19 捜索とハプニングー5
「邪魔な所にいるな…」
飲み物を買いにコンビニまで来る。すると入口にたむろする2人組を発見。1人は黒髪にアロハシャツで、もう1人は金髪でピアスに黒のタンクトップ。地元の若者なのだろうか隣には自転車も停まっていた。
「……あん?」
コンビニに近付く途中で彼らと目が合う。不自然にならない程度に視線を逸らしながら中へと入った。
「店の入口塞ぐなよなぁ」
「まったくっすよ」
ガラの悪い連中はどこにでもいる。相手にさえしなければ恐れる事はない。けれど買い物を済ませ外に出た所で運悪く絡まれる羽目に。
「ひっ!?」
「どした?」
「ちょっと! アンタ、今うちの足触ったでしょ」
声に反応して視線を後ろに移動。紫緒さんが2人組の若者と向き合いながら怒鳴っていた。
「おぉ~、スベスベ」
「絶対ワザとだ。ワザとに決まってる!」
「ワザとだけど何か問題でも?」
「ふざけんなっ! 気持ち悪いんだよ、このガングロが」
激昂してる彼女の顔を見て男達がニヤけている。悪びれる様子も見せずに。
「お~、怖っ」
「なに笑ってんだ。謝ってよ!」
「はぁ? どうして?」
「セクハラしたからに決まってんじゃん。そんな事も分かんないの? 馬鹿すぎ」
「こいつ、何言ってんだ。頭おかしいんじゃね?」
2人組は相変わらず地べたに座り込んだままの状態を維持。更には相手をバカにするように顔を指して笑っていた。
「ブッサイキな面でニヤニヤしやがって。キメェんだよ、テメェら」
「あぁ!?」
「ちょ……マズいって」
そんな彼らに紫緒さんが暴言を吐く。萎縮する事なく強気な態度で。
「おい、お前なんつった!」
「キメェっつったんだよ。聞こえなかったのか、猿」
「こんのぉ…」
「わーーっ、わーーっ、ちょっと待ったぁ!」
金髪男が立ち上がるのと同時に接近。咄嗟に割って入った。
「ぼ、暴力はやめよ。暴力は。殴ったりはよくない」
「殺すぞ、クソガキ。そっちが先に喧嘩売ってきたんだろうが」
「え?」
「人に啖呵切っといて何が暴力はよくないだ。ナメてんのか、コラ」
「いや、え……え?」
耳に入ってくるおかしな言葉に思考が混乱する。先に手を出してきたのは彼らなのに。
「いって!?」
「ガキのクセに女連れとか生意気なんだよ」
「せ、先輩!?」
そんな考え事をしていると頭部に痛みが発生。伸ばしてきた手に髪の毛を掴まれてしまった。
「おらぁっ!!」
「あがっ!?」
直後に低い叫び声が響き渡る。自分のではなく別の人物の悲鳴が。
「大丈夫か、雅人!」
「あ、あんまし……いってぇ」
どうやら颯太が助けてくれたらしい。目の前では金髪男が尻餅をついていた。
「これでも喰らえっ!」
「おごっ!?」
続けて紫緒さんがもう1人の男にペットボトルを投げ付ける。彼はバランスを崩して近くにあった自転車と共に転倒した。
「よし、逃げるぞ!」
「う、うん…」
もがき苦しむ2人組を後目に慌てて道路へ。周りにいた通行人や店員さんの視線なんかお構いなしに走った。
「はぁっ、はぁっ」
「こ、ここまで来れば大丈夫だろ…」
追跡を警戒しながらもどうにかして逃げ切る。人通りの多い道路まで。
「あぁーーっ、もう! 何なんすか、あの男共!」
「何されたの?」
「太ももを触られました」
「けしからん。世の中にはスケベが多すぎる!」
「モッサリ先輩がそれ言うんすか?」
隣を見ると2人が平然と会話を開始。先程のトラブルを意に介さない態度だった。
「雅人、頭大丈夫だったか」
「あ、うん。掴まれただけだから何とか」
「ほんっと酷いよな、さっきの奴ら。もう一発ブン殴ってやれば良かったわ」
「颯太は大丈夫だったの。手?」
「あん? 平気平気。攻撃する時ペットボトル使ったから」
「そ、そうなんだ」
直接手で殴っていたなら拳を痛めていただろう。顔面を殴った場合、相手の歯で皮膚を切ってしまう場合もあると聞く。
警察に行くかどうか話し合ったが行かないという結論になった。誰も怪我をしていないし再びいざこざになっても面倒だから。
「でもまたさっきの奴らにバッタリ遭遇しちゃったら嫌だよなぁ」
「なんだよね。どこか人が多そうな場所に隠れちゃおっか」
「海行こうぜ、海。あそこなら人がたくさんいるから見つかりっこないぜ」
「海かぁ……この際、仕方ないかな」
ほとぼりが冷めるまで時間を潰すのが得策と判断。さっきはたまたま逃げられたが、もし殴り合いの喧嘩に発展したら間違いなく勝てないから。
紫緒さんの分のペットボトルを捨ててしまったので近くにあった売店で再購入。水分補給しながら観光客がたくさんいる空間へと向かった。




