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19 子供たちの実力がベテラン冒険者クラスな件

 気分は、遠足というより修学旅行。



 俺は叙勲を受けるため、供回りを連れて王都への旅となった。


 なお、供回り筆頭は歴戦の戦士スティーブン。

 いや、ここはロイドじいさんの呼び方に習って、騎士スティーブンと呼ぶべきか。


 そんなスティーブンと共に、領内の子供たちもかなりの人数が参加した。

 もちろんスティーブン以外の大人もいるが、子供の方が多いので、ますます修学旅行っぽい。


 大人たちは、動き回る子供たちを引率する、先生みたいなものだ。




 ところで、我がアルセルク領から王都に向かうためには、最初にロカルト山系を超える必要がある。


 我が領では、馬なんて贅沢な生き物を飼育する余裕がない。

 そのため、領主代理である俺ですら、移動用の動物に乗っていない。

 歩きだ。


 別に1年くらい走っても疲れることのない体だから、歩きでも全く苦にならないけどな。




 さて、旅の開始と共に、俺は妹のリーリャがこけないように、手を握ってやる。


「兄様ーっ」


 そんな俺に、リーリャは甘えた声を出してきた。



「全く、リーリャは甘えん坊さんだな」


「だって、この山怖いんだもんー」


「ハハハ、リーリャなら1人でも大丈夫だぞ」



 笑いながら、リーリャの頭を軽くコツンとする。


 ウフフ、アハハと俺たちは笑い合い、兄妹仲良く触れ合った。



「……」


 さっきから、俺たちの背後でアイシャが黒いオーラを放っている気がするが、多分それは俺の気のせいだろう。


 俺がやらかした際によく見ている、錯覚だ。

 錯覚に間違いない。




「ブモォー」


 さて、そんな俺たち一行が山系に足を踏み入れれば、当たり前のようにモンスターが襲い掛かってくる。

 この山系はモンスターの巣窟なので、モンスターと全く遭遇せず、やり過ごすなんてできない。


 山系を抜けるためには、戦いは避けて通れないのだ。



 そして今回俺たちの前に出てきたのは、1体のオーク。

 醜い豚の顔に、突き出た腹が特徴のモンスターだ。


 巨体から繰り出す強力な腕力があり、丸太や斧を武器にしていることもある。



 ただオーク最大の特徴にして、最も恐るべき点は、倒した冒険者を鹵獲して、性交を強制してくること。

 エロ同人の姫騎士やエロフのように、相手を犯し、妊娠させてしまうのだ。


 それもヤるのは必ず、美男美女だけで、不細工だとあっさり殺して食ってしまう。


 奴らは恐ろしいことは、女性だけでなく、男であっても、妊娠させることができるという、シャレにならない種族特性だろう。


 そしてハーフオークと呼ばれる種族がいるのだが、彼らはみんな美男美女揃いだった。

 ハーフという言葉からお察しの通り、妊娠させられた姫騎士やエロフたちの、その後の結果というわけだ。




「ブモモオーッ」


 そんなオークが、俺たちの前に現れて、発情の声を上げる。


「このクソ豚が!」

「ブ、ブモオーーーッ」


 だが、オークは即座に悲痛な鳴き声を上げた。

 いや、泣き声だ。


「私はイライラしているのに。

 我慢しているのに。

 あの女がクレイ様の傍にいるのを、指をくわえて見ているだけなのに……」


 さっきまで俺の後ろにいたアイシャが最前列に飛び出し、こん棒片手にオークのあそこを砕いた。


 アイシャは見習いシスターとして回復魔法を使えるが、メインウェポンはこん棒だ。

 シスターだけど、物理も行ける。



「この、クソッ、おったててるんじゃないわよ!」

「ブ、ブモッ、ブモオオオーッ」


 どす黒いオーラを纏ったアイシャが、こん棒でオークのあそこを執拗なまでに殴り続ける。


 オークの上げる悲痛な泣き声に、俺は思わず固まって、身動きが取れなくなってしまった。



 えっ、黄金竜の力?

 そんなもの、この状況じゃ全く役に立たんよ。



 現に俺だけでなく、スティーブンを含めた男たち全員が、呪いに掛かってしまったかのように、動けない。



 ただ男たちは固まっていたが、なぜか女性陣は違った。



「アイシャ、私も協力するわ」


「この豚で、私たちのうっ憤を晴らすのよ」


「妹だからって、リーリャばかりズルイ!」



 今回連れてきた領地の子供(女性陣)たちが、皆それぞれに武器を手にして、オークのあそこを執拗に破壊し続けた。




「こええーっ」


 俺、泣いていい?



「ウ、ウワーーン」


「ウエーン」


「お姉ちゃんが怖いー」


 あ、ダメだ。

 俺より先に、連れてきた男の子たちが、みんな泣き出しちゃった。




△ ◇ △ ◇ △ ◇ △ ◇




 女子って怖いね。

 なんであんなになるんだ?

