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10 利子と利息ー1

「はい、持ってきたよ」


「ん。ありがと」


 病院のロビーで母親と対面する。持参してきたバッグを渡しながら。


「1人分で良かったの?」


「母さんは今日仕事終わったら帰るから。お父さんだけ泊まりになっちゃったのよ」


「ふ~ん。頑張るのもほどほどにって伝えておいて」


「はいはい」


 父親が泊まりがけで仕事をする事になったらしい。その為に必要な着替えの運び役としてこの場に訪問していた。


「家の様子はどう? ちゃんとご飯食べてる?」


「うん。華恋さんが作ってくれるから」


「そう。あの子に任せっきりにしないでアンタ達もいろいろ助けてあげてね」


「ほ~い」


 仕事に戻らなくてはならない為、母親と別れ病院を後に。用もないので真っ直ぐ自宅に帰る事にした。


「ほっ」


 駅にやって来て地元を目指す。下りだからか休日とは思えない程にガラガラの車両に揺られて。


「ふぁ~あ…」


 早起きしたものだから眠たい。つい大きな欠伸を出してしまった。


「どうしてるかな…」


 窓の外を見ながら自宅にいる2人の姿を思い浮かべる。元々は他人だった間柄の女の子達を。


「香織は寝てるだろうなぁ…」


 彼女は昔からそうだった。外出予定がある時でも寝坊。酷い時は昼過ぎになっても部屋から出てこない。それは共同生活を始めた頃からの習慣だった。


「……もうそんなに経つのか」


 時の流れは本当に早い。両親が再婚してから既に3年以上が経過。考え事をするように思い出を振り返る。意識を子供の頃へと飛ばした。


「ん…」


 小学生の頃はずっと孤独。引っ込み思案な性格が原因であまり友達もおらず、家でも学校でも1人きり。


 夕御飯中もいつも話し相手がいなかった。お腹が空いたら父親が作ってくれたおにぎりを口に入れてお終い。


 高学年になる頃にはインスタントラーメンを作ったり、コンビニやスーパーに買い出しに出掛けたり。1人暮らしの大学生のような生活を送っていた。


 家族と呼べる存在は父親だけ。両親は自分が物心つく前に離婚。だから母親と呼べる人はずっと存在していなかった。


 そして中学に入ると少しずつ周りの環境も変化。クラスに仲の良い友達ができ、放課後には彼らの家に遊びに行くようになった。


 その時に出会ったのが今も親しい2人。颯太は1年生の時で、智沙は更にその翌年の2年生になった時。


 男の颯太はともかく、女子の智沙と友達になれた事は何度思い返しても疑問でしかない。だが自分にとって最大の環境の変化と言えば父親の再婚だった。

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