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6 戸惑いと強引ー5

「つっかれたぁぁぁ」


 自宅へと着くとソファに飛び込むように横になる。フルマラソンを完走したランナーの気分で。香織はまだ帰って来ていないらしく、家の中は出掛けた時のまま。華恋さんも自分の部屋へと戻ってしまった。


「はぁ…」


 寝転がってリラックスしたせいか異常な程の脱力感に襲われる。このまま目を閉じたら眠ってしまいそうな睡魔に。


「ねぇ。夕御飯食べたい物ある?」


「ん~、特には」


「おじさん達が帰って来るまでに何か作っておこうかと思うんだけど」


「あぁ、そだね。じゃあお願いしちゃおうかな」


 ウトウトするも話しかけられた事で意識が覚醒。荷物を部屋に置いてきた華恋さんが姿を現した。


「何を作ってあげたら喜ぶかしら」


「カレーとか」


「それだと定番すぎない? つかこの前、食べたばっかじゃない」


「いや、カレー好きなんだよ」


「たっだいまーーっ!」


「お?」


 メニューについて議論を交わしている最中に声が聞こえてくる。妹の帰宅を知らせる挨拶が。


「おかえり」


「あれ? 2人とも朝と着てる服が違う」


「出掛けてたんだよ。帰って来たのはついさっき」


「そうなんだ。結局買い物に行ったんだね」


「え? ま、まぁ…」


 昨夜、用事があると嘘をついた事を思い出した。不審がられると思ったが大した追及もなく終了した。


「そういや何か食べたい物ある?」


「食べたい物?」


「うん。リクエストあるならコイツが作ってくれるってさ」


 意識を逸らす為に別の話題を振ってみる。隣にいる人物の顔を指差しながら。


「コイツ!?」


「あ、いや…」


 その直後に失態が判明。妹の怒号が響き渡った。


「ダメだよ、そんな言い方しちゃ。華恋さんに失礼でしょ!」


「違っ…」


「いくら何でもコイツなんて言い方は無いんじゃない!?」


「そ、そうなんだけどさ」


「お母さんが言ってたでしょ、華恋さんは家族なんだって。召使いとかじゃないんだよ?」


 和やかな空気が張りつめた物に変化する。笑えない物へと。


「香織さん、あの……良いんです」


「え? でも…」


「私ならどんな呼ばれ方をされても大丈夫ですから」


「そんなのダメです。いくら何でもコイツなんて呼び方は酷すぎますよ」


「いえ、本当に平気ですので…」


 直後に華恋さんが目尻を拭い始めた。弱々しい精神を体現するかのように。


 必死で作り笑いを浮かべようとしているのだろう。だがそれ自体が演技であるのがバレバレだった。


「……何故だ」


 自分が悪者にでもなったかのような状況。まったく納得がいかなかった。


「私は気にしていません。なのであまり雅人さんを責めないであげてください」


「でもぉ……それじゃあ華恋さんがあんまりですよ」


「私の不注意で怪我もさせてしまった訳ですし。これぐらい当然だと思っています」


「……はぁ。なら後で私からキツく言い聞かせておきますね」


「えぇ、そんな…」


 助け舟のおかげでどうにかその場は収まる。ただし後から妹に30分にも渡る説教をされてしまった。

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