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20 再会と再開ー1

「かれぇーーん!」


 名前を叫びながら道路に向かって駆け出す。持っていた鞄を地面に放り投げて。


「ぎゃあっ!?」


「やっと会えた!」


「ちょ、ちょっと…」


「ずっと捜してたんだから。見つけられて本当に良かった!」


「離れなさいよ! 暑い!」


 そのまま全速力でターゲットの元に突撃。コンビニの袋を携えている女の子に抱き付いた。


 頭を押さえて引き剥がされそうになるが必死に食らい付く。周りを行き交う通行人の目なんかまるで気にならなかった。


「い、いきなり何て事すんのよ。ビックリしたでしょうが!」


「悪い悪い、つい嬉しくなっちゃって」


 満足したところで離脱する。お叱りの声を耳に入れながら。


「はぁ、もう……まったく」


「華恋を捜しに来たんだよ。電車に乗ってこの街まで」


「どうして私がここにいるって分かったの? おじさん達に聞いたの?」


「うん、まぁ。それに…」


 夢で見たからなんて言って信じてもらえるだろうか。呆れられそうだったので言葉にするのはやめておいた。


「けどだからってわざわざ来る事ないじゃない。こんな遠い所まで」


「だって電話もメールも全部無視してきたじゃないか。連絡つかないから困ってたんだよ」


「それは仕方ないじゃん。雅人に会いたくなかったんだし」


「そ、そっか…」


 彼女の一言が胸に突き刺さる。予想していた内容とはいえ辛い。


「コンビニの帰り?」


「……ん。お腹空いたからご飯買いに来たの」


「へぇ…」


 話題を逸らすように持っていた袋に視線を移動。隙間からは弁当の一部が見えた。


「しかしまさか偶然バッタリ会っちゃうとはなぁ」


「……私だってビックリしたわよ。向こうにいるハズの雅人がこんな所にいるんだし」


「今なら宝くじ買えば当たるかもね」


「はいはい」


 2人して腰を下ろす。近くに設置されていたベンチに。


「黙っていなくなっちゃうしさ、旅行に行くハズなのに全然帰って来ないし」


「……そっか。本当なら今日行くハズだったんだよね」


「今からだと間に合わないなぁ、やっぱり」


「当たり前じゃん。ホテルだってもう解約しちゃってるんだもん」


「驚いたよ。予約が勝手に無くなってたから」


「ごめん…」


 彼女が申し訳なさそうに謝罪の言葉を投下。その声からは先程までの勢いが消えてしまっていた。


「いや、頭を下げないといけないのはこっちの方だよ。ごめんね」


「何で雅人が謝んのよ」


「華恋の事を裏切っちゃったから。あと約束破っちゃったし」


「約束?」


「無断で家を出て行ったのって僕に愛想を尽かしたから?」


「さぁ、どうでしょう」


 質問に対し意地悪な回答が返ってくる。はぐらかすような内容の台詞が。


「華恋が帰って来なくなってからいろいろ考えたんだよ」


「何を?」


「どうしたら戻って来てくれるのか。どうしたらまた一緒に暮らせるようになるかなって」


「ふ~ん…」


「それで1つの結論に辿り着いた訳さ」


「どんな?」


「もう他の女の子と2人っきりで遊んだりするのやめようって。華恋以外の子を好きになるのをやめようって」


「は!?」


 視界の中に存在している景色が神々しい。夕日に照らされた雲や海面が昼間とは違う色合いを生み出していた。


「でもそう考え直したとしても本人が戻って来てくれないと意味がないし」


「……え、え」


「やらかしちゃったなぁって思ったよ。久しぶりに大きく後悔したかな」


「ちょ、ちょっと待って!」


「ん?」


 呼び掛けられたので目線を横にズラす。口をパクパクと動かしている対話相手の方へと。


「ど、どういう事。アンタ、今なんて言った!? 私の事が好きって…」


「どういう事って、そのままの意味だけど」


「訳分かんない。なんで急にそういう話になるのよ!」


「そんな文句つけられても…」


 彼女が慌てふためいた様子を露呈。僅かだが怒りに似た感情も混ざっていた。

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