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7 同居人と転校生ー1

「んむっ、んむっ…」


 朝のリビングでパンに噛み付く。両面にマーガリンをタップリと塗りたくった食パンを。


「楽しみだね~、華恋さんの制服姿」


「なに言ってるのさ。2日前に見たばかりじゃないか」


「可愛いかったなぁ。似合ってたなぁ」


「いやぁ……香織の方が可愛いと思うよ」


「えぇ! どうしたの、急に。誉めてもなんにも出ないよ?」


「口からソーセージが飛び出てるけど」


「うげげっ!」


 いつもと違って雰囲気がよそよそしい。その原因は部屋で着替え中の同居人。


「……お待たせしました」


「お?」


 噂話で盛り上がっていると本人が姿を現した。制服を身に付けた女の子が。


「華恋ちゃん、おはよう」


「おはようございます」


「今日から学校ね。遅刻しないようにご飯食べちゃって」


「あ、はい」


 皆で彼女を出迎える。4人で腰掛けるテーブルに更に1人が加わった。


「足りない物は無い?」


「大丈夫です」


「教科書は間に合わなかったから、しばらくは誰かに借りてちょうだいね」


「わかりました」


「欲しい物があったらすぐに言うのよ。遠慮なんかしなくて良いんだから」


「ありがとうございます。何から何まで本当に助かります」


 母親と華恋さんが言葉を交わす。登校の為の確認作業を。


「あ~。なら私、新しい財布が欲しい」

 

「そんなの自分で買いなさい。誕生日でもないのに」


「えぇ~、だって今お母さんが遠慮するなって言ったんじゃん」


「香織。宿題を忘れた数だけお小遣いを減らしてあげても良いのよ?」


「あぁあぁあっ、早くご飯食べちゃわないと! 遅刻しちゃう!」


 慌ただしいが空気は悪くない。全員が妙に気分が高まっていた。


「ごちそうさまぁ」


 食べ終わった後は各々出掛ける支度をする。鍵の施錠や電源の有無を確認して玄関へと集合した。


「忘れ物ない?」


「大丈夫だよ~。ばっちし」


「2人共、華恋ちゃんの事よろしくね」


「は~い」


 腰に手を当てた母親から命令が飛んできた。家族を労る為の指示が。


「雅人さんは忘れ物ないですか?」


「あ……ん。大丈夫だと思う」


 続けて華恋さんが顔を覗き込む形で接近。息がかかるぐらいの至近距離まで。


「嫌だなぁ…」


 月曜日というだけで鬱気味な状態なのに。今日から彼女と一緒に登校するのかと思うと頭を抱えたくなった。


「前に通ってた学校はどこなんですか?」


「え~と、ここからだと結構離れてる場所でして…」


 自宅を出発すると駅までの道を歩く。すぐ後ろで仲良くお喋りをしている女性陣を引き連れながら。


「制服小さくないですか?」


「ちょっとキツめですけど大丈夫です」


「足の長さに対してスカートが短い気が…」


 2人の会話に混ざろうとは思わない。なるべくなら華恋さんとは口を利きたくなかったので。


 そうこうしているうちにいつも利用している駅へと到着。今日もホームは学生やサラリーマンで溢れていた。


「ちーちゃんいるかな?」


「なに言ってるんだ。智沙なら去年事故で亡くなったじゃないか…」


「もうっ! 不謹慎な事言わないでよ」


「いって!?」


 妹の質問にボケで返す。直後に振り回した鞄が腕に直撃した。


「いつつ……智沙なら日直当番だから先に行ってるってよ」


「あ、そうなんだ。残念」


「ちーちゃん? お友達ですか?」


 普段はここでもう1人と合流するのだが今日はいない。事情を把握していない華恋さんも控えめな態度で話に割り込んできた。


「えっと、ちーちゃんというのはですね。いつも私達と一緒に登校してる先輩の事なんです」


「そうなんですか」


「先輩と言ってもまーくんや華恋さんとは同い年なんですけどね。私から見たら先輩になるんですよ」


「へぇ、ならその方も私と同じ2年生なんですね」


「はい、もしかしたら3人で同じクラスになれるかもしれませんよ。ね、まーくん」


「そうだね…」


 名前を呼ばれたが適当に対応。冷たい態度を貫いた。


「あ、電車きた」


「今だ、飛び込むんだ!」


「やだよ…」


 しばらくすると車両がホームに進入してくる。混み気味の車内に気合いを入れて乗車。駅に到着後は学生達の流れに乗って歩く事に。頭上を見上げれば気持ちの良い青空が広がっていた。

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