22 証拠いんめ……竜神様の御業
“自然現象”で、近くの山が土砂崩れを起こした村で1泊した後、俺たちの王都を目指す旅は続いた。
「土砂崩れのせいで、王都に続く街道が埋まってしまった。これではどうにもなりませんな」
訂正、乗合馬車の御者さんが、とんでもないことを言ってきた。
仕方ないよな、”自然災害”が原因だから、俺たちではどうにもならないハプニングだ。
「兄様!」
「「「クレイ様!」」」
ただ土砂崩れの話を聞いた後、なぜか妹とスティーブン、そしてアイシャを筆頭とした子供たちが、一斉に俺の方を見てきた。
それも責めるような目をして。
「お、俺は無罪だ!」
「やはり兄様が原因ですか」
はあと、リーリャがため息を吐くと、それに合わせて、子供たちも一斉にため息を吐きやがった。
「な、なぜバレた?」
「日頃の行いです」
領地にいる頃に、いろいろしてるもんな。
てか、スティーブンだけでなく、子供たち全員、俺がやらかしてるのに気づいてるのかよ!
領地近くに、ある日突然湖ができた事件は、俺が犯人じゃないぞ。
きっとモンスターの仕業だ。
次の日には湖が消えて更地に戻っていたのも、俺が犯人じゃないぞ!
証拠隠滅は完璧だったはずだ!
あそこは元が森だったから、更地にしたのがいけないのか?
木を生やしておいた方がよかったのか!?
「もう1泊村で休んでいこう。
明日になれば、土砂崩れもなんとかなってるかもしれない」
「はあっ、そうですね」
呆れた目で、リーリャに見られてしまった。
グッ、兄としての威厳が……
「1日経ったところであの土砂です。
この道はもはや人の手でどうにかなるレベルじゃねえですよ。大人しく、遠回りの道を行きましょう」
俺と領民の間では、意味が通じていたが、御者さんには通じていない。
アルセルク領の住人でなければ、意味が通じないから仕方ない。
それでも俺が雇い主ということもあり、乗合馬車の御者さんは、続けて村での1泊を受け入れてくれた。
「金を払っていただけるんでしたら、別に構やしませんがね」
と、胡乱な声を出されたが。
そして翌日、街道を塞いでいた土砂が、なぜかきれいさっぱり消え去っていた。
土砂で埋まっていた街道は、まるでドラゴンが団体で行進した後のように、地面が固く踏みしめられている。
崩れたはずの山も、崩れる前に比べてちょっと歪な形に変わっているものの、復活していた。
山肌には木々が生いしげ……適当にぶっささっている。
途中から面倒臭くなって、いい加減な手抜き作業をした形跡が見て取れる。
魔法なし、物理だけで山を元の形に戻そうとしたら、徹夜作業になってしまい、途中で嫌気がさしてしまったのだ。
「証拠隠滅完了」
俺は昨日の惨状がウソのように消え去った光景に、拳を固く握って感動を覚えた。
ここで起きた惨劇を知る者は、もはや誰もいない。
この場にいたもの以外では、誰も分からないだろう。
『ある日突然山崩れが起きてしまい、街道まで完全に埋まってしまった。
でも、翌日にはそんな形跡がなくきれいさっぱり片付いていたんだ』
そんな事実を話しても、現場を直接見ていない者には、出来の悪い冗談としか思わないだろう。
「き、奇跡じゃ、竜神様の御業じゃ。神のご加護じゃー!」
「ソダネー」
なお、昨日と今日で一変した光景を見て、御者のおじさんが勝手に竜神様のおかげだと賛美し始めた。
適当に調子を合わせておこう。
事実、おじさんの言うことが正しいので、問題ない。
ついでに山が崩壊した原因も、自然災害のせいにしてくれれば、なお素晴らしい。
「さあ、早く王都に向かいましょう」
「予定が1日遅れたので、少し急いでもらいたいな」
御者のおじさんは仰々しく神々に感謝しているのに、妹とスティーブンは物凄くドライだった。
「王都ってどんなところかなー、楽しみ」
「私、この村にもう1泊してみたかったな」
「王都って強いモンスターはいるのか?」
子供たちも、神の御業なんて全く無関心。
気になる事だけを話していた。
ま、いいや。
とっとと王都に行って、叙勲してもらって帰ろう。
本当なら日帰りでできたことだから、俺も早く帰りたいし。




