舞台として作り上げてみるのも悪くない。
余は暇を持て余しているので、バカな異世界人どもをこの世界に放り込んで、それを娯楽にして楽しむのも悪くない。
「フムフム、そうなるとこの星の環境を、もっといい方向に整える必要があるな」
というわけで、余は使えそうなものはないかと、自分が住んでいる神界の中をゴソゴソ漁る。
やたら物が多すぎて、神である余ですら、何をしまってあるのか忘れてしまった量があるので困る。
あ、ヤベ。
物の山が、崩れちまった。
後で片づけておかないと、足の踏み場がなくなっちまう。
そんなことをして、いい物を見つけた。
「これは確か、家庭菜園をしようと思った時に買った、世界樹の種だったな。
あの時は単にやってみたい気分になって買ったものの、その後面倒臭くなって、放置していたやつだ」
余は決して、買い物依存症ではない。
現に、その時買った世界樹の種が、役立つ時が来たのだから。
「これを惑星に撒いておくか。
ひと袋に100粒くらい種が入っているから、適当に撒いておけば、1、2本は育つだろう」
余のいる神界から、惑星の成層圏に向かって、種を纏めて放り投げる。
惑星の成層圏に突入した世界樹の種が、大気と摩擦を起こして高温の熱に包まれるが、世界樹の種であれば、大気圏突入した程度で、ダメになることはない。
そのまま地上に落下した種に、適当に水と魔力を与えておいた。
「ギャオ?」
「なんで種を蒔いたかだと?
世界樹があれば、星の環境維持がやりやすくなるんだ。
星に1本あるだけでも、いろいろ便利なんだぞ」
「ギャオ」
余が説明してやったのに、ペットの奴は、特に興味なさそうな返事をしやがった。
こいつは基本、食う遊ぶ寝るしか興味がないので、仕方ない。
ドラゴンと言っても、所詮は畜生だ。
「ただ、惑星に生き物がいるのはいいが、管理もしないといけないな」
惑星と言うのは環境の変化に注意し、生命の分布などに気を付けておかないといけない。
それを怠ると、あっさり生態系が壊滅して、死の惑星になっていました、なんてことがある。
ただ、惑星の管理というのは、物凄く面倒臭い。
地味で、ひたすら目立つことのない仕事を、続けなければならない。
むろん、上位神たるこの余が、地味でひたすら面倒な仕事を続けるつもりなどない。
そしてバカドラゴンの方を見るが、こいつにそんなことが、できるはずがない。
「ギャオオオーッ」
「ヌオオーッ、バカ野郎。余の指に噛みつくな!
痛い痛い!」
バカにしているのを見破りやがったのか、いつの間にか余のいる神界に戻ってきて、余の指に噛みついてきやがった。
「クッ、またしても余の血を舐めやがって。お前は余のことを、食料と勘違いしているのではないか!?」
「ギャオオーッ」
最初はドラゴン卵のオムレツのために購入した卵だったのに、いつの間にか、余の方が食われてないか?
い、いや、そんなバカなことはありえない。
余はこの世界でも、高位に位置する上位神。
たかがドラゴン程度に、食われる存在ではないのだ。
余は気を取り直して、星の管理をどうするのか考える。
「ま、最初からどうするかなど、決まっておるがな。
惑星を管理するための下級神を何柱か作って、そいつらに仕事を丸投げしてしまえばいい」
自分でしたくない仕事は、下っ端の神を創造することで、丸ごと押し付けてしまえばいい。
というわけで、余は自らの力の一部を使って、下級の神を何柱か創造していく。
「フンフンフン、粘土細工をしているみたいで面白いなー」
余の力の一部といっても、ちょっと時間がたてば回復してしまう微々たる量。
数千柱、数万柱の下級神を作っても、余には全く問題ないレベルだ。
「ギャオ、ギャオオー」
気が付けば、余の隣でバカドラゴンまで、下級神を作り始めていた。
「……あれ、こいつって、案外神としての格が高いんじゃないか?
余には全く及ばないとはいえ、ただのドラゴンのレベルを超えておるぞ」
余と同じで、バカドラゴンも何十、何百柱と、下級神を作り上げてしまった。
「ま、よいか。
あとはこいつらに、星の管理を押し付ければいい。
余は、ダラダラするぞー」
星の管理は丸投げして、余は再び暇潰しのために、神界ネットで動画を見ることにした。
「ギャオオーッ」
バカドラゴンも下級神作りに飽きると、そのまま星に戻って行って、遊び始めた。
もちろん、奴も余と同じで、星の管理なんて全くしない。
ただ、遊びまわっているだけだ。
「ギャアアアー、黄金竜様、食べないでー!」
余が作り出した下級神に齧りついているようだが、どうでもいいことだな。
余の指が、齧りつかれているわけではないから。
その後、下級の神々が星をきちんと管理して、惑星に知的生命体が誕生し、魔王軍や悪魔の軍勢、邪神の眷属などが誕生していった。
「フムフム、なかなか愉快な舞台に仕上がったな。
あとはここに異世界人を放り込んで、余のおもちゃとして遊んでくれよう」




