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6 抑止と峻拒ー5

「学校どう? クラスに慣れた?」


「ん~、どうだろね」


 散歩気分で校内を歩く。人があまりいない過疎地を。


「友達出来た? 仲良くしてくれる子作れた?」


「で、出来たり出来なかったり…」


「どっちなのさ?」


 恐らく作れていないのだろう。もし本当にいるならごまかす意味が無いから。


「だって仕方ないじゃん。先生もクラスメートも『何でこの時期に転校してくんの?』みたいな目で見てくるんだもん」


「そうだね。せめて一学期からなら良かったのに」


「卒業アルバムの写真撮るから~とか言われても私には何の思い出もない教室ばっかだしさ。泣きたくなるわ」


「あははは、そりゃそうだ」


「早くも学校行きたくなくなったんですけど。どうしたら良いと思う?」


「中学生になったら環境も変わるから一応は行っておいた方が良いよ。あと半年の辛抱さ」


 人の少ない校舎裏を歩行。お店が並んでいないので静かだった。


「雅人くんは友達たくさんいるの?」


「……昔はあんまりいなかったかな。少なくともすみれぐらいの歳の頃は心の底から信頼出来るクラスメートはいなかったよ」


「へぇ、そうなんだ」


 友達の存在意義について考えた事がある。会話していて楽しい人なのか。それとも一緒に遊ぶ為の人なのかと。


 皆が持っているゲームを自分も買ったら友達なんだと思っていた。仲間外れにされたくないから周りに同調。


 本能を押し殺して生きるのが楽しくないと分かっている。ただ空気を読まないと変わり者扱いされてしまうのも事実だった。


「なら私も中学生になったら友達作れるのかな?」


「出来るさ。そう思ってないとやってられないよ」


「ちょっと見てみたいかな。小学生だった時の雅人くん」


「タイムマシン作って見てきなよ。誰かさんより真面目な子供だったから」


「うっわ、酷。これでも私、前の学校では無遅刻無欠席の優等生だったんだよ」


「前の学校では友達いたの?」


「いたよ。男子にも何人かね」


「そっか…」


 転校というのは子供にとって辛い出来事のハズ。今まで形成してきた世界観を全て投げ捨てないといけないのだから。


「あれ?」


 目的もなく歩いていると見知った人物を発見。同じクラスに在籍している男子生徒を見つけた。


「よう。赤井くんも来てたんだ」


「うん、友達とね。鬼頭くんも誰かに招待状貰ったの?」


「中学の時の知り合いに。後輩と一緒に遊びに来たんだよ」


「あ、そうなんだ」


 向こうもこちらに気付いたようなので互いに接近。彼の数メートル後ろには面識のない男女グループが存在していた。


「優奈に会った? アイツ、魔女みたいな格好してたんだけど」


「ハロウィンのコスプレだってさ。なかなか似合ってたんじゃないかな」


「まぁ今日はアレを見にわざわざ足を運んだんだけどな。バッチリ写真も撮ってきてやったぜ」


「……い、嫌がられなかった?」


「ちょっと渋った顔してたけど普通にピースしてくれたよ。画像欲しいって言われたから後で送っておかないとな」


「へぇ」


 てっきり反発されると思っていたのに。なんやかんやで仲は良いらしい。


「せっかくの身内の学祭だもんね。こういう時じゃないと校舎の中とか見れないし」


「うん。それにもう少ししたら会えなくなるかもしんないからさ」


「ん?」


 ケータイを見つめる彼の顔に陰りが発生。気のせいかテンションが下がっていた。


 適当に雑談を繰り広げると鬼頭くんと別れる。中学時代の仲間という人達の所へ戻って行った。


「お友達?」


「うん、クラスメートなんだ。入口にいた魔女の子のお兄さんなんだよ」


「へぇ。雅人くんと違ってイケメンだったね」


「……悪かったね。面構えが悪くて」


 復帰早々に嫌味をぶつけられる。ニヤついた表情の児童に。


「服装とかオシャレだったよね、雅人くんと違って」


「悪かったね。ファッションに鈍感で」


「女の子にモテそうなオーラあったなぁ。雅人くんと違って」


「そっかそっか、そんなに人形いらないんだ。なら返品してくるよ」


「わーーっ、わーーっ! ごめんなさい!」


 それから香織達と合流して再び校内を散策開始。颯太とは連絡が取れなかったので4人での行動となった。


 何度かメッセージ送信してみたが無反応。そして中庭にある人混みまでやって来た時にようやく彼と合流する事が出来た。


「よう、お待たせ」


「え? 君、誰?」


「ふざけんなっ! 俺だよ、俺!」


「悪い悪い。ていうか一体今までどこで何やってたのさ」


「ん? 女の子2人が漫才やってたからずっとそれ見てたんだよ」


「漫才?」


 話を聞くと普通に出し物を廻っていたんだとか。ナンパをしていたかと疑っていたから一安心。


「そうなんだよ。ボケの子がなかなか可愛くてさぁ」


「へ、へぇ。良かったじゃん」


「飛び跳ねる度にスカートが捲れてよ。見えそうで見えないのが何とも悔しかったわ、デヘヘ」


「スケベ…」


 外れたと思っていた予想がブーメランのように返ってくる。彼がまともな思考で動く訳がなかった。


 その後、一通り廻り終えたので退散する事に。智沙にブッ飛ばされた颯太を引きずって入口へとやって来た。


「今日はありがとうね。そろそろ帰るよ」


「こちらこそわざわざ来ていただいてありがとうございました。大したお持て成しも出来なくてすみません」


「いやいや、参加チケットくれただけで嬉しかったよ。良い物も買えたし」


「それは何より」


 制服姿に戻っている優奈ちゃんに声をかける。寒くなったから着替えたらしい。彼女はこれから友達と自由時間を楽しむんだとか。


「そういえば紫緒さんは? 教室のどこにもいなかったんだけど」


「あぁ、恵美は部活の出し物に出てるんですよ。だからクラスのバザーには参加してないんです」


「そうなんだ。部活って何やってるの?」


「演劇部です」


「演劇部!?」


 体育館で行われている劇に参加していたとの事。不覚にも見逃してしまった。


「演劇部って意外だ。でも部活動に参加してるのにバイトしてて良いの?」


「幽霊部員だから問題ね~って言ってました。あんまり顔を出さなくても平気な所らしいんです」


「へ、へぇ……結構緩い部活なのね」


「今回は事故で亡くなったお化けの役をやるって言ってましたよ。私も見たかったのですが時間が合わなくて」


「あ、そっちの幽霊なのね」


 どんな舞台が行われていたのか気になる。予め本人から情報を入手しておけば良かったと後悔。


「またね~」


 最後にもう一度だけ挨拶を済ませると外へ。辿って来た道を遡って駅へと戻った。

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