 俺には、理解できない。




『グオッ』


 俺の中の黄金竜が何か言いたげに鳴いたけど、意味が分からない。

 そういや、黄金竜さんは生物学的にはメスなので、もしかすると男の俺には理解できない、女の事情を理解できるのかもしれない。


 ……でも理解したくないので、俺はこの件に深入りするつもりはないぞ。




「ヒャッハー、オーガだ」


「囲め囲め」


「俺たちの小遣いになれー!」


 ところで、一時は女子の凄まじさに泣いていた男子たちだが、オーガが出てきた途端、目の色変えて戦闘モードに入った。


 現れたオーガは3体。

 しかしその周囲を、あっという間に男子たちが囲んでしまう。



「ハリケーンスラッシュ!」


「乱れ突き月下!」


「飛天流星拳!」


 好き好きに黒歴史技を繰り出して、オーガ3体を瞬殺した。



「ヨッシャー、銅貨3枚だー!」


 現金なもので、領地に帰ったらマーサ婆さんの冒険者ギルドに、オーガの魔石を持って行くのだろう。


 ぼったくられるのが分かっていても、あそこじゃないと換金してくれないからな。



 そんな男子たちには、ぜひとも頑張ってもらいたい。

 男子たちの懐が温まると同時に、マーサ婆さんと、俺の懐までヌクヌクになるからな。


 これはwin-winな関係なのだ。

 決して、搾取や略奪などと呼ばれる行いではない。




「いやー、皆すっかり強くなったな」


 そんな領地の子供たちの強さに、俺は満足だ。

 現金的な意味以外にも、日々の剣術ゴッコの成果が出て、皆強くなっている。



「おかしい。いくらモンスターの多い、アルセルク領に住んでるからって、普通の子供が出していい強さを超えている。

 これではベテラン冒険者並みの強さだ」


 俺の傍で、スティーブンが眉間に皺を寄せて、唸っている。



「いいことじゃないか。

 子供たちには、これからますます強くなってもらって、アルセルク領のために頑張ってほしいぞ」


「いや、俺が気にしているのはそういう事でなく……」


「フフフッ」


 スティーブンが何を気にしているのか知らないが、俺は気にしないぞ。




 それに、俺には最強の言い訳ができる。


「子供たちが強くなったのは、きっと竜神様の加護のおかげだ」


 そう、この世界の神である竜神様の加護のおかげで、子供たちは強くなってるのだ。

 そう言っておけば、万事問題なしだ。


 何しろ事実だからな。




 ところで、俺とスティーブンが話していると、後ろの方からモンスターの気配がした。


 俺は黄金竜だから、モンスターが隠れていても分かる。


 スティーブンも、領地で一番の強者なので、モンスターの気配に気づいている。



「あちゃー、子供たちはまだ気づかないか」


 ただ残念ながら、不老不死の薬効果でドーピングした子供たちは、警戒心が足りてないようだ。



「クレイ様も子供でしょうに」

「ハハハッ」


 スティーブンにジト目で見られたので、笑って誤魔化しておこう。


 俺の現在の目標は、普通の人間のふりをして100年くらい生きること。

 なので、あまりやりすぎるのは良くないな。




 さて、それより背後にいるモンスターだけど。


 スティーブンが腰に差している剣に手をかけようとしたが、それより先に、俺と手を繋いでいたリーリャが動いた。


 リーリャは風のように素早く動くと、背に背負っていた剣を抜く。



「私が双剣を抜いた時、生きている敵はいない」


 悲しむべきだろうか。

 領地の男子だけでなく、妹まで黒歴史に目覚めていた。


 リーリャが自分で考えた格好いいセリフを口にした時には、既に背中の鞘から抜き放った二刀の剣を、鞘に戻していた。


 そして俺たちの背後に隠れていた、5体のオークと1体のオーガが、真っ二つに切断されて倒れていく。



「うおおーっ、リーリャ様、スゲェ」


「さすが最強剣士リーリャ様!」


「やっぱ、クレイ様の妹だから、段違いに強いよなー」


 リーリャの強さは、子供たちの中でも別格。

 男子たちが、歓声を上げてはやし立てる。



 リーリャはそんな歓声を、まるで聞こえないと、涼しい顔をして受け流した。


 だけど、俺の傍に戻ってきて再び手をつなげば、その口元が微かににやけているのが見えた。


 クールぶりたいけど、隠し切っていない。



「よしよし、いい子だなリーリャ」


 その後褒めると、リーリャが顔を真っ赤にして、ニヘラと笑った。


 クールを装おうとしても、まだまだお子様だな。

 そんなところも可愛いけど。




「ムキー、あの女ばかりクレイ様とデレデレして。悔しい!」


 ところで、またしてもアイシャを始めとした女子たちが、妙なオーラを立ちのぼせだした。



 おっかねえ。

 俺は女子たちのことなど知らないぞ。

 何も見てない、何も知らない。

 女子(あっち)の方は、見ないようにしよう。




「ム、ムムッ。まさか俺より、リーリャ様の方が強いのでは?」


 一方、一瞬でリーリャがモンスターを倒したせいで、スティーブンがまたしても難しそうな顔になっていた。



「あんまり悩むと、将来禿げないか?」


 一応、忠告だけしておこう。

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