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15 黄金竜と日本人と俺

「ヒックヒック、グスグス……」



 暗い闇の中、俺は涙と鼻水を流して泣いていた。


 まるで小さな子供に帰ってしまったように、無力感に苛まれて泣いている。




 そんな俺の傍に、1人の男がやってきた。


「すまんが、俺はここにいてやるくらいしかできないぞ、クレイ。

 俺は実の父親とはあまり仲が良くなくてな。

 親父が死んだのを見届けはしたが、葬式の時に泣いたくらいで、あとはあまり悲しいとか、そういう感情を持つこともなかった。

 だから、お前みたいに家族を失っても、あまり泣けない酷い男なんだ」


 そう口にする男は、俺の前世であり記憶と魂の半分だ。



 そして俺たちの傍に、巨大な黄金の竜もやってくる。


 竜は俺たちの傍で巨大な体を丸め、地面に座り込む。

 黄金色の瞳が一瞬俺の顔を映し出したが、一瞥しただけで、すぐに興味なさそうに目を閉じる。


「お前、クレイの両親が死んだってのに、なんでそんなに無関心なんだよ。

 この世界の神とか呼ばれてるくせに、血も涙もないのかよ!」


 黄金竜のそっけない態度に、日本人の俺が反発した。



 そんな日本人の俺の言葉が気に障ったのか、黄金竜がわずかに瞼を持ち上げて、日本人の俺を見る。


「グルルルッ」


 口から出てくるのは竜の言葉。



 だが、(クレイ)にも、日本人である俺にも、その意味は分かる。


 俺たち3人は、奇妙な形で魂が溶け合って繋がっているから、意味を理解できた。



「っ、弱いから死んだだけだと!

 お前って、本当に性格真っ黒の性悪ドラゴンだな!

 神は神でも、絶対に邪神の眷属だろ」


 黄金竜の言葉の意味に、日本人の俺は強く怒鳴る。



 ああ、だけど困った。

 日本人の俺はひどく反感を覚えるのに、2人の記憶と魂を受け継ぐ俺は、黄金竜の言いたい言葉の意味も、よく理解できてしまう。



「そうだな、弱いと生きていけないよな。体だけでなく、心も」


「グルルルッ」


 そんな俺を勇気づけるように、黄金竜が声を出す。



「えっ、ちょっと待て。

 どうして今ので、お前たち通じ合ってるんだ。おかしいだろ?

 俺には全然意味が分からないぞ!」


 (クレイ)は黄金竜の言うことが分かったけど、日本人の俺にはダメだったようだ。

 価値観が違い過ぎるせいで、黄金竜と日本人の俺は、意見が噛み合わない。



 でも、俺には通じているからいいのだ。


「ありがとう、黄金竜(オレ)のおかげで、元気が出てきた」


「グルルッ」


「はいいっ?

 どうして2人だけで、いい空気を出してるの?俺、訳が分かんない。

 普通両親が死んだら、もっと悲しんだり苦しんだりして、それで慰められたりして……。

 いや、親父相手にそんな風にならなかった俺も、人のこと言えないけど」


 日本人の俺は、微妙な空気を出して、続きを言えなくなってしまった。




△ ◇ △ ◇ △ ◇ △ ◇




「変な夢だったな」


 目を開けると、俺は家のベッドで眠っていた。


 今の俺はクレイという人格を持っていて、これは黄金竜とも日本人の俺とも、違う人格だ。

 俺の中には1柱と1人の記憶と魂があるが、そんな彼らとは異なる個性を持った人間が俺だ。



 そんな俺は、普通の人間として過ごしたいと思っている。

 でも、体は生まれた時から黄金竜の力を持っているので、普通の人間としては生きられない。


 なので正確には、普通の人間のふりをして過ごしたい。


 それが、(クレイ)が目標にしている生き方だ。




 さあ、今日という日が始まって、窓からは朝日が差し込んでいる。

 今日も人間らしく生きていくために、頑張ろう。


 まずは、棒切れの剣を振っても山が吹き飛んだりしない程度に、人間みたいに弱く戦えるようになることが、直近の目的だ。

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