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19 デレとデレー2

「雅人」


「え? 君、誰?」


「ふざけんなっ! 俺だよ、俺!」


 休み時間に椅子に座っていると声をかけられる。額に肉と書かれた颯太に。


「今日ゲーセン行かない?」


「ごめん。放課後は用事があるからちょっと…」


「用事って何だよ? 女の子とデートか」


「違うってば。どうしても外せない私用があるんだよ」


「俺に話せない事か。これは怪しい」


「えぇ…」


 妙な疑いをかけられてしまった。当たっているような外れているような疑惑を。


「華恋さんとデート?」


「違う違う」


「なら俺とデート?」


「どういう意味?」


「まぁ、いいや。お前を尾行すれば全てが分かるもんな」


「そんな…」


 今だけは恨めしい。彼の敏感なアンテナが。




「華恋、ちょっと」


「ん?」


 次の休み時間に彼女に声をかける。椅子に座っていたので手招きで廊下へと呼び出した。


「何? どうしたの?」


「あの……やっぱり今日は別々に帰らない?」


「はぁっ!? どうしてよ!」


 率直に用件を告げる。直後に険しすぎる表情が返ってきた。


「そ、そんなに怒らなくても。違う用事が出来ちゃったんだって」


「用事? まさか女の子とデートか!?」


「ぐわっ!?」


 続けて胸倉を掴んでくる。凄まじいパワーで。


「違うって。颯太にゲーセン行かないかって誘われたの」


「ゲーセン? んなもん断りなさい。私のが先約でしょうが」


「それがそうもいかないんだよ。用事があるって断ろうとしたら、怪しんだ颯太が僕の行動を監視するとか言い出してさ」


「……鬱陶しい奴」


「だから今日は諦めてくれ。また明日時間作るから」


「え~」


 下手に誘いを断っても怪しまれてしまう。ここは友人に付き合ってあげるのがベストだろう。周りの人間達に妙な関係性を知られるのは勘弁だった。




「あぁーーっ!?」


 放課後になると颯太と共に教室を出る。そして靴に履き替えようとした時に彼が唐突に発狂した。


「ちょっ……いきなりどうしたのさ」


「こ、これ…」


「何それ?」


「手紙が入ってた」


「え、えぇーーっ!?」


 その視線の先には履き物以外の物が存在していた。シンプルな白い封筒が。


『ずっとアナタの事を想っていました。とても大事な話があります。放課後に屋上まで来てください』


 2人して急いで中身を確認する。便箋には丁寧な文字が記されていた。


「うおおぉぉぉっ!」


「う、嘘…」


「ついに俺にも春がキターーッ!」


「でもこれ名前書いてないよ。イタズラじゃない?」


「きっと恥ずかしくて書けなかったんだよ。ウブな子だなぁ」


「どうするの? 行くの?」


「あったり前じゃん。拒む理由なんかどこにもないだろ?」


「そりゃまぁ…」


 もし自分が彼の立場でもそうするだろう。差出人が気になって仕方ない。


「なら早速行ってくるわ。相手の子を待たせても悪いし」


「ま、待って。確か屋上って立ち入り禁止じゃなかったっけ?」


「そういやそうだな…」


「やっぱり怪しいよ。やめておいたら?」


「いや、行く! 行って確かめないと俺の気が済まない!」


「え? ちょっ…」


 しかし忠告も聞かず友人は走り出してしまった。陸上部を彷彿とさせる全力ダッシュで。


「……行っちゃった」


 もしかしたら新手のカツアゲかもしれない。嫌な予感が脳裏をよぎった。


「あ、華恋」


「上手くいったか。んじゃ、帰るわよ」


「へ?」


 立ち去る友人の背中を見つめていると1人の人間が近付いて来る。クラスメートでもあり同居人でもある女子生徒が。


「待って待って。まだ靴履いてないんだから」


「何やってんのよ、トロくさいわね。さっさとしなさい。あのバカが戻って来ちゃうでしょうが」


「そう急かされても…」


 彼女に腕を掴まれながら移動。パートナーを入れ替えて校外へと出た。


「そろそろ手離さない? 歩きにくいんだけど」


「離したらアンタ逃げるかもしんないでしょうが」


「に、逃げないって。信用してくれよ」


「ん~、この辺りまで来たら大丈夫かな」


 校門を抜けると見慣れない場所までやって来る。団地やアパートが並んだ住宅街に。


「じゃあどこ行く? 行きたい場所決めて良いわよ」


「ど、どこって……家に帰るんじゃないの?」


「私、今日バイト休みなのよ。せっかくだから2人でどこか遊びに行こ」


「……だから駅と違う方向に来たのか」


 どうやら寄り道したいらしい。消滅したと思っていた予定が復活した。

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