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エピローグー8

「え~と、下着下着…」


 宴会をお開きにした後は持参してきたバッグの中身を漁る。入浴に必要な衣類を取り出す為に。


「シャンプーやリンスはもう置いてあるよん」


「サンキュー。じゃあ悪いけど一番風呂はいただいた」


「ん。いてら~」


 着替えとタオルを持ってバスルームに移動。シャツを脱いで中に入った。


「はぁ……癒される」


 湯船に浸かって愉悦を実感する。綺麗な壁や天井を見つめながら。


「入るよ~」


「うん……って、え?」


 リラックスしている意識の中に人の声が侵入。それは不穏な内容の台詞だった。


「ヤッホ~」


「ちょっ……どうして入って来てるの!?」


「だって私、この家の家主じゃない」


「いや、そうじゃなくてさ…」


「もう体洗った? なら私も洗っちゃおっかなぁ」


「いやいやいやいや…」


 体にバスタオルを巻いた華恋が突撃してくる。あっけらかんとした様子で。


「フンフフ~ン」


「ぐっ…」


 ご機嫌なのかシャワーを浴びながら鼻歌を歌い出す始末。目のやり場に困るので反対側にある壁の方に体の向きを変えた。


「あの、先に出るね…」


「え? なんでよ」


 そしてタイミングを見計らって立ち上がる。大事な部分を隠しながらそそくさと撤退開始した。


「逃がさな~い!」


「うわっ!?」


 だがドアノブに触れた瞬間に後ろから抱き付かれてしまう。腕ごと拘束する形で。


「ちょっ、離し…」


「せっかく2人きりになったんだから良いじゃん。初めての混浴って事で」


「ムリムリムリ、勘弁してぇっ!」


「……あ?」


「ん?」


 喚きながらの全力で抵抗。パニックに陥っていると体に巻きつけていた腕の力がスッと抜けた。


「やっべ、タオル外れちゃってた」


「うわあぁあぁぁぁっ!!」


 互いの体が完全に分離する。その隙に慌てて風呂場から脱出した。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」


 扉を閉めるのと同時に倒れ込む。バスマットの上に。


「アホなのか…」


 まさか入浴中に特攻を仕掛けてくるなんて。いくらタオルで体を隠していたとはいえ全裸に近い状態。正常でいられるわけがなかった。




「まったく。さっきみたいな真似はやめてくれよ!」


「あはは、ごめんごめん」


 風呂上がり後は妹へ説教をする。父親にでもなった気分で。


「……っとに。相変わらず後先考えずに行動するんだから」


「だって片付けで汗かいてたから早くシャワー浴びたかったんだもん」


「ならそう言ってくれたら良かったのに。僕が華恋の後から入れば済んだ話なんだからさ」


「でもそしたら雅人と一緒に入れなかったじゃん。私は2人で仲良く入りたかったの!」


「結局、それですか」


 本音はただ単に欲求を抑えきれなかっただけ。淫乱な性格は今もまだ健在だった。


「お兄ちゃ~ん」


「うわっ!?」


 ドライヤーで髪を乾かしていると背後に回った華恋が勢い良く抱きついてくる。先程の続きでもするかのように。


「大しゅき~、大しゅき~」


「ちょっ……重たいって!」


「抱っこ抱っこ~、おんぶ~」


「無理だよ、こんな体勢から。離れて」


 ムダだとは悟りながらも必死に抵抗。同時に背中に当たる違和感に気付いた。


「……あの、1つ聞いてもいい?」


「ん? 何?」


「もしかして……ブラ着けてない?」


「ピンポーン、正解~」


「ひええぇぇっ!?」


 慌ててその場から立ち上がる。ピンクのTシャツを身に纏っている対戦相手を突き放しながら。


「ど、どどどどどうしてノーブラなのさ!」


「だって着けてると窮屈なんだもん。胸が圧迫される感じで苦しいし」


「だからって僕がいる時にそんな真似しなくても…」


「雅人といる時だからそういう事が出来るんじゃん。他の人といる時だったら恥ずかしくて出来ないよ」


「いやいや、兄妹でもそういう部分を気を付けようって…」


 テンションが異様に高い。お酒のせいか素面なのかは分からないが。


「とりあえず着けよう。せめて寝るまでの間だけでもさ」


「え~、面倒くさい~」


「ワガママ言わずに。ほら、早く」


「ちぇっ……仕方ないなぁ」


 行動を指示した。半ば強制的に。


「よいしょっ……と」


「うわあぁあぁぁっ!?」


「ん? 何?」


「こ、こんな所で着替えないでくれよぉ!」


 隣の部屋を指差すが彼女はその場で脱衣を開始。見てはいけない物が見えてしまった。

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