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6 戸惑いと強引ー2

「ははは、この番組面白いね」


「……医療ドキュメンタリー番組で何笑ってんの」


「すいません…」


 その後はテレビを見ながらでダラダラと過ごす事に。しばらくすると部屋でパソコンと格闘していた父親もリビングに登場。2時過ぎには出掛けていた母親達も帰ってきた。


「ただいまぁ」


「おかえり。わぁ、可愛い」


 リビングで2人を出迎える。スーツ姿の母親に、見慣れた制服を身につけている女の子を。


「華恋さんもこれ着て来週から学校に通うんですよね?」


「はい。でも私にはちょっと派手すぎるかと思ってるんですが」


「そんな事ないです。すっごく似合ってますよ!」


「あ、ありがとうございます。なんか誉められると照れくさいですね」


「ん…」


 女同士の上手なヨイショが飛び交っていた。香織の言葉は本心だろうけど華恋さんの口から出ている言葉は嘘かもしれない。その心の中は自尊心で満ち溢れている気がした。


「もうご飯食べた?」


「作ってくれてたサンドイッチならね」


「そう。母さん達まだだから何か作ろうかしらね。華恋ちゃん、食べたい物ある?」


「あっ、私も手伝います」


「……ふぅ」


 キッチンへと入っていく3人の背中を見つめる。視線を感付かれない程度で。


「どうしたんだ? 溜め息なんかついたりして」


「いや、別に…」


「悩みなら父さんに話すんだぞ。愚痴ぐらいなら聞いてやれる」


「本当に何でもないから」


「分かった、あの制服を着てみたいんだろ? 夏はスカートの方が涼しそうだからな」


「そんな趣味ないってば…」


 盛り上がる女性陣を他所に父親とテレビ観賞。画面の中ではタイツ姿の芸人が田んぼに飛び込んでいた。


 食事中は学校の話題で大盛り上がり。食べ終わると自由な午後を堪能。普段となんら変わらない怠惰な1日を過ごした。



「合い言葉は~?」


「香織はチビ」


「ちょっと! 人が気にしてる事言わないでよっ!」


「うぉっと!?」


 夜になると妹の部屋を訪れる。生産性のまるで無いやり取りを交わしながら。


「話あるんだけど良い?」


「……良いよ」


 入室許可をもらったので中へと進入。同時に折りたたみ式のテーブルの上にジグソーパズルが散らばめられている光景が目に入った。


「パズルやってるの?」


「うん。500000ピースのヤツ」


「絶対ムリでしょ…」


 明らかにパーツが多い。紛失しても気付かないレベルで。


「んで話って何?」


「明日さ、3人で華恋さんの着替え買いに行くじゃん?」


「うん。それが?」


「急用が出来たから行けなくなっちゃった」


 適当な嘘をつく。自然な体を装いながら。香織には悪いけど全てを押し付けてしまおうと考えていた。


「えぇ、何で!?」


「いやぁ、ちょっと外せない用事が入っちゃって」


「用事って何?」


「まぁ、いろいろと…」


「どうしよう……困ったな」


「何が?」


 言い訳を考えていると彼女が唸りだす。口元に手を当てて。


「実は私もリエちゃん達と出かける約束しちゃって」


「え?」


「明日の事はまーくんに任せようかと思ってたんだけど。しまったなぁ」


「いやいや…」


 どうやら2人揃って用事を作ってしまったらしい。無責任すぎる兄妹だった。


「どうして勝手に予定入れちゃうの?」


「それはお互い様じゃん。私だけ悪者みたいに言わないでよ」


「困ったなぁ。う~ん…」


「むぅ…」


 さすがにこの状況はマズい。約束をすっぽかしたら母親に叱られること必至。


「とりあえず華恋さんには謝っておかないと」


「だね。悪いけど明日は行けなくなっちゃったって」


「まだ起きてるかな?」


「どうだろう。もう11時過ぎだし」


「面倒くさいし明日でいっか」


「そうだね。そうしよう」


 外出が出来なくなった事は日が変わってから伝える方向で決定。何より今から一階の部屋に突撃する事が億劫だった。


「ちなみにまーくんは明日どこ行くの?」


「さ、さぁ…」


「女の子とデート?」


「……してくれるような相手がいたら良いんだけど」


「あはは、まーくんには私がついてるから大丈夫だよ」


「全然慰めになってない…」


 今さら嘘だなんて言えやしない。外出予定そのものが白紙だなんて。

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