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8 自白と暴露ー1

「う~ん…」


 帰宅すると部屋の椅子に座って唸る。2枚の便箋を前に。


「どうしよう、これ…」


 まさか本当に女子からのラブレターだったなんて。メッセージでハッキリ断っても良いのだけれど自分の連絡先を知られたくない。


 とはいえこちらから接触しなくても小田桐という子が近付いて来るのは確定していた。彼女は何かしらを疑っている様子だったから。


「……むぅ」


 華恋に相談したい所だがまた適当にあしらわれそうな気もする。そうじゃないにしても暴走して小田桐さんや七瀬さんに秘密をブチ巻けてしまう可能性が高い。


 ならやはり黙っていた方が良いのだろう。不発弾を抱えたまま行動するのは勘弁だった。


「え?」


 便箋を封筒の中に仕舞っていると何かが聞こえてくる。ドアをノックする音が。


「だ、誰!?」


「私。お母さんがご飯いらないのかって」


「あぁ、食べる食べる。すぐ行くよ」


「ほ~い」


 僅かに生まれた隙間から香織が登場。返事をすると彼女はすぐに引き返してしまった。


「……ビックリした」


 どうやら華恋ではなかったらしい。ピンチをスレスレで切り抜けられた状況に一安心。


「あ~あ…」


 彼女には手紙の内容を知られている。だから今更見られた所で何も変わらない。


 それでもこの話題に触れてほしくなかった。やましい事をしている自覚があるからか、それとも別の理由が原因なのかは不明だが。


「はぁ…」


 改めて面倒くさい相手を好きになってしまった現実を実感。普通の恋愛が出来たらこんな事で悩まなくても済むハズだった。




「あ、いたいた。また隣いいですか?」


「……どうぞ」


 翌日に1人で学食で過ごしていると声をかけられる。湯気の立つうどんをトレイに乗せた小田桐さんに。


「赤井くんはいつもお昼は1人なんですか?」


「え? いや、今日はたまたま1人で…」


「そうなんですか。ならそのたまたまが2日も続いてしまったというわけですか」


「て、ていうかここにあまり来ないんだよ。いつもはお弁当食べてるから」


「へぇ、お弁当ですか。羨ましいです。私はいつも学食か購買を利用しているので憧れますね」


 彼女の話に返事をしながらも箸の動きは止めない。一刻も早くこの場から立ち去りたかった。


「お弁当はお母さんに作ってもらってるんですか?」


「まぁ……あと妹とか」


「あ、妹いるんですね。いくつの子なんですか?」


「1個下。この学校に通ってるんだよ」


「ふ~ん」


 華恋の事は黙っておいた方が良い気がする。存在自体を知られないに越した事はないので。


「私は兄弟がいないから羨ましいです。やっぱり1人っ子に憧れたりするものなんですか?」


「どうかな。うち、親の再婚で兄妹になったから」


「え? なら義理の妹さんなんですか?」


「うぃっす」


 平常心を保っているように装っているが気分は焦り気味。隠し事を探られているようで居心地が悪かった。


「げっ!?」


 白米を噛み締めていると視界の中に見知った人物を捉える。トレイを持ってこちらを凝視している智沙を。


「やば…」


 からかわれるかもしれない。だが突撃してくると思われた彼女は不適な笑みを浮かべて別の席に座ってしまった。


「どうかしましたか?」


「……何でもないです」


 確実にこの状況を疑われている。隣同士で食事なんて知り合い以外に有り得ないから。


「ご、ごちそうさまっ!」


「え……食べるの早くないですか?」


「ちょっと用事があって」


「あの、まだ話が…」


「そ、それじゃあ!」


 食事ペースを上げてカレーが入った食器の中身を空に。呼び止められたが強引に打ち切って食堂を飛び出した。


「ふうぅ…」


 額から流れる汗を拭う。人口密度が著しく減った廊下で。


 さすがにこの接触は偶然ではないだろう。友達を連れて来ていないのも恐らく2人きりで会話をする為だ。

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