17 叙勲を受けよう
うだうだ考えたが、アルセルク騎士爵領の男子は俺しかいないので、俺が爵位を継がないといけない。
そもそもこの領地が嫌いではないので、爵位を継ぐのはいいだろう。
積極性に乏しい、消極寄りの賛成だが、そう結論付けた。
それに俺は人間であっても、同時に黄金竜だ。
「どうしてもここがイヤになったら、リーリャを担いで他国に逃げるか。
いざとなったら海を越えて、別の大陸に移住するのも手だな」
俺の感覚だと、ちょっとダッシュすれば世界一周できてしまう。
なので、この国以外で生きていく手がある。
リーリャを担いで走ると、リーリャの体がもたないだろうから、ゆっくり走らないとダメだろう。
それでも世界一周するのに、1週間もあればできると思う。
というわけで、俺は王都まで行って、爵位を継ぐことにした。
「王都まで、ひとっ走りしてくるか」
王都なんて、ダッシュですぐ。
今日行って、国王に叙勲を受けて、今日のうちに帰ってこれるな。
俺は家の外に出て、準備体操がてら屈伸し、それから走り……
「クレイ様」
「なんだよ、じいさん」
「じいさんでなく、ロイドとお呼びください」
ダッシュしようとしたら、使用人のじいさんに捕まってしまった。
ちなみに、じいさんは我が家の使用人をしているものの、万能執事セバスという名前ではない。
万能執事には程遠い能力しかないので、このじいさんがセバスという名を名乗っていいはずがなかった。
「王都で国王陛下に謁見となりますと、供回りが必要となります。
まさかとは思いますが、お一人で出向かれるなどと考えていたのではないでしょうな?」
「……ま、まっさかー」
「なぜ、目を逸らされるのです」
「……」
チッ、このジジイ、俺の考えを読んでやがる。
わざわざ供回りなんか連れていく必要ないだろう。
1日で行き来できる距離なのに、誰か連れて行くと、1日で帰ってこれないじゃないか。
「ここから王都までは、モンスターはびこるロカルト山系を超えなければならず、さらに山系の向こうでも、山賊や夜盗どもが出没するのです。
護衛すらつけず、幼いクレイ様が、お一人で旅に出るなど言語道断!
クレイ様の身に何かあれば、由緒あるアルセルク家の男子の血が絶えることになってしまうのですぞ!」
このじいさん、言ってることはもっともだが、俺個人の心配でなく、家の方を心配してるな。
とはいえ、俺ってまだ8歳だからな。
1人で王都に行っても、城で国王への取次ぎをしてもらえないという考えに思い至った。
何しろ相手は一国の王だ。
会うとなれば、城に仕える兵士に面会の取次ぎを頼まなければならず、いきなり子供が出て行っても、変なガキ扱いされて追い払われるのがオチだろう。
俺の内部では、日本人の俺が、
『そんなの当たり前だろうが!』
と、突っ込んでくる。
一方、黄金竜の俺の方は、
『国王に会いたいなら、城の壁ぶち破って直接会いに行けばいいじゃない。
私は用がある時はいつもそうしてたわよ』
とのことだ。
「城の壁をぶち破ろうかな?」
黄金竜の超単純明快なやり方に、ちょっとだけ心惹かれてしまった。
「クレイ様?」
「あ、いや、何でもない。ただの独り言だから気にするな」
いけないいけない。
心に思っていたことが、つい口から出ていた。
ロイドじいさんから変な目で見られてしまうが、俺はコホンと咳払いして誤魔化した。
「分かった。分かったから、供回りをつけて、大人しく普通に王都に行く。それでいいな」
「普通も何も、貴族であれば当然のことです!
それにクレイ様は、まだ子供なのですぞ!」
「あ、はい……」
じいさんに常識を説かれてしまい、俺はぐうの音も出せなくなってしまった。




