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11 頼まれ事と頼み事ー5

 それから皆と少しずつ連絡を取り合い予定を決める事に。とりあえず土曜日に地元の駅で集合する事で決定。授業中も休み時間も颯太がずっとウキウキしていたが、この約束を心待ちにしていた人物がもう1人いた。


「あ~、いよいよ明日かぁ」


「なんだかんだ言って楽しみにしてない?」


「は、はぁ? んな訳ないでしょ。何言ってんのよ」


 前夜に外出の為の打ち合わせを行う。家族が寝静まったタイミングで。


「11時に駅に集合って事になった」


「ん、了解」


「まぁ相手が颯太と智沙だから少しぐらい遅刻しても構わないよ」


「はぁ? 何すっとぼけたこと言ってんのよ。待たせたら悪いから時間より早く行くに決まってんでしょうが!」


「……はい」


 何故かお叱りの声が飛んできた。最初に誘った時はあれほど嫌がっていたというのに。


「でもどうするのさ。華恋の趣味バレちゃうかもよ?」


「そこは何とかごまかす」


「テンション上げまくらなきゃ良いけど」


「あの2人にならオタクだとバレても構わないわ。恐らく人に話したりしないと思うし」


「そうかも…」


 颯太自身もオタクだし、智沙は口が堅い。本人から2人に口止めしておけば大丈夫だろう。


 翌日は目覚ましをセットしておいた午前9時に起床。朝食代わりのお茶漬けを食べると華恋と2人で家を出た。


「ふぁ~あ……眠たい」


「だっらしないわねぇ。シャキッとしなさいよ、シャキッと」


「だって昨夜寝たの深夜3時だよ? 寝不足なんだってば」


 勉強の息抜きに買ったばかりのゲームをプレイ。気がつけば時間を忘れて夢中になっていた。


「アンタが夜更かししてたのが悪いんじゃない。私だって眠たいんだから我慢しなさいよ」


「そういや深夜アニメとかどうやって見てるの?」


「スマホで動画サイト漁ってる」


「あ、なるほど」


 布団に潜りながら鑑賞しているらしい。その姿を想像すると何故だか泣けてきた。


「お~い」


「あ、颯太だ」


 その後のんびり歩いて駅へとやって来る。到着すると大きく手を振っている友人の姿を発見。


「うわぁ、あんな大声出して恥ずかしい奴」


「それ本人の前で絶対言わないでよ」


「分かってるっての。こっからは大人しくしてるからさ」


 彼女が小さく咳払い。その表情は自然な笑顔に変化していた。


「うぃっす」


「え? 君、誰?」


「ふざけんなっ! 俺だよ、俺!」


「来るの早かったね。絶対寝坊すると思ってたのに」


「ははは、遅刻しないように昨日の昼から待ってたんだぜ」


「……大人気のゲームでも買うつもりなの?」


 今日の約束が相当楽しみだったのだろう。普段からその心掛けを大切にすれば良いのに。


 それから5分ほど経過した後に智沙も登場。互いにうやうやしい挨拶を交わす。ただいつも教室で顔を合わせているせいか場に流れる空気の中に緊張感はほとんど存在していなかった。


「華恋さんの私服、初めて見たかも。可愛い~」


「いや、そんな事ないですよ。智沙さんの方が可愛いと思います」


「いやぁ、アタシなんか全然。女っ気がないってよく言われるし」


「私は好きですよ。智沙さんの私服」


「ありがと~」


 乗り込んだ電車の中で女子2人が会話を交わしている。お世辞合戦にも思えるやり取りを。


「なぁなぁ、君達ってそんなに仲良かったっけ?」


「何言ってんのよ、毎朝一緒に学校に通う仲よ。ね~?」


「そうですね」


「あ、あの! 俺も下の名前で呼んで良いっすか?」


「へ?」


「お願いします。俺も華恋さんって呼んでみたいです」


 そんな渦中に颯太が乱入。積極的な提案を持ちかけた。


「ど、どうぞ…」


「本当ですか!? やった」


「あはは…」


「華恋さんも俺の事は下の名前で呼んでくれて良いですからね」


「……わかりました」


 どうも彼女は颯太を苦手としているらしい。智沙と会話する時に比べて明らかに口数が減少気味。


 その後も転校生の話題を中心に大盛り上がり。電車に揺られながら目的地へとやって来た。


「着いたけど、どうしよう」


「どうしようって?」


「もう昼じゃん。腹減らない?」


「あぁ、そういえば」


 腹拵えするなら早めの方が良い。正午頃になればどこの店も混雑してしまうから。


「じゃあ先に何か食べましょうよ。動くのはそれからって事で」


「そだな。なら適当にどっかのスーパー入ろうぜ」


「え? 自炊?」


 近くにあったハンバーガーショップに皆で入店。行列が出来ていたが回転が早いのですぐに注文する事が出来た。ただ4人で座れそうな席が空いてなかったので2組に別れる事に。


「おい、なんでアイツが華恋さんとなんだよ!」


「そりゃ、やっぱり女の子同士の方が落ち着くからじゃないかな」


「くそっ!」


 颯太がハンバーガーにかぶりつきながら不満を漏らす。彼が華恋と一緒になろうとしていたのだが、それより先に智沙が連れていってしまったのだ。


「空気読めよ、暴力女が!」


「あっはは…」


 多分だけど彼女は颯太の気持ちを知った上で邪魔しているのだろう。目的は不明だが。


「あれ? 俺のハンバーガー、中に肉が入ってないぞ」


「え? 嘘?」


「マジだって。レタスやチーズも」


「そんな…」


「そういやパンも入ってなかったわ。どうなってるんだよ、これ」


「……今まで何食べてたの」


 適当に会話しながら食事を進める。食べ終えると目的の店へと向かった。

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