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6 抑止と峻拒ー3

「あっ、来た」


「ごめんごめん、待たせちゃったね」


「華恋さん、大丈夫だった? 泣いてたみたいだけど」


「え? あ……うん。たぶん平気」


 道路に出ると電柱にもたれかかっている香織を発見。彼女は退屈そうに端末を弄っていた。


「ん…」


 さり気なく振り返って様子を確認する。どうやら追いかけてくる気は無いらしい。


「でもどうしようね。チケット1枚余っちゃったけど」


「……む~」


「誰か誘ってみる? それか4人で行っちゃうとか」


「どうしよっかな…」


 丸山くんか瑞穂さん辺りに声をかけてみるべきかもしれない。そんな事を考えていると玄関先で遊んでいる小さな子供の姿が目に入った。


「あっ…」


「ん?」


 それから暑さが残る道を早歩きで移動する。駅のロータリーで先に来ていた友人を発見した。


「ちーちゃぁぁぁぁん!」


「かおちゃぁぁぁん!」


 女2人が大声で叫びだす。運動部を彷彿とさせる抱擁も付け加えながら。


「毎回やってるけど飽きない? それ」


「え? お前、誰?」


「ふざけんなっ! 僕だよ、僕!」


「気にするな。ところでその子、誰よ?」


「ん?」


 続けて自分も彼女達の元に接近。話しかけた直後に背後に隠れている人物を指差されてしまった。


「あ…」


「この子はね、隣の家に引っ越してきた子で…」


「は、初めましてっ!」


「あら、可愛い。まだランドセル背負って学校通ってるお嬢ちゃんかしら」


 小さな体が丁寧に頭を下げる。照れくささ全開の様相で。


「へぇ。まさかアンタ達にこんな年下の友達がいたとはね」


「この子のお姉ちゃん、僕達の高校の後輩らしいよ」


「ふ~ん、そうなんだ。よろしくね、すみれちゃん」


「は、はい。よろしくお願いします」


 偶然見かけたので誘ってみたら彼女はノリノリで参加。ご両親にも許可を貰った上で連れて来た。


 子供用の切符を1枚買った後は4人で電車に乗車。定期を使っていつもの駅へとやって来た。


「なんだと! 華恋さん来れないのか!?」


「う、うん。急用が出来ちゃって」


「そんな……なら買ってきたこの花は一体どうすりゃいいんだ」


「そこら辺にでも飾っておいたら?」


「やれやれ、仕方ねぇな…」


 改札をくぐると颯太とも合流する。華恋の不在を告げた瞬間に彼のテンションは急降下。持参していた花束をソッと電柱の根元に添えた。


「アンタ、どんだけ華恋に執着してんのよ。ストーカーか」


「うるさい黙れ。智沙は俺達の気持ちが分からないからそうやって思うんだ」


「はぁ? 頭大丈夫?」


「本当は言いたくないんだけどな、実は華恋さんは俺の事を…」


「あ、あの……そろそろ向かわない?」


 友人2人が妹の話題で盛り上がる。無理やり間に入って妨害を開始。


「ん? そうだな。たくさんの女の子達とイチャイチャしなくちゃだもんな」


「……やっぱり今から帰ってくれないかな」


 全員揃ったので目的地へ。槍山女学園へは駅から路線バスが走っているのだが、天気が良いからのんびり歩く事になった。


「すみれちゃんはどこの学校に通ってるの?」


「東小です」


「あっ、そうか。かおちゃんちの隣に住んでるって言ってたわね。ちなみにアタシは(きた)小だったのよ」


「へぇ、そうなんですか」


 女3人が地元の話題で盛り上がっている。そのすぐ前を颯太と並んで歩いた。


「女子校の学祭って何やるんだ。メイド喫茶とかあんの?」


「どうなんだろう。規律に厳しそうだからそういうのは無いんじゃないかな」


「野球拳とかやってないのかな。水着を着てプールで騎馬戦とか」


「話聞いてる? 共学の所より厳しいんだってば。それ普通の学校でもやれないレベルの出し物だよね?」


 会話をしながらも意識は別の部分に集中していた。家に残してきた妹の存在へと。


「うぅ…」


 確実に機嫌を損ねているに違いない。自宅に帰る事に恐怖心を抱き始めていた。

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