19 デレとデレー5
「遅いなぁ…」
週末。待ち合わせ場所の公園で立ち尽くす。しかし予定時刻を過ぎても相手の姿が見えない。暇でやる事も無いのでブランコに乗る事にした。
「ほっ」
勢いが少しずつ増していく。軽く遊ぶ程度のつもりが予想外に大ハマり。
「……何してんの、アンタ」
「あ、智沙」
しばらくすると近くに人が接近。待ち合わせ相手のご到着だった。
「遅いよ。10分以上も遅刻してるじゃないか」
「ごめんごめん、道に迷っちゃって」
「なんで地元で迷うのさ。どうせ夜更かしして寝坊でもしたんでしょ?」
「うるせぇ、黙れ!」
「ご、ごめんなさい…」
彼女が隣のブランコに腰掛ける。高校生が2人して遊具を占拠するという事態になった。
「どうしていつも呼び出す時はこの公園なのよ。特別な思い出でもあるの?」
「時々ここに来たくなるんだよ。懐かしさを味わいたくなるっていうか」
「へぇ。けどアタシはこの公園あんまり利用してなかったからその気持ち分かんない」
「小学校は別々だったもんね。うちの学校の生徒はよくここ来て遊んでたよ」
「はいはい、でもそんな思い出話をしにわざわざ呼び出した訳じゃないんでしょ?」
「……まぁ、うん」
ここに来る前にイメージトレーニングはしてきた。しかしいざ喋ろうとすると何も出てこない。
「え~と、その…」
内容が内容なので仕方ないだろう。言いあぐねていると友人が救いの手を差し伸べてきた。
「今度は華恋の事? 違う?」
「な、なんで分かったの?」
「アタシ、エスパーだから。雅人が何を考えてるのかお見通しなのよ」
「ひぇーーっ!!」
いきなり核心に迫る発言をぶつけられる。覚悟が決まってなかったせいか動揺してしまった。
「さっさと用件を言いなさい。大体の予想はついてるけど」
「その……華恋に告白された」
「ふ~ん、やっぱりね」
「バレてたか…」
「……ん?」
彼女の動きが一瞬停止。直後にブランコから下りて立ち上がった。
「アンタ、今なんて言った?」
「え? バレてたかって」
「違う、その前!」
「華恋に告白されたって事?」
「え、えぇーーっ!?」
数秒前に自分が行ったリアクションと同じ物が返ってくる。後ろに仰け反るオーバーな動作が。
「何々、そんなにおかしいかな?」
「だ、だって…」
今度は口をパクパクさせ始めた。餌を欲しがる鯉のように。
「雅人の方から告るかと思ってたのよ。だからどうやって気持ちを打ち明けたら良いかを相談しに来たのかと想像してたのに」
「そういう事か。でも残念ながらハズレ」
「嘘だぁ…」
「そこまで落ち込むような事かな? へこみすぎでしょ」
どうやら想定と違っていた事がショックだったらしい。少しだけ失礼な反応だった。
「でもそれの何が困る事なのよ。好きって言われて嬉しくないの?」
「嬉しいよ。そりゃあね」
「だったら…」
「父さん達にバレるのが怖いんだよ。もし知られてしまったら何て言われるか」
「あぁ、確かに同じ家に住んでる子に手を出しちゃマズいわよね」
「でしょ?」
激しい叱責を受けるかもしれない。両親だけでなく華恋の母親からも。
「隠してるのが恥ずかしいなら正直に言っちゃいなさいよ。それしかないって」
「華恋と同じこと言うんだね。智沙も」
「え? あの子は暴露する気でいるの?」
「黙ってるのが嫌なら皆にバラしちゃった方がマシ~とか何とか」
「あはは、アンタより男らしいじゃない。度胸あるわね」
「もしかしたら性別が逆だったんじゃないかと思えてくるよ」
自分は女々しくて華恋は勇ましい。本当に神様が器を間違えたのではないかと考えたくなる組み合わせだった。
「とりあえず今夜、雅人の家に行けば修羅場が拝めるわけか」
「ど、どういう事?」
「うふふ、ゾクゾクしてくるわぁ」
「絶対楽しんでるでしょ。人事だと思って」
「うん」
「……はぁ」
問い掛けに対して屈託のない返事が返ってくる。悪気があるのか無いかの判断が難しい表情が。
「おじさんとおばさんには何て言うの? 華恋をくださいって?」
「それ変じゃない? なぜ自分の親にそんな挨拶しなくちゃいけないのさ」
「しっかしアンタも難儀よねぇ。彼女作るのに親に承諾もらわないといけないなんて」
「僕は別に華恋と付き合えなくても構わないのに……どうしてこんな事になっちゃったんだろう」
もし家族に打ち明けたら隣にいる人物の言う通りの状況になってしまうのだろうか。なるべくならその展開は避けたい。けれど修羅場は違った形で訪れる事になった。




