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21 おかえりと始まりー3

「行ってきま~す」


 そしてバイトが休みの日に早速外出。それはずっと約束していた夏休みの思い出作りの為。無事に華恋と帰って来る事が出来たので智沙と香織を加えてのお出掛けだった。


 電車に乗ると計画通りに県内のテーマパークへ移動。当初の予定と違っているのはメンバーが3人追加された点だった。


「いやぁ、晴れて良かったわねぇ」


「だね~、天気予報だと降水確率30パーセントって言ってたけど。そういえばちーちゃん髪切った?」


「あ、気付いちゃった? 汗でうなじにくっ付くからバッサリいっちゃった」


「へぇ、でも印象あんまり変わんないよね」


「そんなバカな」


 電車の中で各自が自由に騒いでいる。香織は智沙と、颯太は紫緒さんと。そして自分は華恋と優奈ちゃんに挟まれながら吊革に掴まっていた。


「……いやぁ、遊園地楽しみだなぁ」


 周りの4人はずっとお喋りをしている。それなのに両サイドの2人だけは終始無言。


「はぁ…」


 メンバーが追加されたのは主催者権限を使って彼らを誘ったから。せっかくの夏休みなんだし人数が多い方が楽しいからという理由で。


 そしてついでに優奈ちゃんも連れ出してしまえば約束を果たせると計算。騙してしまったみたいで申し訳ないが、これ以外に上手く切り抜けられる方法が思い浮かばなかったのだ。


「う~ん…」


 ただ今回の件で1つだけ懸念したのはメンバーの構成。初対面同士の組み合わせによる不安。親しくもなければ苦手同士な者もいる。残念な事にそれらの問題を解決させる前に約束の日を迎えてしまっていた。


「み、皆テンション高いね。やっぱり遊園地っていくつになっても楽しみなのかな」


「む…」


「颯太なんか昨夜はなかなか寝付けなかったとか言ってたし。寝坊しなかったから良かったけどさ」


「……ん」


「いやぁ、楽しみだな~。向こうに着いたらまず何に乗ろう」


「はぁ…」


 必至で場を取り繕おうと奮闘する。しかし結果は全て空振り。それはまるで嫁姑問題に悩まされる旦那のような環境。針の筵そのものだった。


「あの、さ…」


「へ?」


 逃げ出してしまおうかと考えていると無言だったメンバーの片方が口を開く。朝からずっと不機嫌だった妹が。


「前にビンタしちゃった事あるじゃん。ゴメンね…」


「……いえ。あれは私が全面的に悪かったですから」


「でも叩くのはさすがにやりすぎだったかなぁと。ゴメン」


 自分を挟んで2人が会話を開始。ただしどちらもトーンが暗かった。


「頭を下げなくてはいけないのは私の方です。すみませんでした」


「別にもう気にしてないから謝らなくても良いわよ」


「いえ、まだちゃんと謝罪していなかったので。アナタと先輩には多大な迷惑をかけてしまった訳ですし」


「反省してるのは分かってんだからもう良いってば」


「騙すような真似してごめんなさい」


 言葉を交わしているがお互いに目は合わせていない。華恋は窓の外を、優奈ちゃんは床を見るように俯いた姿勢を維持。


「私の方だって悪かったなぁって思うわよ。後から考えたら年下相手に大人気なかったなって」


「そんな事はないです。アナタの言う事は正しかったです。私が間違えていました」


「……あのさ、そこまで卑下されると逆にムカつくんだけど」


「ごめんなさい…」


「あーーっ、もう! 謙遜のし合いはおしまい。せっかく遊びに行くんだからやめましょ」


「そうですね。反省ばかりしてても楽しめないですし」


 そして何かが吹っ切れたように華恋が大きな声を出す。車内は騒がしかったので周りの乗客は誰も反応していなかった。


「もう私は何とも思ってないから。雅人を騙したり利用したりさえしなければそれで構わない」


「そんな事しません……絶対に」


「……なら良いけど」


「今度からはちゃんと誘います。自分の意志で堂々と」


「は?」


 話し合いが和平を結び始めるが途中で不穏な物に突入する。避けたかったデッドゾーンへと。


「あ~、そういえば優奈ちゃんね。またうちの店で働く事になったんだ」


「ふ~ん。でもどうしてまた?」


「紫緒さんに誘われたんだって。戻ってきて一緒に働かないかって言われたらしいよ」


「あぁ。確かアンタ達、同じ学校って言ってたわね」


「そうそう」


 すかさず割り込んで話の方向性を転換。せっかく修復しかけた関係を再び壊す訳にはいかなかった。


「ふぅ…」


 ちなみに丸山くんも誘ってみたのだが、まだ実家にいるという事でキャンセル。鬼頭くんに関しては華恋と優奈ちゃんからのダブルNGが出てしまったので声をかける事すら叶わなかった。


 仲間外れにしてるようで少々心苦しい。今頃は家で1人孤独に過ごしているのだろうか。

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