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15 暴力と女子力ー1

「へぇ、変質者捕まえたんだ」


「まぁ……うん」


「すぐに牢屋から出してくれたの?」


「あれ、犯人側の設定にされてる?」


 平日の朝、いつものように4人で通学する。男1人に女3人というアンバランスな男女比率で。


「誰が捕まえたの?」


「え~と、その後輩の子」


「ほうほう、格好いいなぁ」


「……だね」


 放課後に起きた騒動について簡単に説明。智沙も香織も興味津々といった様子で耳を傾けていた。


 ただ犯人を華麗に撃退した本人は飛び蹴りを決めた事実を知られたくないらしい。なので周りには紫緒さんが功労者という設定の嘘をついていた。


「颯太も一緒にいたんでしょ? アイツは何やってたのよ」


「男と鉢合わせした時には場所が離れててさ、後から警備員さんを呼んできてくれたんだよね」


「肝心な時に役に立たない奴。結局、その後輩の子だけで事足りたんじゃない」


「あはは……結果的にはそうなっちゃうのかな」


 もしかしたら今回の件で警察から表彰を受けられたのかもしれない。華恋が逃走案を主張しなければ。とはいえ自分も役立たずだったのでその意思を訴え出る権利は無かった。


 ついでに予め紫緒さんが提案していた恋人候補の件も白紙に。颯太自身は何も活躍していないので、友人を紹介するのは無理と言われてしまったのだ。


「面白そう。アタシも呼んでくれたら付いて行ったのに」


「僕も半信半疑だから出くわすなんて思ってなかったんだよ」


「ねぇ、ちーちゃん。私達も誰か捕まえて取材とかしてもらおうよ」


「よし、雅人。今からアタシ達の誰かに痴漢しろ」


「誰も興味ない」


「コンニャローーッ!!」


「うりゃあっ!!」


「ギャアァアァァッ!? 誰か助けてぇーーっ!!」


 車内で喚き散らす。騒がしい空間の一部を占拠して。


「げっ!」


 そんなやり取りをしている最中に異変を察知。到着した駅に見覚えのある女子高生を見つけた。


「あっ、やっぱり先輩だった」


「お、おはよ」


「チィ~ッス」


 紫緒さんが同じ車両に乗り込んでくる。軽い挨拶を飛ばしながら。


「……あぁ、この子ね。さっき話してたバイト先の後輩」


「どもども」


「通学中に会うのは初めてだっけ?」


「そっすよ。今日は先輩達来るの待ってたんで」


「へ、へぇ…」


 ただ当然のことながら周りの女性陣が唖然とした表情を浮かべる事態に。仕方ないので簡単に紹介した。


「ど~も、コイツの同級生です」


「どもです。先輩の同級生って事は、うちより年上ですね」


「そうね。アナタ1年? それとも2年?」


「2年っす。1個下です」


「あら。なら、かおちゃんと同い年だ」


 3人の中で真っ先に智沙が飛び出す。話を切り出した彼女は流れで隣にいた下級生にバトンタッチした。


「……あ、どうも。初めまして」


「どもです。先輩の後輩です。宜しくっす」


 2人がペコペコと頭を下げ合った。微かな緊張感を交えながら。


「師匠、会いたかった!」


「え? ちょ…」


「うちですよ。覚えてますか!」


「ひゃあ!?」


 そして続けざまに紫緒さんは華恋に接近。両腕を広げて抱き付いた。


「肌とかスベスベ。触っても良いですか」


「へ!?」


「うわぁ、柔らかい」


「ちょっと…」


「マシュマロみたい。ふわっふわぁ」


「や、やめ…」


 そのまま彼女の顔を弄り始める。恍惚とした表情を浮かべて。


 奇妙な光景をただ黙って観察。車内はますます賑やかになってしまった。


「お~い、着いたよ」


 駅に着くと2人に声をかける。下車する駅は紫緒さんも同じなので全員でホームに下りた。


「んじゃ、うちはこっから別行動なので」


「あ、うん」


「放課後にまた」


「気をつけてね~」


 ロータリーに出ると解散する流れに。元気に駆けて行く背中を4人で見送った。


「……何だったの、あの子」


「さぁ…」


 登場から退場まで一貫して理解不能な言動の連続。そのハイテンションっぷりは周りの人間達に動揺を与えただけで終わった。


「大丈夫? 口が開きっぱなしだけど」


「む…」


「お~い」


「……へ? え?」


 華恋の目の前で手を振ってみせる。どうやら呼びかける声も聞こえていなかったらしい。


「行こ。遅刻しちゃう」


「あ、うん…」


「ふぅ…」


 怒っているかと思ったがその様子は見られなかった。紫緒さんのあまりにも積極的な態度に戸惑ってしまったのだろう。


 その後はのんびりとしたペースで学校に移動。普通に1日の授業を受けた。

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