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8 自白と暴露ー5

「こんにちは」


「こ、こんにちは…」


 それから週をまたいで再び小田桐さんと昼食を共にする事に。今度は避ける事なく学食に向かった。


「今日もまた1人なんですね。たまたまですか?」


「そうですよ、たまたま1人なんです。ていうかアナタだっていつも1人じゃないですか」


「あ、そう言われたらそうですね。じゃあ、お互いにたまたまが毎日続いているという事で」


「ういっす」


 彼女が手に持っていたのは以前に好きと公言していた回鍋肉定食。人気メニューらしく周りにいる人達も結構な頻度で注文していた。


「なんですか? 私の顔に何か付いてますか?」


「い、いや…」


「欲しいって言われてもあげませんよ。私、これ大好きなんですから」


「……別にいらないです」


 視界を遮断するように腕で食器を隠されてしまう。威圧感な表情も付け加えて。


「赤井くんはカレー好きなんですか?」


「まぁ。大好物です」


「やっぱり! 昨日も食べてましたもんね」


「うん......舌が子供っぽいとは家族に言われてるけど」


「子供っぽいぞ」


「......いや、小田桐さんは家族じゃないでしょ」


「ふふふ」


 場には和やかな空気が存在。探り合いをするギスギスした雰囲気は失われていた。


 翌日もその翌日もこんな感じで小田桐さんと過ごす事に。昼だけではなく下校時にも並んで行動。さすがに先週のようにバイト終了まで店に居座るというような事はなかったが、店先まで見送ってくれたり。


 今までに経験した事のない行為。その興奮が自制心に歯止めをかけられないでいた。そして何より彼女の秘密を知りたいと強く思っていた。


「んっ…」


 だが精神の強くない人間が罪悪感に耐えられるハズもなく。興味の気持ちは良心の呵責にアッサリと押し潰されてしまった。




「あ、あの……これからは一緒に帰ったりするのやめませんか?」


「はい? 急にどうしたんですか?」


 バイトが無い日の帰り道。振り絞った声で小田桐さんに話しかける。住宅街にある人通りの少ない路地裏で。


「毎日教室や下駄箱で待っていてくれてるのは嬉しいんですけど、もう一緒には帰れません」


「……それは何故でしょう」


「あとお昼もなるべくなら別々で。今度からはクラスの友達と食べる事にしますから」


「そうですか…」


「きゅ、急にこんな事を言い出してごめんなさい。でもやっぱりダメなんです。これ以上は迷惑がかかるっていうか…」


 仮に華恋と別れて別の人と付き合うにしても清算してからにするべき。うやむやのままで他の女性と仲良くするなんて絶対に良くなかった。


「迷惑? 誰にですか?」


「だからアナタや七瀬さんに…」


「別に私は迷惑だなんて感じていませんよ。七瀬だって私と同じ立場ならそう言うハズです」


「と、とにかくこれ以上はダメなんです。もうこれ以上は…」


「妹さんからの指示ですか?」


「へ?」


 言い訳を考えている最中に小田桐さんの口調が豹変する。表情も険しい物へと変化した。


「そうなんじゃないんですか? 双子の妹さんにそうやって言うように命令されたんですよね?」


「ど、どうして妹の話が出てくるんですか。アイツは関係ないですよ」


「関係ない事ないです。私、アナタの妹に昨日言われました」


「え?」


 空気が気まずい。話し合いはすんなり終わりとはいかなかった。


「バイト先で赤井くんと別れた後の事です。自分の兄は付き合ってる人がいるから諦めてくれって」


「華恋が…」


「最初は意味が分かりませんでした。この人は何を言ってるんだろうって。妹さんはそれだけ言うとすぐに立ち去っていきました」


「それは……すいませんでした」


「でも変ですよね? 赤井くんはお付き合いしてる方なんかいないと言ってたのに。妹さんの発言とアナタの発言が矛盾しています」


「……あ」


 迂闊だった。まさか2人が接触を図っていたなんて。注意しておかなくてならなかったのは目の前にいる同級生ではなく華恋の方だったのかもしれない。


「逆なら分かるんですよ。赤井くんが恋人いる事を家族に隠してるのなら。でも妹さんが知ってる事実をわざわざ私に対して誤魔化す意味が分かりません」


「確かに…」


「どういう事なんです? 聞かせてもらっても良いですか?」


「そ、それは…」


「隠れてないで出てきたらどうですか? 今日もまた私達の後を尾けてきてるんですよね」


「え?」


 対話相手が視線の向きを変える。自分が立っている場所よりも更に奥へと。


「か、華恋っ!」


 そこには制服を着た女子高生が存在。紛れもなく教室で別れたハズのクラスメートだった。

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