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31 勇者&リーリャン様VS悪魔の戦い?

 謎の怪盗仮面少年リーリャンは忽然と消え去り、彼の正体は誰にもばれることはなかった。






 闘技場でのリーリャンの変装は終わり、妹へ戻ったリーリャと共に、俺は王都の街へ繰り出す。




「兄様、王都の闘技場といっても、そこまで強い人もモンスターもいませんでしたね」


「そうだなー。最後に出てきたチャンピオンも見掛け倒しで、すぐにリーリャが倒しちゃったし」


「むしろ、あのゴキブリ勇者の方が気持ち悪かったです。

 あんな男に粘着されてる魔王が、気の毒ですね」


「確かにそうだな」



 ゴキブリ勇者の目的は魔王討伐なので、あんなのに四六時中付きまとわれ、相手をしなきゃいけない魔王はお気の毒だ。



 そんなことを話しつつ、俺たちは王都を観光して回った。





△ ◇ △ ◇ △ ◇ △ ◇




「クレイ様、リーリャ様、お気になりましたか、一大事ですよ!」


 宿に戻ると、アイシャに会ったが、顔を上気させて興奮していた。


「そんなに興奮してどうした?」


「一大事です、魔王軍です!

 魔王軍の幹部である悪魔が、闘技場のチャンピオンに化けていたんです!

 街はその話題で持ちきりなんですよ」


「あ、そう」


 なんだ、物凄くどうでもいい話だ。



「クレイ様、どうして興味なさそうにしてるんですか?」


「物凄くどうでもいいことだから」


「まあ、魔王軍の幹部が現れたのに、それを些事で済ましてしまう。

 クレイ様は器が大きいのですね。

 ますます、惚れちゃいそう」


「ん、最後の方が小声で聞こえなかったな?」


「な、何でもないです。ホホホッ」



 アイシャが笑って誤魔化すが、なぜか俺の横にいるリーリャが、俺の手を強く握ってきた。


「アイシャさん、それでどんな噂になってるんですか?」


 リーリャは笑顔で、話の続きを促した。



「それがですね、闘技場に現れた悪魔なのですが、チャンピオンに化けていたのを、勇者様PTが突き止められたそうです」


「んん?」


 俺が現場で見てきた話と、違ってないか?



 俺とリーリャが不思議そうに互いの顔を見合わせるけど、そんな俺たちに気づかず、アイシャは説明を続ける。




 アイシャ曰く、


 闘技場で戦いを続け、決勝戦にまで辿り着いた勇者PTは、そこで闘技場のチャンピオンとの戦いになり、勝利する。

 だが、そのチャンピオンは実は魔族が化けた姿であり、敗北後に真の姿を現した。


 そこからは悪魔と勇者PTの真の戦いが始まり、空は雷雲に包まれ、様々な魔法が飛び交い、両者は激闘を繰り広げたのだという。



「あのゴキブリ勇者、すぐに負けたのに」


「悪魔との戦いで、魔法なんて1発も飛ばなかったぞ」


 目の前にいるアイシャは、まるで自分が目の前で見てきたかのように、興奮しながら話してくれる。

 でも、現場を見ていた俺もリーリャも、物凄く冷めている。




 しかし、アイシャの話は続く。


 両者の激闘が続いたものの、戦いの中で勇者PTの剣士、魔法使い、ヒーラーの3人が深手を負って、闘技場に倒れ果てる。

 ついには勇者までもが地面に膝をつき、悪魔が留めの一撃を刺そうとした。



「その時です!闘技場に颯爽と現れた、謎の怪盗仮面少年リーリャン様が、お姿を現したのです!」


 両手を天に掲げ、大仰な姿勢になるアイシャ。



「「……」」


 お、おうっ、そうか。

 あまりに驚きすぎて、逆に何とも思えない。

 マジで言葉が出てこない。



 それでもアイシャの話が続く。


「仮面で素顔を隠された美貌の剣士リーリャン様は、颯爽とお姿を現されると同時に、悪魔へと切りかかられました。

 あわやというところで、勇者様を倒そうとしていた悪魔の攻撃は防がれます。そこから先は勇者様とリーリャン様のお2人が協力し、強大な悪魔相手に大太刀周りの戦いを繰り広げられます。

 勇者様は神々しいばかりに輝く聖剣を振るい、リーリャン様は二刀の剣を使われ、まるで竜巻のように悪魔の胴体を切り刻みます」



 この後、興奮しまくったアイシャが、『勇者&リーリャン様VS悪魔の戦い』を怒涛の勢いで語り聞かせてくれた。



「戦いは長引き、3日3晩に渡って続きました。

 ですが最後には勇者様の聖剣が悪魔の心臓を捕らえ、リーリャン様の華麗な剣が悪魔の首を切り飛ばしたことで、ついに戦いは決着となったのです。

 ああ、リーリャン様、その華麗なお姿を、私も間近で拝見したかったー」


 うっとりとした表情で、両手を合わせるアイシャ。

 まるでリーリャン様に恋する乙女のようだ。


「コホン、もちろん私にはクレイ様がいるので、リーリャン様は憧れでしかないですけど」


「何か言ったか?」


「い、いえ、何でもないです、クレイ様」



 このままアイシャが、リーリャン様一筋になっても、いいんじゃないか?


 俺は難聴系主人公なので、アイシャが何を言ったのか分からない。

 分からないったら、分からない。


 俺はアイシャに好かれているのは分かっているが、アイシャがオーク相手にしたことが、若干トラウマになってるんだよ。




 まあ、それはともかくだ。


「悪魔を討伐された後、リーリャン様はこうおっしゃられたのです。

 “ふっ、私が二刀を振るうとき、私の勝利は確定しているのです”、と。

 ああ、リーリャン様、素敵―」


 アイシャはそう言って、頬に両手を当てた。




「それって、リーリャ様のキメ台詞だよな」


「リーリャ様じゃん」


「リーリャンの正体って、リーリャ様以外にないな」



 アイシャはうっとりしているが、近くでこの話を聞いていた子供たちが、そう言った。



「やっぱり、お前らにはバレるか。

 昔から一緒にいるから、仕方ないよなー」


 子供たちが、あっさりリーリャン様の正体に気づいてしまったが、身内で隠すようなことじゃからな。



「フフフッ、何バカなこと言ってるんですか。華麗なる謎の怪盗仮面少年リーリャン様は男性。

 リーリャ様の訳がないでしょう」


 ただ恋する乙女(?)アイシャは盲目で、リーリャン様の正体に全く気付けてない。


 子供たちの言葉が、全く耳に入ってないな。





「リーリャ、アイシャに惚れられたみたいだけど、どうする?」


「どうするもこうするも、アイシャさんの思い人はリーリャン様なのでしよう。

 私には関係ない話です」


 リーリャはアイシャのことなど、全く気にしないようだ。




 ……今夜、ニールとケイトに女性同士の恋ってどうなのか、聞いておいた方がいいもしれない。


 一応、念のためにだ。





「それにしても闘技場で起きた悪魔騒動だが、話に尾ひれがつきまくって、リーリャンのキメ台詞くらいしか、原形を留めてないな」


「本当、どうしてあのゴキブリが、活躍したことになってるんでしょうね?」


「確かに、あいつって悪魔が出てきた時、現場にいなかったのにな」



 そんな風に、俺とリーリャは話し合った。

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