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14 猜疑心と親切心ー2

「あれ? 先輩じゃないっすか」


「ん?」


「おいっす」


「げっ、紫緒さん…」


 落胆していると校門から出てきた1人の生徒が近付いてくる。振り向いた先にいたのはバイト先の後輩だった。


「ひょっとしてうちを待っててくれたんすか?」


「ち、違うよ。もし用があるなら事前に連絡するから」


「ちっ! ならナンパに来たとか?」


「それも違う……と胸を張って言えないのが辛い」


「はい?」


 妙な遭遇に焦りが止まらない。予想していた最悪のハプニングは予想通り起きてしまった。


「え~と、紫緒さん1人?」


「そっすよ。これからバイトなんで」


「あぁ、そうか。今日は瑞穂さんと一緒にシフト入ってたもんね」


「ん? もしかして優奈の方に用事でしたか?」


「い、いや……そういう訳じゃないから」


 彼女まで来たら絶望が加速してしまう。鉢合わせした人物が1人だけだったのがせめてもの救いだろう。


「なら先輩はどうしてわざわざこんな遠い場所まで足を運んだんすか。しかも徒歩で」


「そ、それは…」


「まさかうちの学校の生徒にチョッカイ出してるんじゃないでしょうね。パンチラ写真を撮ったり」


「違う違う。それだけは断じて有り得ない」


「おい、雅人。向こうの校舎で着替えてた子達のパンツが下から丸見えだったぜ」


「やめてくれぇぇぇぇっ!!」


 言い訳を繰り広げていると友人が戻ってきた。セクハラ感満載の危ない台詞を口にしながら。


「お? この子、誰?」


「えっと、その…」


「あぁーーっ! お前、ズリィぞ。見てるだけとか言っておきながら女の子に声かけてるなんて!」


「は?」


「あぁーーっ! やっぱりそうだったんだ。先輩がここを訪れたのはナンパが目的だったんだな!」


「そ、そうじゃないってば。2人して変な解釈をしないでおくれよ」


 そのまま考え得る最低の流れを迎える事に。身内と外野、どちらにも不審がられるという展開を。周りを行き交う生徒達の視線を気にしながらも詳しい事情をそれぞれに説明した。


「なんだよ、バイト先の同僚だったのかよ」


「うん。知り合いだから挨拶してただけなんだってば」


「俺はてっきり雅人がこの子を押し倒そうとして怒られてるのだとばかり」


「……それは颯太のやりたい願望じゃないか」


「うちはてっきり先輩が、無理やりうちの事を押し倒そうとしているのだとばかり」


「君達は結託してるの!? 本当に今日が初対面!?」


 大声での主張を連発。いつの間にか板挟みの状態になっていた。


「え~と、恵美(めぐみ)ちゃんだったっけ?」


「いきなり下の名前呼びすか。図々しい人ですね」


「君のお友達を誰か俺に紹介してくれないか」


「はぁ?」


 紫緒さんと自己紹介を済ませた颯太がいつもの暴走を始める。本人の意向を無視して。


「頼むっ! 無理は承知でお願いしてるんだ。俺はどうしても今すぐ彼女が欲しいんだよ」


「んな事、唐突に言われても困りますがな」


「恵美ちゃんから見て80点は超えているだろうという子を連れてきてくれ。あ、君を50点ぐらいだとした仮定した場合ね」


「……先輩、この人ブン殴っていいすか?」


「気持ちは分かるけど落ち着こう。暴力は何も生まない」


 そんな身勝手な態度に後輩がブチ切れ。どうにか宥めてこの場は怒りを収めてもらった。


「いきなり知らない男子に恋人を作りたいと言われても」


「ダメか!?」


「うちはそこまで薄情な人間じゃないので。親しい身内を生贄に捧げられるほど非情にはなりきれないっす」


「くうぅ……やっぱり断られたかぁ」


「当たり前じゃないか…」


 友人の全力の懇願は棄却されて決着。至極当然の流れだった。


「……けどまぁ、うちの頼み事を聞いてくれるなら検討してあげない事もないすけど」


「な、何だって!?」


「この辺りに不審者が出るの知ってますか?」


「不審者?」


 しかし思わぬ形で蜘蛛の糸が垂らされる。予想もしていない角度から。


「うちは見た事ないんすけど噂になってるんですよ。生徒にしつこく付きまとう男がいるって」


「へぇ」


「後を尾けてきたり連絡先を尋ねてきたり。挙げ句の果てには盗撮とかしてきて」


「なんて酷い奴だ!」


「学校内でもいろいろ問題になってきてんすよね。友達もスカートの中を撮られそうになったから」


「あ、だからさっき僕を疑ってきたのか」


 数分前の後輩の言動に納得。それと同時にある疑惑が浮上した。


「という訳でその不審者を捕まえるの協力してほしいんす」


「よし、分かった。俺達に任せろ!」


「いや、あの……颯太」


「なんだよ、雅人。お前も当然参加するよな? 同じ男として」


「力になってあげるのは構わないんだけど…」


「よ~し。頑張って女子校の平和を守るぞぉ!」


「……あんまり躍起にならない方がいいと思うんだ」


 もしかしたら自分は背信者になってしまうかもしれない。友人を警察に突き出す裏切り者に。


 ただ本人が乗り気なのに断る訳にもいかず。自分と紫緒さんのシフトが入っていない3日後に不審者退治を決行する事になった。

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