15 暴力と女子力ー3
「ふぅ…」
「なに溜め息ついてんのよ」
約束当日、妹と共に自宅を出発する。億劫な気分に苛まれてながら。
「僕が付き添う必要あるのかなぁと…」
「あぁ!? アンタがそれ言うのか」
「え?」
「元はといえば雅人があの子を説得してないからこんな事になったんでしょうがぁ!」
「す、すいません…」
2人の外出に何故か自分も同行する流れに。拒否したが無理やり連れ出されてしまったのだ。
「あぁああぁ……期末に向けて勉強しなくちゃなのにぃ」
「ごめん」
「せっかくのアニメ鑑賞タイムが無くなっちゃったじゃない。どうしてくれんのよ!」
「あれ、勉強は?」
まさか師匠がアニメオタクだなんて紫緒さんは夢にも思わないだろう。更には品行方正から程遠いオッチョコチョイなのだから。
「ん? 何してるんだろう」
「さぁ」
それから電車に揺られながら目的地に到着。しかし銅像前にいた後輩はチャラい格好をした男性と会話をしていた。
「あ、先輩と師匠。ちぃーっす」
「う、うん」
「じゃあ友達来ちゃったんでこの辺で」
「え?」
彼女がこちらの存在に気付く。直後に男性がそそくさとその場から退散した。
「今の人、知り合い?」
「聞いてください。ナンパっすよ、ナンパ」
「へ?」
「うちが可愛いからってクソ高いアクセサリー売り付けようとしてきて。あ~、やんなっちゃう」
「それは多分ナンパじゃない…」
「ほえ?」
どうやら悪質なキャッチセールスに絡まれていた様子。単純な彼女ならもう少しで騙されていたかもしれない。一段落つくと改めて挨拶をした。
「師匠、今日はよろしくお願いします」
「は、はぁ……よろしく」
「それでですね、うちの今日の格好どうですか?」
紫緒さんがその場で一回転する。ブラウスにショートパンツというスタイリッシュな格好で。
「か、可愛いんじゃないかな。似合ってると思うけど」
「本当ですか!? ありがとうございます」
「あ、あの…」
「はい?」
「どうして私なんかに取り入ろうと考えたの?」
感想を言い終わると今度は華恋の方から質問。初めてとなる師匠側からの意見発信だった。
「実は今、気になる人がいまして」
「気になる人?」
「はい。その人に認めてもらう為には華恋師匠の力が必要かなぁと考えたんです」
「いやいや…」
その人物が誰なのか聞かなくても推察出来てしまう。先日、写真を見せてあげた鬼頭くんだろう。
彼のイケメンっぷりを見て紫緒さんは大喜び。舞い上がっていたが華恋に想いを寄せている事を告げると敢えなく撃沈。途端に落ち込んでしまったのだ。
「……んっ」
もしかしたら趣味やファッション、女子力を吸収して華恋になりすまそうという作戦なのかもしれない。好きな人の理想に合わせたいという算段で。
ただ1つ伝え忘れた情報が存在。彼が優奈ちゃんのお兄さんであると教えていなかった。
「とりあえず服を買いに行きたいです。アドバイスお願いしやす」
「は~い…」
女子2人が今日の予定を話し合う。テンションの落差を見せつけながら。
「僕はどうすれば良い?」
「先輩も付いてきますか? それか適当にどっかウロついてても構わないですけど」
「なら本屋で立ち読みしてるよ。終わったら連絡ちょうだい」
「イエッサー」
合流したばかりなのに別行動を開始。華恋から睨み付けられたが女性向けの店に男がいる場違い感を味わいたくないのでスルーした。
1時間という時間を目安に一旦解散。ゲーセンやら本屋で時間を潰しながら1人でブラブラ。そして彼女達から連絡が来たのは予定の時間を1時間以上オーバーした後だった。




