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2 天使と悪魔ー5

「ちょ、ちょっとアンタ……こんな所で何やってるのよっ!」


「いや、これはその…」


「人の部屋に勝手に上がり込んで……てかその子、女の子じゃない!!」


 彼女が激しく取り乱す。拳を震わせながら。


「人の留守中に女を連れ込んでるとはどういう事じゃああぁあぁぁっ!!」


「き、聞いてくれ。これには深い訳があって…」


「しかも身動きをとれなくしてるとか、貴様……貴様っ!!」


「違う違う、勘違いだから!」


 すぐさま言い訳を展開。体勢を変えて立ち上がった。


「お姉ちゃん、助けて!」


「え?」


「あのお兄ちゃんに無理やり連れ込まれたの」


「は、はぁ!?」


 しかし事態が思わぬ方向に転がっていく。一緒に暴れていた対戦相手が華恋の元へと接近した。


「私が嫌だって言ったのにここに引っ張ってきて、そして……抱きついてきた」


「ちょ、ちょっと待って!」


「やだっ! こっち来ないで」


「え? 何、アナタ。この人に無理やり連れて来られたの?」


「うん。外で遊んでたら『お兄ちゃんちに来ない?』って声をかけられて」


「アナタ、お隣の子よね。大丈夫だった?」


「こ、怖かった。変な事されるの嫌だった……グスッ」


「……そっか。嫌な思いさせちゃってゴメンね。もう平気だから」


 彼女が先程までと打って変わって泣きそうな顔を浮かべていた。ワザとらしく目を擦りながら。


「違うって。何を言ってるのさ…」


 意味が分からない。頼まれた遊びに付き合ってあげただけなのに。パニックに陥っている間にも2人は至近距離で会話を進めていた。


「お家帰れる? 1人で大丈夫?」


「うん、平気。お姉ちゃんが助けに来てくれたから助かったよ」


「そう。なら早く玄関から逃げて良いわよ。後はお姉ちゃんが何とかしておくから」


「本当に? ありがとう!」


「いやいや…」


 小さな体が隣の部屋の奥へと消えていく。この場から逃走するように。


 彼女は去り際にワンアクションを追加。重ね合わせた両手をこちらに向かって掲げてきた。


「……このクズ男がぁ」


「うぇえ…」


 追いかけようとしたが出来ない。目の前にいる人物が思い切り襖を閉めたせいで。


「……そこに正座しろや」


「へ?」


「正座。早くしろ」


「き、聞いてくれ。さっきあの子が言ってた話は…」


「正座しろっつってんだよ! 聞こえねぇのか、うらあぁぁああぁぁあぁっ!!!」


「は、はいぃっ!? スミマセンでしたっ!」


 緊迫した状況を打破する為に説明を試みる。しかし途中で中断。蹴られた椅子の音と罵声に怯み、思わず指示に従ってしまった。


「信じてたのに。アンタは犯罪に走るような汚い人間じゃないって信じてたのに…」


「いや、だから…」


「私の事を裏切らないって……もう絶対に他の女の方を向く事なんか無いって思ってたのに」


「あの…」


 俯いていると頭上から嗚咽が聞こえてくる。悲痛な感情を表した台詞が。


「なんで……何で何で何でっ!」


「ちょ、ちょっと落ち着こう。とりあえず深呼吸を…」


「どうして小さな女の子に手を出す卑怯な真似なんてしたのよ。答えなさいっ!」


「聞いてくれ。僕は本当に無実なんだ」


「うるさいっ! 言い訳すんなっ!!」


「おぼぇっ!?」


 宥めようとした所に強烈なパンチが顔面に直撃。脳を激しく揺さぶる攻撃を喰らってしまった。


「バカバカバカバカっ!」


「いで、いででっ!?」


「死んじゃえ、このアホーーッ!!」


「本当に死んじゃうぅぅぅっ!」


 その後も理不尽な制裁を受け続ける。無慈悲な暴力を。


 まさか人助けした末に恩を仇で返されるなんて。しかもその相手が無邪気な子供だから余計にタチが悪い。


「ぐっふぅ…」


 必死で許しを乞うが聞き入れてもらえず。意識を失うまで凄惨な拷問は続いた。

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